第3話 転
もうどれくらい経ったのだろう。目を覚ますと、牢屋にいた。恐らく研究所のだろう。薬品の匂いが微かに鼻を刺激する。「やっと起きたか
おっさんの研究所にて。
「まず、おっさんを探すか。」「いや、その必要はない。」そう声が聞こえると、おっさんが現れた。「おい、おっさん。聞きたいことがあるんだが。」俺たちはおっさんに今まで起こったことを話した。「なるほど。そういうことか。」「おい、ちゃんと説明してくれるんだろうな?」「あぁ、するとも。質問等は後で受けるから、まず、黙って聞いてろよ。」
まず、その件に関しては俺は関係ない。全て私の娘の計画だと思う。恐らくだが、教会を潰すという計画に利害の一致があり、協力したのだろう。
次に、君たちは嵌められたのだ。多分だが、私の娘が人質役となり、教会が助けに来るのを待つ。そういう手筈だったんじゃないか?だから、わざと、多くの人が攫われたという情報を流し、教会が動かざるおえない状況にし、君たちを嵌めた。逆にこちらが人質にしたかったのだろう。
最後に、私はこの件に関して何も知らされてない。本当に娘が人質にされていると思ってたから研究に参加した。研究内容は化物の生産だったのだが、今思えば、それも、教会を潰すためのものだったのだと思う。以上、説明終了。
「さて、何か質問はあるかな?」そういうとえいりが、「質問、河合さん、それに修道院は何故、教会を潰そうとしている?」「修道院は知らないが、多分商売相手として邪魔とか、裏で計画を練っているのに教会が邪魔で計画を実行できないとかそんなんじゃないか?」「じゃあ、河合さんは?」「あの子は教会に自分の両親を殺されている。だから恨みを持っているのだろう。」「ちょ、ちょっと待て。教会が人殺しをしたということになるのだが、教会はそんなことをしてたと?そんなはずがない!」「いや、実際にしていたのだよ。今でこそ、教会内のルールが強化され、実験に人を使うことはなくなったが、昔はあった。平気で一般人を実験に使い、平気で人を殺していた。その事実は今では隠蔽されなくなっているが、実際にあった出来事だ。」「そ、そんなことがあったなんて。知らなかった。」そうか、河合さんにそんなことがあったなんて。
そういや、俺も聞いてみたいことがあったんだ。「おっさん質問なんだが。」「なんだ?少年よ。」「河合さんは両親を殺されているんだよな?だとしたらおっさんはあの子の里親なのか?」「あぁ、そうだ。本当の親ではない。」「そうか。てっきりその歳で大学生の娘を持っているのかと。」「その歳でっていうけど私は今三十代後半だよ。」「え、ええええ⁉︎イヤイヤどう見ても二十後半か三十ぴったしだろ。」「あぁ、魔法をよく使う人は歳をとりづらいらしい。だから若く見えるのだろう。」「ていうか、初めてあった時おっさんは失礼だろとか言ってたけど全然おっさんであってるじゃねぇーか。」「はっはっは。あのときは嬉しかったぞ。自分はまだまだ若く見えてると感じることができてな。」だからあのときなんか嬉しそうに見えたのか。なんか、騙された気分。「雑談はもういいか?これからどうするのかを考えたいのだが。」「あぁ、すまんな。さて、これからどうするか。」「で、実際どうするんだよ。」「取り敢えず、連絡待ちだな。その間にどうするか考えよう。」「おっさんからの意見なのだが、やはり、研究所を壊すのがいいと思う。」「そうだな。俺もそう思う。だが、研究所がいくつあるのかわからないしな。」「それなら私が知っている。研究所は全部で四つだ。支部が三つと、本部だ。そのうち一つはここだから実質二つと考えていい。」「おお、そうか。それはありがたい情報だ。って、なぜ、一番最初に聞いたときに言わなかった?」「そのときは知らなかったからだよ。私も私で研究について色々と怪しいと思っていたので、個人的に調べていたのだ。そこの少年を助けたときがあっただろ。あのとき私が外に出歩いていたのは、色々と調べていたからだ。その結果、修道院は教会を潰そうとしていることがわかった。目的は知らないがな。」「なんだ、そういうことか。わかった。作戦を考えるからちょっと待ってろ。」
待つこと十分。「できたぞ!作戦が。」「毎度ながら早すぎね?今回はちゃんとしているんだろうな?」「あぁ、任せとけって。では、作戦を伝える。」
えいりの作戦その三。
まず、人を二人集める。
