第2話 エンカウント・カメさん
『特A級指定迷宮【アイゼンハルト大森林】。高レベル帯の魔物が多く生息し、奥地では最低でもC+ランク以上の魔物しか存在しない危険地帯。この迷宮の主である「魔龍バレド」は、蛇型の魔物サーペリテ種と龍種のハーフであり、巨大な体躯は小山を引き倒すほど。アイゼンハルト大森林の魔龍バレドはランクA+指定魔物の
「ヘ、ヘェ………ヤバインダナ、ソイツ」
見つけたらさっさと逃げろ、戦うなんて馬鹿な真似はするな。って感じか。
どんだけよ。
てか、ここそんなに危ない場所なのかよ。
畜生このやろう。なんでそんな場所に転生させたよ神さま(仮)よ。
いま俺は元いた場所からだいぶ移動して、この危険地帯を脱け出そうと頑張っているところだ。
だがまあ流石は迷宮といったとこか。
ずっと同じ場所を歩いているような感覚しかない。
足元に印を置いて歩き始めたら、いつの間にかその印に躓いてコケるという事案が今しがた発生した。
手にしているのは即席で作ったデキホヤの枝の槍。
先端を尖らせるように削っている荒い得物だ。
正直心もとない。
まあこれを作ったお陰で「彫刻LV1」と「器用LV1」のスキルを手に入れた。
以外と簡単にスキルとか手に入るんだなー。
とか考えてたらアカシックレコードさんがボソッと教えてくれた。
『ユニークスキル【鬼神ノ血脈】
概要…倭ノ國に伝わる鬼神スーラの血がめぐっている者に発現するスキル。
効果…全ステータス数値×2。また、レベルアップ時に生じるステータス数値の上昇値が倍増。刀剣系武器で与える物理ダメージ倍増』
あ、はい。
手に入る熟練度が倍増ね。
なるほど、だからこんなに早くスキルを入手できるかー。
へー。
『スキル【理解力LV1】を取得しました』
お、おう。
こんな感じですぐに手に入る。楽でいいねえ。
そんなこんなで森のなかをズカズカと進んでいく。
辺りは不気味なほど静まり返って、ただ枯れた枝や落ち葉を踏みしめる音だけがいやに響く。
生前の半分ほどまで縮んだ小柄な体は、少々というにはあまりにも頼りない。
同じく手にした身の丈ほどの枝槍も、危険なこの大森林ではつまようじにもならないだろう。
そんな他愛もないことを考えてたら、目の前に奇っ怪なものが現れた。
ものすごい毒々しい赤色に白い斑点模様がついたキノコのカサみたいな甲羅に、木の根っこみたいな手足が地面にちょっとだけ埋っている。
なにあれ?
ちょーきもいな。
「アカシ先生、アレナニ?」
緑色の指をキノコお化けに向けて突きだす。
あああと、アカシックレコードさんって長いからさ。
これからアカシ先生って呼ぶことにした。
『了。当該魔物の詳細を説明します。亀型の魔物ターテロン種の亜種である「アイゼンマッシュターテロン」。甲羅の白い斑点には致死性の毒が含まれており、体内に取り込んだ土や植物などから有毒物質を取りだし、充分に発酵させた毒粉を甲羅に滲ませる。主に草食の魔物で、甲羅の毒は狩りのためのものではなく身を守る防衛手段だ。と考えられている―――――というのが、魔物学者リープトン氏の著書「ターテロンの生態」に記されていた情報です』
よく出てくるな、リープトン氏よ。
ていうかアカシ先生ってリープトンさんのこと好きなの?
名前めっちゃ出すやん、ワレ。
『スキルである私に感情というシステムは存在しません』
お、おう。そうかそうか。
ていうかターテロン種っていうのねキノコお化け。
カメさんだったのか。俺はてっきりキノPオ(誤字に非ず)の親戚かと思ったぞ。
まあとりあえず倒しとくか。
「アカシ先生、アレノステータス出セル?」
『はい、可能です。当該の魔物のステータスを表示しますか?』
「ヨロシク」
『了。アイゼンマッシュターテロンのステータスを表示します。
種族「アイゼンマッシュターテロン」(♂)
名前 なし
LV 3/10
物攻 25
魔攻 25
物防 100(「鋼ノ甲羅」効果:物防×2「不動者」効果:敏捷÷2 物防×2)
魔防 25
敏捷 13(「不動者」効果:敏捷÷2 物防×2)
スキル…「穴堀LV2」「毒生成LV5」「寄生LV2」「硬化LV4」
「擬態LV3」「毒耐性LV3」「毒粉LV3」「猛毒生成LV2」
ユニークスキル…「鋼ノ甲羅」「
魔法術…「地魔法術LV1」
称号…「魔龍ノ森ノ住人」「鈍足」「毒ヲ持ツ者」
―――――以上です』
……………地味強ない?
えええ。こんなナリしてるからもっと弱いかと思った。
カメさんLV3でわっちよりも強かった。つらたん。
あ、でもネームドでは無いんだ。あたりまえか。
てゆかネームドと名無しって何がどう変わるのよ? 教えてアカシ先生。
『了。称号【
え?
ネームドやべぇじゃん。
マジパネェじゃん。
洒落になんねえくらいチートじゃんこれ。
じゃあ人間ってば知らずのうちにトンでもねえチート性能だったのね。
名前があるってだけなのになあ。
そんなに変わってしまうモノなのだろうか?
ま、いまはまずコイツを殺ろう。
自前の枝槍を構え直して、カメさんに突貫を仕掛けた。
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