Chapter14『漫画が教えてくれた・中編』

出産するまでは、兎に角仕事をしまくっておこう!

休職した後も仕事が出来るように、

信用を作っておこうと思って、ただ我武者羅に働きました。


お腹に子供がいるのにアシスタント行って、

優しい先生に随分、可愛がってもらいました。

そんな状態の私を雇ってくれた先生に、今でも感謝してます。


そうこうしている間に、予定日が近づいて来て、

さすがに仕事先で破水したら困るので、

家で出来る仕事に徐々にシフトチェンジしていきました。


幸い、出てった彼と同棲を始めるにあたって用意した、

多少の蓄えもあったので、

病院行って、出産して、その後暫く生活する分ぐらいは、

二人の通帳に入っていたんですよ。


まぁ、彼の家がお金持ちでしてね、

ほとんど彼が親に貰ったお金なんですけど、

ちょっとぐらいはね……頂いちゃっても罰は当たらんだろう、

というマイルールを適用してですね、


少し……いやけっこう、失敬した訳です。

幸いというか不幸というか、

彼からはその後、連絡はありませんでした。

負い目があったのかも知れませんね。


そんなある日ですね、

もう生まれる! って直前に家電が鳴ったんです。

それは、投稿していた出版社さんからの、

受賞のお知らせでした。


でも今から出産するんで受賞パーティに出られません、

なんて話したら余程インパクトがあったのか、

「じゃあ、落ち着いたらまた連絡下さい!

待ってます! あ、何か手伝ったほうが良いですかね!?」

なんて感じで、担当さんもテンパッてましたね。


私の息子は、受賞したその日に産声をあげました。


生まれてその日には、ネームを描いてたので、

看護師さんとか呆然とされてましたね。


でも、突き進むしかなかったので、

もう必死でした。


親とも絶縁状態。

頼れる旦那もいない。

そんな状態を不安に思ったのか、

産婦人科の看護師さんに沢山助けられました。


そのお陰で、出産後の不安も少なく、

漫画を描くことが出来ました。


その後、トントン拍子に行かないのが、

漫画の世界ですね。


受賞して、受賞した作品が掲載されました。

そして、穴埋めがあれば新作が載るけど、基本仕事は無い。

そんな感じが何年も続きました。


私が描く話って、

家族と上手く行ってない部分をネタにしてたり、

学生の頃……いじめられていたので、

ヒロインが孤独や悪意と戦うけど、

孤立無援で一人ぼっちだけど、

何か希望を見出して、成長する。

最後は孤独や悪意を笑い飛ばすという物語が多かったですね。


「今回も重い内容ですね……」

なんて感じで、担当さんに苦笑いされてました。

でも、漫画って性格が出ますね。

勝気な人は勝気なヒロインを描くし、

ホワーンとした人はホワーンとしたヒロインを描く。

私のヒロインは弱いけど強い、だけど孤独な人でした。

弱いけど何かを掴み取ろうとする作品を描いてる人って、

けっこう似たり寄ったりの境遇だったりするのかな?

なんて、真剣に考えたこともありました……。


まぁ、そんなこんなで、

暗い重いと言われながらも、

仕事に繋げる為に、間を空けずに、

完成原稿をドンドン担当さんに見せました。

いつかこの努力が届きますようにと願って……。


漫画描きながら息子を見て、

保育園に預けてパート行って、

息子が寝ている間にデジアシの仕事をして、

お肌ガッサガサでした。

20代の女子の顔じゃなかったですね……。


お洒落して、可愛いカバン持って、

綺麗なスーツを着て会社に行く女の子に、

ちょっと憧れたりもしましたけど、

家に帰って息子の寝顔を見ると、癒されました。


そしてようやく、デジアシの仕事が安定するようになり、

ほぼ毎月読み切りが掲載されるようになりました。

後は連載を……どうにか連載枠を!

という願いを込めてネームばかり提出してます。


そんなある日、実家から呼び出しの電話がかかってきました。


「見合い結婚しろ」

「お父さんが一生懸命相手を探してくれた」

そんな内容でした。


―後編に続きます―

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