次に、一人一つ、研究所を潰してもらい、研究資料を持ってきてもらう。俺たちは本部を潰す。
最後に修道院が攫った人たちを救って終了だ。 以上。
「なんか、雑さに磨きがかかってない?その一が一番作戦してたよ。今回のこれなんだよ。要約すると、研究所を潰すして、攫われた人を救出。もうその二つしか言ってないじゃん。」「まぁ、そういうな。これが今回は完璧なんだよ。あ、人はもう決めてあるからちょっと電話してくるね。」そう言うと電話をしに行ってしまった。
「なぁ、少年よ。この作戦に君はまだ参加するのか?」「そりゃ、ここまできたら最後までやるよ。」「君はそんなことする義務はないはずだよ。ここで抜けても誰も責めないだろう。」「そうだけど、前にも言ったがようやく、魔法とかいう非現実的なものに出会えて、それを通して色々な人に出会えたのに、それをここで断ち切るなんて勿体無いだろ。」「そんな好奇心や、人との出会いなんかで命が危険にさらされるだろう戦いに挑むのか?まして、君は魔法を使えないんだぞ。」「そうだな。前に言われた覚悟ってやつか?そんなのできてないよ。ただ、怖いけど好奇心には逆らえないのよ。」「本当に好奇心で身を滅ぼすかもしれないのにか?」「だから前も言っただろ。死にたくはないけど、同じことをずっと何年間も続ける方が嫌だ。気が狂いそうになる。」「そうか。わかった。私からはこれ以上は何も言わないよ。・・・君にはこれを渡しておこう。」そういうとおっさんはポケットから何かを取り出した。「これは、ネックレス?えいりから貰ったやつと同じやつか?」「そうだ。これの使い方は、もう聞いているか。なら、これの効力だが、これは一時的に君の体の色々なところが強化されるものだ。緊急時に使うといい。」「お、おう。貰っとくよ。ありがとう。」俺はそれを受け取るとポケットに入れた。
「やぁ、待たせたな。呼び出しといたぜ。最強の二人をな!」「誰を呼んだんだ?」「きてからのお楽しみ。一人は俺の先輩で二人とも知らないけど、もう一人は英利は絶対知ってるから。」誰だろ?俺が絶対知ってる人って。
待つこと三十分。「ねぇ、まだ来ないのか?」「あー、多分もうそろくる。と、ほら来た。」そうえいりが言うと、前に設置した、テレポートの魔法陣から現れた。この人が俺なら絶対知ってる人?いやでも、見覚えないな。「なんだ。先輩が先ですか。」「なんだとはなんだ失礼な。せっかく持って来てやったのに。」「おぉ、本当に持って来てくれたんですね。ありがとうございます。後で犬の餌奢りますよ。」「あれ?お前、俺の後輩だよね?俺、君の先輩なんだけど?口の利き方どうにかならないの?酷すぎない?」「うっせ。黙れ。所詮いじられキャラが。」「ひでぇ。そちらの二人は?」「あぁ、こっちの歳が若い方が英利です。俺の友達で今回の事件に色々と協力してくれてます。」「どうも、よろしくです。」「で、こっちの歳とってる方が今回の加害者?の高野です。」「おう。紹介の仕方にはあえてつっこまないことにするよ。よろしくな。」「あぁ、よろしく。って、お前、一応今回の事件の犯人なんだろ?何がよろしくだよ。」「あー先輩。これ以上話をややこしくしないでください。めんどくさいので。説明しますので黙って聞いてくださいね。」「なんで俺が悪いみたいに言ってんだよ。納得いかねぇー。」えいりは先輩に諸々の事情を説明した。
「なるほど。そういうことか。わかった。悪かったな。喧嘩腰に色々言って。」「いや、大丈夫だ。恐らく、それが普通の反応なのだろう。」「それはそうとえいり。もう一人はまだなのか?」「そろそろだと思うのだが、おっと、来たようだ。」また、テレポートの設置した場所から誰かが現れた。ん?小さい?小学生くらいか?誰だろ。「どうも、みなさん。こんばんわです。」「え、朱ちゃん?おい、えいり。この子はまだ子供だぞ!こんな子を戦いに出すというのか。」「イヤイヤ、舐めないほうがいいぞ。この子は、めちゃめちゃ強いから。多分、ここにいる先輩と俺以外の誰よりも強いよ。」「いや、先輩とお前抜いたら、俺とおっさんしかいないじゃん。」そもそも俺は魔法が使えないし、比べる対象は実施、おっさんしかいないわけなのだが、かわいそうにこんな幼女よりも、おっさんの方が弱いと断言されるなんて。さすがにワロた。「おいおい、おっさんを舐めないでくれるかな?私もなかなか強いのだぞ?」えいりが少し呆れたような顔をし、朱ちゃんに向かって言った。「朱、少し魔法を見せてやれ。」「はい、わかりました。」そういうと、朱ちゃんの持っていた杖からいわゆる、魔法弾というものが打ち出された。それはおっさんの顔の横を擦り、後ろの壁にぶつかった。壁には穴が空いていた。「ハハ、これは私よりも強いですわ。」「だろ?まぁ、これだけ実力があれば大丈夫だろ。」おっさんが少し悔しそうに「おかしいなぁ?私わりと強い方だと思うのだがなぁ。」と、呟いていた。
