Chapter02『ばあちゃんと俺の原稿』

少年誌で熱い冒険漫画を描かれている、Iさん(24歳・男性)の漫画道――。


僕ね、ばぁちゃんっ子でさ。

ずっと、ばぁちゃんの家に預けられてたんですよ。


それで、ばぁちゃんが切ってくれた、

整えられたチラシの裏に絵を描いてました。


漫画描いてる人って、ほとんどそんな感じじゃないかな?

ノートの隅に描いたパラパラ漫画。

ダンボールに描いたヒーロー。

チラシの裏に描いた力作。

自由帳にノビノビ描いた夢の世界。

それが気付けば作品という形になっていった……ってね。


まぁ、僕にとってのキッカケは、

ばあちゃんがくれたチラシ裏だった。

で、それが今は原稿になった。


新人の頃、やっと読み切りが掲載された時にですね、

編集さんが泣きながら電話してきたんですよ。

『僕はこんなにも感動したことはない』

とかもう鼻をグズグズにしてね。


『アンケート良かったんスか?』

僕がね、マヌケ顔で尋ねたら、

そんな小さい話じゃない! なんて言うんです。

聞けばね、大量にアンケートはがきが届いたんだって。

とても面白いに○がついてね。

凄い達筆でね。


ばぁちゃん……、

一人で何十もアンケートはがき出してくれてたんです。


漫画なんて分からないだろうに、

『面白かったです』『続きが読みたいです』

『絵がたいへんお上手です』とかね、

全部違うコメントまで書いてあって、

もう僕も担当も号泣。


ばぁちゃん見てるか?

僕は今も漫画家やってるよ。


ばぁちゃん、僕の落書きも全部大事に残してくれてたよね。

ソバボーロの空き箱にいれてさ……。

あの空き箱、僕が引き続き使ってるよ。

フタを開けるとばぁちゃんの匂いがしてさ、

ちょっと泣けるけど、あれを見ると元気が出るよ。

ありがとな。

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