戦慄のアカツキ~AKATUKI of Horrible.~
神楽坂ヒバリ
第一章 魔龍の森 編
第1話 転生っつってもゴブリンてアンタ
世界最強とされる、
まあ、だからこそなのだろう。彼がかの邪智暴虐悪逆非道を地で行く
険しく苦い道を、山越え谷越え。順調に旅を進めていった彼は、ついにあの禍々しき魔王城に辿り着いた。
そしてその瞬間から、歴史に刻まれる程の大死闘が幕を開けた。
結果だけいうならば、“まほうつかい”は勝ちを掴み取った。
―――――だが、ひとつ問題が起きた。
魔王にトドメを指した
慌てた神。唯一神デルエルは、魔法によって生じた破壊の余波の半数以上を抱え込み、次元の果てに投げ棄てた。
それだけならばまだ良かったものを、次元を飛び越えた余波の一部が世界の壁を突き破り、別の世界線「ルゲラ」。別名“宇宙”に存在する惑星地球。その地球の島国である日本のとある高等学校の教室のひとつで爆散してしまったのだ。
当然のごとく、居合わせた教師、少年少女は死に絶えてしまった。
そのことを不憫に思い、また申し訳ないと言う気持ちを持って、彼らを記憶を保持したままこちらに転生させてあげようとデルエルは考えた。
元の体は跡形もなく四散、蒸発。新たに体を形成して、デルエルは教師を含めた少年少女31人を、管理下の世界線「アルタ」に転生させた。もれなく全員チート持ちで。
だがまた問題が起きた。
転生させる31人のうちの一人である少年は、魂に深い傷を負っていた。
このまま人の体に転生させれば、体という器に対し魂が見合わず死んでしまう。
デルエルは考えた後に、少年を魂に見合った器……ゴブリンに転生させることを選んだ。
だがゴブリンとは最弱種。弱小中の弱小である。いくら魂と器が合わさって命が助かっても、別の要因で死亡してしまえば元も子もない。
そこでデルエルは、ゴブリンの少年にだけ少し多くチートを盛ることにした。
まあ、かくして31人の転生は完了された。デルエルは額を拭い、一息つく。
―――――これから始まる波乱を知る由もなく。
◆
目が覚めると、鬱蒼としげる木々の緑葉が目に飛び込んできた。
それは日の光を透過せず、いま俺が仰向けになっている土壌に濃い陰を落としていた。
まるで夜中のような暗闇だが、目を凝らせば景色が見えないこともない。
涼しげな闇のなかには、ちらほらと金色の光が葉の屋根から差し込んでいる。
ちょうど陽光の標的が俺の顔に移ったことで、ぼうっとしていた脳内のよどみが洗い流された。
ハッとして上体を跳ね起こす。
くるりくるりと首を回して辺りを見回してみる。
見渡す限りに暗鬱とした大森林。
ここはどこだ?
一体なにがあった。
自らの記憶を掘り起こそうと、おぼろ気な頭を必死に回す。
もはや軽いパニック状態だ。
それもそのはず、目が覚めたらアマゾンの奥地のような樹海に寝転がっていたのだから。
誘拐かなにかだろうか? 拉致られたのか? それなら何故こんな僻地に?
疑問が疑問を呼ぶ。
悪循環のるつぼにズブズブと嵌まっていく感覚に不快感を覚える。
思考のうずに飲み込まれそうになったところで顔をあげた。
「―――――イッタイ全体ナンナンダ…… ッテウオ!?」
思わず喉仏を撫でる。
ガラガラの枯れた声に、一瞬だけ驚いた。
それと同時に、そんな声音を奏でた自分の喉に驚愕したのだ。
高いような低いような、ノイズのかかったダミ声。
ただ喉になにか詰まっているわけでも、声を変えているわけでもない。
割りと自然に出た地声がこんな状態だったから、驚いたんだ。
「本当二… ナンダッテンダヨッ……… 畜生ォ!!」
訳もわからぬ状況に、訳もわからぬ怒りが沸いてくる。
底知れぬ、理不尽で行き場のない怒声である。
クソが、クソがクソがクソがッ!
…………誰か、状況を教えてくれよ。
ここはどこで、何がどうなってんだよ。
「ココハ、何処ナンダヨ……」
『―――――了。マスターの現在地は【アイゼンハルト大森林】奥地です』
「……………ハッ……? ナンダ、イマノ声……?」
『私はマスターの保有するユニークスキル【
「ユニーク、スキル?」
『はい。ユニークスキルとは、生物が生来より先天的に保有する特異的な技能を示す言葉です。また、後天的に取得することも可能です』
なんだこれ………?
アレか?最近ネットでノベライズやらコミカライズもしてる流行りの
だとしたらいまの状況にも説明がつくぞ。
目が覚めたら死んだときの記憶が無いっていうパティーンもよくある
ならこのユニークスキルとか言うやつって結構レアなんじゃ!?
じゃああれか、あれなのか? ステータスとかもあっちゃう感じなのか!?
ま、まあモノは試しだ。このスキルさんに聞いてみれば分かるかも知れねえし。
「エ、エーット。ステータスッテ見レマス?」
『はい。ステータスの閲覧は可能です。マスターのステータスを表示しますか?』
「オネガイシマス!!」
『了。マスターのステータスを表示します。
種族「ゴブリン」
名前「
LV 0/10
物攻 200(「豪腕」効果:物攻×10「鬼神ノ血脈」効果:全ステ×2)
魔攻 20(「鬼神ノ血脈」効果:全ステ×2)
物防 20(「鬼神ノ血脈」効果:全ステ×2)
魔防 20(「鬼神ノ血脈」効果:全ステ×2)
敏捷 20(「鬼神ノ血脈」効果:全ステ×2)
スキル…「暗視LV1」「剣術LV1」「隠密LV1」「逃げ足LV1」
「穴堀LV1」
ユニークスキル…「豪腕」「起死回生」「鬼神ノ血脈」「共鳴」
「
魔法術…「火魔法術LV1」「回復魔法術LV1」
称号…「転生者」「鬼ノ血」「
―――――以上です』
……………え。ゴ、ゴブリン? しかも♀って………は?
いやいやいやあ、そりゃあね。
転生ってだけですごいことだし死ななかっただけ良いと思うよ?
思うけどさあ。
これは無いよぉ………。
ゴブリンって、ていうかメスって………。
えええ。どうすれば良いのこれ。
まあステータスを見れば十二分にチート性能だって分かるけどさ。
やっぱり初期ステータスがゴブリンだったら、この「鬼神ノ血脈」とかが有っても総数値とんでもなく低いなあ。
これからどうしよ、俺…………………はぁ。
「………………ハァ」
とりあえず、歩こ。
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