二人に今回の作戦を説明し、研究所支部の破壊をお願いした。作戦を伝えたとき、先輩と呼ばれる人が「なぁ、お前の作戦毎回雑じゃない?流石に雑すぎるだろ。」と、言っていたが、えいりが先輩の顔を殴り制した。やっぱり雑だったんだな。気のせいなんかじゃなかったのか。
「さて、みんな聞いてくれ。今回のこの作戦、雑だと思うが、みんななら、臨機応変に対応しやすいと思ってこの作戦にした。このメンバーなら万が一死ぬことなんてないとは思うが、もしも万が一があるなら、これを使ってくれ。」と、そういうと俺に渡した時とは別の紙を俺以外のやつに渡した。自分でも雑ってわかってるんじゃん。臨機応変にって物は言いようだな。「なぁ、なんで俺には渡さないんだ?」「それはだな。お前は俺と一緒に作戦を実行してもらうからだ。それに、お前には俺の渡したネックレスがあるだろ。あれがあれば万が一の時も切り抜けられる。」そんなにすごいのか、このネックレス。俺の横から先輩と呼ばれる人が「なぁ、こいつ、明らかに魔法使えないど素人だよな?平気なのか?」と言った。するとえいりが「それは問題ないです。こいつには俺のネックレス式の魔法陣を渡してありますし、身体強化も付けてあります。しかも、こいつには恐怖心がありますが、それよりも先に好奇心が動くタイプの人です。怖くて動けなくなることはないでしょう。」「ふーん、ならいいんだけど。よく上が許可したな。」「そこなんですよね。一般人の介入をあれだけ嫌がる教会が、まさか一般人の介入を許すなんて。明らかに裏があるとしか思えません。が、今は事件解決が最優先です。それに使えるなら使ってやろうと思いまして。それより、持ってきてくれました?頼んだもの。」「あぁ、持ってきたよ。はい、これでいいか?」そういうとどこからか杖を取り出した。「おぉ、ありがとうございます。戦闘にはやっぱこれですよ。」「それはなんだ?」「魔法の杖。朱が持ってるやつみたいなのだ。」
魔法の杖。魔力の補助や魔法陣の保管ができる。中に保管されている魔法陣を引き出し、魔力を流すことで魔法を使うことができる。
「そうなんだ。なぁ、それ俺にも使える?」「無理だ。魔法陣は魔力を流せば使えるが、魔法を使うのに必要なものや魔法の構造を理解しないと使えないものが多い。だから、魔法に関して無知なお前は使うのは無理だ。」そうなのか。ちょっと期待してたのに残念だ。
「では、今から作戦を開始する。これから二人は個人で動くことになる。万が一の時はこの紙を使ってくれ。この紙の説明はまだだったな。先輩が横から茶々入れるから。この紙は使うことで、他の人に連絡を取ることができ、テレポートの設置ができる。危なくなったら遠慮なく使ってくれ。では、作戦開始だ。」「さらっと説明忘れたの俺のせいにしたのにはもうつっこまないよ。」
先輩視点より。東の工場にて。
「全く人使いが荒い後輩だ。もっと先輩を敬う気持ちとかないのか?あいつには。」などと、独り言を吐きながら工場に向かっていた。
歩くこと数十分。ようやく工場につきこれから戦闘が始まる。工場には、結界が貼ってあった。結界を破ったら、侵入者が来たという目安にでもしているのだろうか。しかし、この先輩には無意味。侵入がバレたところで意味はない。先輩は堂々と結界を破り、工場内部へ侵入した。「侵入者だ!侵入者だぞ!」工場内では警報が鳴り響き、侵入者が入って来たことがアナウンスされていた。結界を破ったとき、警報が鳴り響くように、セットしていたのだろう。科学と魔法の合わせ技だ。
何人もの武装兵が、先輩の周りを取り囲んでいた。武装には銃と槍を装備していて、ヨーロッパの戦争を思い出させる。
