第6話 さあ、レベリングだ (1)



 そろそろ気になってくる頃なのですよ。

 めっちゃ喉が痛いのですよ。

 

 危険生物はびこる大森林のど真ん中で、なにをほざいているのか。

 と、思うアンチクショーも居ると思うのですよ。

 

 でもコレが、ちゃんと声が出ないからかなりジンジンするのですよ。

 ここにはコレ舐めてぇなのど飴もハチミツ配合のど飴も存在しないのですよ。

 ええ、はい。



 つーわけで、飛び掛かってきたワン公っぽい魔物に「火魔法術LV2」の「火矢ファイアロー」を撃つ。

 炎の塊で形を成している矢が、鏃を狼型魔物のウルフィングに向けて弾かれたように飛んでいく。

 赤い軌跡を描いた火矢は、ウルフィングの右目に当り、毛皮に火を燃え移らせる。


『スキル【狙撃LV1】を取得しました』


 狙い通りに直撃したからなのですよ?


「ガアァァァッ!!!?」


 一瞬だけ怯んだウルフィングに肉薄し、がら空きの横腹に向かって、新しく作った「マクレンの短刀」を振り抜く。

 

『スキル【刀術LV2】が【刀術LV3】にレベルアップしました』


 お?

 なんかあがったのですよ。

 ちょっとだけ短刀が扱いやすくなった……………ような気がするのですよ。

 ちなみにこのウルフィングの個体LVは6なのですよ。


 つまり、「下剋上ジャイアントキリング」の称号の効果で俺のステータス5割増しなのですよ。

 だから今の物攻1800なのですよ。

 

 おっと危ない。

 切られてるくせに噛みついてきやがるのですよ。


 避け様に一閃。

 鼻先を掠めたのですよ。

 そのままの勢いでウルフィングに体当たりをかますのですよ。


「キャンッ!?」


 ほんとにワン公みたいな悲鳴を上げて、ウルフェングが体勢を崩す。

 その隙を見逃さずに馬乗りなったあと、逆手持ちにした短刀をウルフィングの喉元に突き立てる。

 返り血が目に入ったが、気にしないのですよ。

 すこし抉るように刃を動かして、仕留めたのですよ。


 むぅ、こいつらしつこいのですよ。

 もう四匹目なのですよ、犬コロ。


『個体名「アキラ・ミカヅキ」のLVが6にレベルアップしました』

『スキル【威圧LV1】を取得しました』

『スキル【アルタ言語LV1】を取得しました』

『スキル【器用LV3】が【器用LV4】にレベルアップしました』

『スキル【理解力LV3】が【理解力LV4】にレベルアップしました』


 お、レベルアップなのですよ。

 やったのですよ。


 ん?

 「アルタ言語LV1」ってなんですよ?

 もしかしてこの世界の言葉とかですよ?


『【アルタ言語】とは、この世界線【アルタ】に原生する知的生命体に対し、必ず通ずる標準語です』


 へー、日本で言う東京の言葉みたいなもんなのですよ。

 ただの言語がスキルってことは、もともと人間の言葉を話せない生物限定のスキルなんですよ?

 じゃあ「威圧」はなんですよ?


『当該スキル【威圧LV1】の説明をしますか?』


 うん。

 お願いするのですよ。


『了。当該スキル【威圧LV1】の説明をします。威圧とは、設定した敵対象に向かって発動することにより、精神異常「怯み」に陥らせることが出来る精神系スキルです。また、その効能は当該スキルのスキルレベルに準じて変化します』


 おお、使えそうなんですよ。

 だけどまあ、レベリング中なら必要ないのですよ。

 あーそうだ、ちょっと喋ってみようかな「アルタ言語」。

 いまのゴブ声って喉がガラガラで痛いのですよ。

 冒頭でも言ったのですよ。


 そんじゃまあ一発、なのですよ。


「―――――あー……アめんボ、アカいな、あイうえオーッ!!」


 んー…………若干発音が綺麗になったのですよ?


「―――――かきノキ、クりのキ、カきくケこーッ!!」

『スキル【アルタ言語LV1】が【アルタ言語LV2】にレベルアップしました』


 やったーッ!!!

 ありがとう「鬼神ノ血脈」!

 さすがユニークスキルなのですよ。

 2回発音するだけでレベルが上昇したアルよ。

 これで僕は新世界の神に―――――は成らないけど。

 どこのデ○ノートなのですよ。


 

 ―――――そろそろシツコイな、「ですよ」口調。

 ていうか疲れた。

 うん。


 えーと、さっき倒したウルフィング。

 なんて名前だったっけ?


『さきに討伐した魔物、ウルフィング種の種族名は「アイゼンノーブルウルフィング」です』


 そうそう、それ。

 ノーブルってやつ。

 レベリング中に見つけたターテロンにも付いてたけど、どうやら進化前である初期階級の魔物が持っている総称らしい。


 でも最底辺のゴブリンにはノーブルが無いぜ?

 って聞いてみたら。


『ゴブリンは、その醜悪な容姿と低い思考能力のせいで世間一般に「魔物」と称されていますが、正確には、感情と自我を持っている時点でゴブリンは「魔族」に該当されます。ゆえに、魔族にはノーブルを付けないため、種族名には単に「ゴブリン」としか表示されません』


 だってよ。

 

『スキル【理解力LV4】が【理解力LV5】にレベルアップしました』


 ………うむ。

 てかこの理解力だけど、こんな風にアカシ先生の説明する長文を聞いてたらガンガン上がっていくんだよね。

 このスキルなにが変わるのかしら。


『当該スキル【理解力LV5】の説明をしますか?』


 おろ?

 うん、OK。

 頼んだ。


『了。当該スキル【理解力LV5】の説明をします。スキル「理解力」は、思考速度の上昇、冷静さ、不明な語彙の理解、計算能力の向上、など。様々な能力が上昇します。また、その触れ幅はスキルレベルに準じます』


 へえ。

 意外と使える【理解力】スキル。

 でもそんな頭が良くなったって自覚がない………。

 まあそれがスキルなんだろうけど。

 勉強することで身に付く知識へのフォローや補助的な面が強いんだろうな。

 むう、奥が深いでゴザル。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る