武装兵たちが先輩に向かって銃を乱射した。しかし、それを物ともせずに先輩は避けることなく受け止めた。武装兵たちは完全に仕留めたと思った。しかし、先輩には傷一つ付いてなかった。避けてはいない。銃弾を避けきるほどの、瞬発力は魔法によっての強化じゃ不可能。ではどうしたか?全て撃ち落としたのだ。衝撃波によって。先輩の魔法は、衝撃波。衝撃波をバリアに見立てて、自分の周辺に発動させ、守りきったのだ。武装兵たちに動揺が走る。「ば、バカな。あの量の弾丸を全て、衝撃波によって受けきるだと?そんな芸当できるはずがない⁈」先輩は少し、いや、凄い自慢げに話した。「フッ、それが可能なんだよ。俺ならな!」「い、一体どうやって。どうやっているのだ⁈」「教えてやるよ。それはだな。強化魔法を衝撃波に使って強化しているからだ。」「・・・それだけか?」「それだけっていうが、今までなぜか誰もやってこなかった手だぞ?もっと俺を褒めろ。」「敵に褒められるのを自分から求めてどうするんだよ。そういうのって、敵からいうものだろ。」まるで敵同士とは思えないほんわかした会話をしていた。
一方変わって、朱ちゃんの方より。西の工場にて。
歩くこと数十分。こちらは独り言がうるさい先輩と違って、静かに向かっていた。西の工場につき、こちらも同じように結界が貼ってあった。こちらも同様に結界を壊すと警報が鳴る形式のようだ。そして、やっぱり堂々と結界を破って工場内へと入っていった。だが、警報はならなかった。なぜか?確かに結界は壊された。なのに、警報がならなかった。なぜなら、警報が鳴る前に装置を壊したからだ。だから、武装兵たちの反応が遅れた。「なんで、警報はなってないのに⁈どうして侵入者が⁈と、とにかく研究員たちに知らせなければ。」そんな武装兵の動揺を朱ちゃんは逃さず、武装兵たちに向かって、魔法弾を放った。命中率は凄まじく、威力も申し分ない。当たれば気絶するくらいには威力がある。その魔法弾は全てヒット。工場内から出て来た武装兵たちに恐怖が走る。武装兵たちの一人が、「こんな子供が、あの命中率で、あの威力の魔法弾を撃てるだと?魔法の精度をそこまで上げるのに普通なら十数年かかると言われているのだぞ。とてつもない才能だ。」と、恐怖を通り過ぎて感嘆していた。それを聞き、朱ちゃんは、「ありがとうございます。ですが、手加減はしません。」と、律儀にお礼を言っていた。その発言に武装兵たちは凄くにやけていた。やはり、目の前の恐怖より、目の前の可愛さを選ぶらしい。こちらも戦闘中とは思えないな。
さて、二人の場面が過ぎ、とうとう、本命。えいり、英利、おっさんのチームより。本部の工場にて。こちらはおっさんの小細工により、結界を突破。見事な手際だった。破られたことすら気付かれていないだろう。警報もなっていない。そして、えいりの透明化を使い、華麗に工場内に潜入した。はずだった。工場内に入った瞬間えいりたちに銃が乱射された。存在を気付かれたことにより透明化も解けた。それと同時に武装兵たちが襲って来た。「クソ!なぜ、気付かれた⁈」確かに、えいりの透明化は完璧だ。俺が潜入した時も全く気づかれなかった。ん?待てよ。確かあの時、河合さんに俺のことを認識させるために手を掴み、目の前で透明化を解いたような。「気付かれた原因は河合さんだ。あの人の前で俺は透明化を解いている。多分それで、今回も透明化を使ってくると踏んだんじゃないか?」「あー、あれか。まぁ、それなら仕方ないか。」「言ってる場合か、君たち。私たちはもう武装兵たちに囲まれているのだぞ⁈」「大丈夫だ。安心しろよ。相手はどうせ魔法の使えない雑魚だ。俺たちを強いように見せるためのモブだ。」それを敵の目の前で言うのかぁ。やっぱ、こいつ度胸あるなぁ。そんな風に感心していると、武装兵の一人が、「舐めやがって。お前ら行くぞ!一斉射撃だ‼︎」その掛け声とともに、銃を俺たちに向けて乱射して来た。「えいり。あれ使うぞ。」「いや、待て英利。まだ使うな。この程度なら俺一人でなんとかなる。」そう言うと、紙を俺たちの周りに置き、ポケットから水の入った瓶を取り出して、それを紙にかけた。すると紙が光、バリアのようなものが展開された。それは放たれた弾丸全てを受け止めた。「なん、だと。全ての弾丸を受け止めた。だと⁈」目の前で見ていた俺も凄いと思った。全く魔法には驚かされてばかりだ。「おい、おっさん。俺が弾丸止めたんだから、早く武装兵たちを倒してくれよ。」「あぁ、わかった。君が私の敵でなくなってくれて本当にありがたいと心からそう思うよ。」と、少し動揺して言った。「さて、今度は私の番だな。」そういうと、おっさんはポケットからスタンガンを取り出し、それを自分に当てた。すると、どうだろう。武装兵たちが次々に倒れていく。すると、えいりが、「おっさん。あんたが今使った魔法って。」「そうだ。感覚リンクってやつだ。」「感覚リンクってなんだ?」「感覚リンクって言うのは自分と他人の感覚を共有させるものだ。だが、それを使って自分にスタンガンを当てて、周りを気絶されるなんて、そんな使い方見たことがない。」「そうだな。私以外、この使い方をしているものを見たことがない。」「ダメージは自分にもあるんだろ?痛くないのか?」「痛いが、今は痛みをなくす麻酔のような役割をする魔法をかけてある。だから、わたしには痛みはない。」スタンガンって痛みで気絶させてるわけじゃないと思うのだが、あまりつっこまないでおこう。「さて、先へ進もう。」俺たちは研究室へと入っていった。
研究室内部。特に何事もなく奥へと進んでいた。すると、そろそろ、強敵が登場するのではないか?と考えていたとき、その考えは的中。いかにも強そうなやつが立ちはだかった。数は三人。丁度こちらと同じ人数だ。と言いたいところだが、俺は素人。魔法は一切使えない。さて、どうしたものか、と考えていると、おっさんが、「少年。私が渡したネックレスを使え。それを使えば、少しは戦えるだろう。」そう言われたので、おっさんのネックレスを使った。ネックレスの石の小さな穴に指を当てるだけ。そんな簡単な作業で本当に魔法を使えるようになるのか、内心疑っていた。しかし、その疑いはすぐに晴れた。使った瞬間。魔法の知識が、頭に流れ込んできた。「その効力は大体十分程度だ。時間にはせいぜい気をつけてくれ。」「わかった。ありがとう、おっさん。」と、お礼を言ったところで、さて戦闘開始だ。丁度三対三ということもあり、一人が一人を相手にすることとなった。「さて、戦闘開始な訳だが、一人が一人を相手にしたほうがいいと思う。というわけで、分断するから二人ともそこから動かないでね。」そういうと、えいりが紙を投げて、丁度三等分するようにバリアを貼った。「さて、これで準備オッケーだ。終わったやつから苦戦してるやつの援護に入るように。いくぞ!」
まず、おっさんの場面から。
「ほんと、あいつ、おっさん使いが荒いんだから。目上の人に対する態度など、親から教わらなかったのだろうか。」「何ブツブツあってんだよ。あ?」おっさんの相手は、いかにもヤンキーっぽい話し方のモブだ。モブって言ってる時点で察しがつくだろうが、弱い。魔法を扱ってるやつならわかる。こいつらは弱いと。だが、なぜ、そんな弱いやつらを出してきたのか?それが不思議でならなかった。「君たち、何を隠している。君たちみたいなものが、私たちに勝てると思っているのか?それとも、舐められているのか?」「ふん、言ってろよ。おっさん。いくぜ!」その掛け声とともにおっさんの方へと向かっていった。だが、最初も言ったように雑魚には変わりはない。ヤンキーっぽいやつの攻撃をかわし、ポケットから紙を出し、「剣よ。我が手に。」そう唱えるとおっさんの手に剣が現れ、そのまま、刃のない方で、叩きつけた。「ふん、やはり雑魚ではないか。舐められたものだ。少年。こっちは終わったぞ。」そう声をかけようとした瞬間、ヤンキーっぽいやつが、魔法弾をおっさんに向かって撃ってきた。それを間一髪のところでかわす。「君みたいなのが、魔法弾を撃てるほどの魔力があるとは到底思えないのだが。一体どんな小細工をした?」「へへ、一体どんな小細工だろうなぁ?まぁ、いい減るもんじゃない。見せてやるよ。」そういうと、何か液状のものを飲んだかと思うと、見る見るうちにヤンキーっぽいやつの体が変形し始めた。それは、魔法少女の変身や、戦隊モノの変身とは違い、もっとリアルな感じに、化物に変身した。まるで、もともと化物だったかのように。「一体何者なんだ、君たちは?」「俺たちはこの研究所で生み出された化物だ。いや、正確には人間だったものが化物にされたというべきだ。」「なんだって⁈修道院がそんなことを。しかし、君たちはなんだって私たちを襲う?君たちは修道院を恨んではいないのか?」「恨む?むしろ感謝してるよ。俺たちに力をくれたことになぁ!今まで俺たちを蔑ろにしてきたこの世界に一泡吹かせてやれる。だから!」「だから、感謝してると?それは違う。君たちがこの世界で暴れようと、誰かに復讐しようと、何も変わらないぞ。復讐したところで、この世界は何一つ変わってはくれない。それほど、残酷なんだ。君たちもわかっているだろう?」「あぁ、わかっているとも!俺たちが暴れたところで何も変わらないことくらいな!でも、どうしようもないんだよ!俺たちの怒りはどうしろっていうんだよ!」「よくわかってるじゃないか。なら私が言うべきことは一つだ。」「なんだ。戦う前に聞いてやる。」「そこまで落ちこぼれた自分たちが悪いに決まってるだろ。それを他人や世間のせいにして何してるんだ?そんなことしてる暇があるなら勉強でもしたらどうだ?自業自得だろ。弁護のしようもないな。」「・・・。ふざけんなよ、おっさん!俺たちがどれだけ苦しかったか知らないくせに!」「知らん。それに私の方が君たちよりずっと苦しかったと思うな。」「ふざけやがって。話し合いはもうおしまいだ。叩き潰してくれる。」そういうと魔法弾を、今度は五発同時に撃ってきた。「ふん、その程度か。舐めるなよ。」おっさんは手に持っていた剣を使い、全ての魔法弾を斬った。魔法弾は、斬った地点で爆発し煙を出した。そして、その煙に紛れて、化物となったヤンキーっぽいやつがおっさんを殴りつけた。「っく、なかなか知恵は回るようだな。ならば次はこっちから行くぞ。」そういうとおっさんは、剣を紙に戻し、今度は杖を紙から出した。「ふん、そんな杖で何ができる!くたばれおっさん!」再び魔法弾を今度は十発ほど出して向かってきた。「魔法弾か俺のパンチ、どちらでも好きな方を選ばしてやるよ!」「そうか、なら。魔法弾を。」「そうか!魔法弾の方を選ぶか!」「全て撃ち落として、君を倒す選択肢を選ぼう。」「グハッ、一体何が⁈」おっさんは、まず、十発ほどの魔法弾を炎を出し全て撃ち落として、そのまま、電撃魔法を使い、化物とかしたヤンキーっぽいやつを気絶させたのだ。「若者よ。恨む前にまず、勉学に励め。魔法を勉強するのなら私が教えよう。」そう声をかけた時にはもう相手は気絶した後だった。
次に英利の場面にて。「俺素人なんだけど、一人で相手しろって酷いよなぁ。」「え、あんた素人なの?もしかして魔法は使えないの?」「あぁ、使えない。今はおっさんのネックレスのおかげで使えるけど、少ししか使えない。」「・・・なぁ、あんたはなんで、戦うんだ?」「お前もおっさんと同じ質問をするのかよ。まぁ、いいや。俺がなぜ戦うか。それは好奇心が動いたからだ。」「は?何を言っている?」「魔法という面白いものに出会い、好奇心が揺さぶられたからだ。確かに、この戦いで俺は死ぬかもしれない。だが、そんなことより、同じことを何十年も繰り返す日常を過ごす方が嫌だ。」「そんなことで、そんなことで!俺たちの邪魔をしようとしているのか‼︎」「そうだ。そんなことだ。周りからしたらな。だが、俺にとっては一大事なんだよ。」「クズが!ここで、ここで今すぐ殺してやる‼︎軽い気持ちでこの戦いに挑んだことを後悔させてやる。」「その前に!お前はなぜ戦うんだ?俺も言ったんだからお前も言ってくれたっていいだろう?」「俺はなぁ。復讐をするんだ。俺をこんなにした奴らに!俺の感情を壊し、化物にした奴らに復讐をするために!教会の連中を殺すために!」「そうか。具体的には誰を殺すんだ?」「決まってるだろ。教会の連中全員だ!」「復習するのは勝手だ。俺は止めない。だが、教会のやつら全員?ふざけるな。他の連中は関係ないだろ。やるなら、そいつだけにしろ。」「好奇心で動いたクズが抜かしてんじゃねぇ!」「お前こそ、冷静に周りを見ろよ。教会の人たち全員が悪者だと思っているのか?」「それは、違うけど。」「違うなら、お前をそんなにしたやつだけに復讐をするんだな。それに、復讐っていうのはそんなに軽いものじゃない。自分のことだけを考えてできるものじゃないんだよ。」「何言ってやがる?」「相手に家族がいたらどうする?子供がいたら?彼女がいたら?それを全て背負えるのか?」とうとう男は黙ってしまった。少し意地悪が過ぎたか。「お話はここまでにして、そろそろ始めようぜ。」「お前に何がわかる。お前を倒し、俺は復讐を果たす。」こいつ、俺の話聞いてたのか?まだ、復讐とか言ってるんだけど。どんだけ闇深いんだよ。目を覚ましてやるか。「では、まず、俺から行くぜ。」そう言うと、俺は男の方に向かって全力疾走して殴りかかった。もちろん華麗にかわされた。しかも、そのまま反撃に背中を殴られた。っく、流石にかわされるか。まぁ、当たり前か。そんなに甘くないよな。「今度はこっちから行くぞ。」そういうと、何か液状のものを飲んだかと思うと、男の体が変形した。そして化物となって襲ってきた。「まじかよ。魔法ってそんなことできるのかよ。」そして、化物となった男はそのまま俺を殴りつけた。さっきの数十倍痛い。しかもそのまま、魔法弾で追撃をしてきた。俺は避けることができず、クリーンヒット。そして、その攻撃を受けて、少しの間動けなかった俺の隙をついて、また追撃をしてきた。今度は俺のいる位置に電撃を落としてきた。痛い。痛い痛い痛い。でも、動ける。「もう終わりか?ならこっちから行くぞ。」なるべく近づかないと、あいつは使えない。幸い相手は激情しているが同時に俺のことを舐めているはずだ。いける。相手に向かって走り出した。「また、突進か?馬鹿の一つ覚えかよ‼︎」相手は迎撃体制。これならいける!俺の手が届くギリギリのところまで近づき、衝撃魔法を使った。相手は倒れた。「何が起こったかわからないって顔だな?教えてやるよ。俺はただ衝撃魔法を使っただけ。お前の顎に向かってな。」「だけど、あんな距離で、しかも正確に、素人が顎に向かって衝撃魔法を放っただと?そんなのあり得るはずが。」「できるんだよ。それがな。思い切りは大事だよ?やってみないとわからないってやつだよ。成功すれば俺の勝ち。しなくても、ダメージは与えられる。俺にデメリットはほとんどない。だからかけた。そしたらできた。それだけだよ。」「そんな、思い切りで、成功するものじゃないだろ。」「成功したんだから成功するんだよ。何においても思い切りは大事だよ?恨みを捨てろとは言わない。だけど、もうちょい、思い切って生きてみろよ。手始めに過去を切り捨ててみるとかさ。そしたら、楽になれるよ。」「そうか、そうだったんだな。」そう言うとそのまま気絶した。「全く、世話かけさせやがって。」
場面変わってえいりの場面より。相手は最初から化物となっていたので、容姿などは分からない。が、そもそも、そんなことえいりには関係ない。なぜなら、「はぁ、めんどくさいなぁ。」「めんどくさいだと?ほざいてろ。すぐにそんな口きけなくしてやるぜ!」化物がえいりの方へと殴りかかった。それをあっさりかわした。さらに攻撃を続ける化物。それを次々かわして行く。「どうしたどうした!かわすだけじゃ、俺は倒せないぜ?」「はぁ、なんでこんな脳筋が相手なんだよ。」「脳筋だとぉ?舐めたこと言いやがって!」化物のパンチが床に当たった。床には、大きな拳の跡が残った。「うわ、スゲェー威力だな。当たったらひとたまりもないな。」「ちょこまかしてないで、攻撃してこいよ。」「あ、いいの?じゃあ行くよ?」えいりは化物を指で軽く触った。すると、どうだろう。化物は急に悲鳴をあげ、倒れた。「お、お前。俺に一体何を。」「指に魔力を込め、それを電気に変えただけ。その電気はスタンガンとかの電気ってよりも、ずっと痺れてる感じのやつだから、しばらく動けないから。」「指に込めた魔力を電気に変えただと?そんな芸当ができるものなのか⁈しかも性質変化まで。」「すごいだろ?めちゃめちゃ勉強したんだぜ?ってあれ?」聞いてないか。もう気絶したのかよ。早いなぁ。てか、俺の場面もう終了かよ。早いよ。
さて、全ての場面が終わり、再び英利の場面へ。俺とおっさんはほとんど同時に終わったらしく、一番最初に終わったのはえいりだった。「よぉ、遅かったな二人とも。」「加勢してくれる話はどうなったんだよ。」「あぁ、その話か、どちらかが死にそうになったら加勢しようと思ったんだが、危なっかしい場面はなかったし、めんどくさいからいいかなって。」「全く、問題なかったからいいものの。」「問題なかったならいいだろ。奥に行くぞ。」
三人を倒し、俺たちは奥へと進んだ。奥へ進むと、河合さんがいた。「ようやく本命にたどり着けたよ。さて、お父さん。俺たちは少し出てるから、じっくり話すといい。行くぞ。英利。」俺とえいりは部屋を一度でた。
しばらくして、悲鳴が聞こえた。悲鳴が聞こえたので俺とえいりはもう一度部屋に入った。「なんだ?どうした⁈何があった?」部屋に入った時にはもう遅かった。俺とえいりはとんでもない光景を目にした。おっさんがすごい血を出し、床に転がっていた。周りには修道院たちが河合さんを取り囲んでいた。「こいつは私たちが連れて行く。教会は手を出すな。」そう言うとテレポートでどこかへ行ってしまった。俺たちはしばらくそこに立ち尽くしていた。「そうだ、おっさん‼︎」先に動いたのは俺の方だった。「おい、おいおっさん‼︎おい!」「うるさいぞ。少年。体を揺さぶるのをやめてくてないか?」「おっさん!ゾンビになって蘇ったんだね!」「違うわ。何言ってるんだ少年。」「でも、血まみれになって、床に転がって。」「それはダミーだ。魔法で作った人形だ。だから一旦落ち着いてくれ。」良かった。おっさん生きてた!良かった。心から安堵した。本当に良かったと思った。「おい、えいり。えいり!おっさんいきてるぞ。」「うるせぇ。そんなことはわかっている。取り敢えず全員集合だ。西と東の工場にいる二人も呼び出す。行くぞ。テレポート。」そう言うと朱ちゃんと先輩が出現した。「どうしたんですか?お兄ちゃん?」「どうした?後輩?」「二人とも施設の破壊は終わったか?」「ハイ終わりました。」「こっちも終わったぜ。」「よし、なら呼び出しても問題なかったか。」「ただ、先輩と話していて気づいたのですが、少しおかしなことがあります。研究所の位置なのですが、東西南北、それぞれに研究所が置かれていて、それぞれ化物の部位を研究している。そういうことでしたよね?ですが、その手の資料は一切見つかりませんでした。その代わりに、化物を媒体とした実験資料ばかりが見つかりました。これってまさか。」「あぁ、そのまさかだ。化物を人間を媒体とする、魔法の媒体の代わりとして使えないか、それを実験していたんだ。」「えっと、ごめん。話が見えないのだが。」「わかった。説明する。化物は人間を構成する物質でできている。だから、化物を人間が必要になる魔法の媒体とできないか、それを実験してたんだ。」「じゃあ、河合さんが連れ去られたのは?」「それはおっさんから説明をもらおう。おっさん、どういうことなんだ?そして、何があった?」「私は娘と話し、やめるよう説得してみたところ、説得に応じなかった。すぐに君たちを呼ぼうとしたのだが、遅く、私は娘に襲われた。娘に手を出すわけにはいかないので、ひたすら防御をして説得を続けていたらなんとか、成功したんだ。そしたら急に修道院の奴らが現れて、私を攻撃した。とっさに私は身代わりを作り、あたかも私がやられたかのように見せかけた。なぜ娘が攫われたのかは私にもわからない。しかし、今の話を聞く限り娘は。」「そう、河合さんは恐らく魔法を発動させるための鍵なんだ。そう考えると、修道院たちがやろうとしていることは、禁忌指定されている魔法の発動。」「えっと、つまりどういうこと?」「禁忌指定されている魔法は人を媒体とし、発動するものが多い。そして、そういう魔法には大抵鍵がかけられている。鍵は代々受け継がれるもので、誰が持っているかわからず、本人にもわからない。」「代々受け継がれるのに本人も鍵だとはわからないってどういうこと?」「代々受け継がれるが、その一族は自分の一族が鍵であることが、わからないんだ。そして、禁忌指定されている魔法の中に、この世の生物ではないものを呼び出す魔法もある。」「まとめるとこんな感じ?」
禁忌指定されている魔法を化物を使って発動させようとしている。
その禁忌指定されている魔法には鍵がと呼ばれる人がいて、その人がいないと魔法は発動できない。
鍵となっている人は代々その人の子孫に受け継がれる。
「と、こんな感じか?」「そうだ。てことはだ。修道院は禁忌指定の魔法を使おうとしている?」「そういうことになるな。」「鍵が使われるとその人はどうなるんだ?」「死ぬ。どういう原理か知らないが死ぬことは確実だ。」そう話しているとおっさんが、頭を下げた。「頼む。娘を助けるために力を貸してくれ。」そういうとえいりは、「もちろん。そのつもりだ。この事件、もしかしたら教会側も関わっている可能性がある。だとしたら、俺たちにも責任がある。やらせてもらおう。」そう言うと俺の方を見て、「お前はどうするんだ?ここから先は本当に死ぬ可能性がある。それでも行くか?」「えいりよ。そいつは火に油を注ぐだけだぜ?もちろん。やらせてもらうよ。最後まで。」「そう言うと思ってたよ。では、これより、河合さん救出作戦を開始する。」
凡人が魔法と出会ったとき @gura1107
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