第三十
孝一は、毎日学校に通うことにした。図書室でもいいし、教室でもいいし、正直、母からのプレッシャーで、家では、勉強がしずらかった。
母の悲しい顔を見るのは、辛かった。「何か話して」と、言いたげな顔は、苦しかった。
そう言えば、小学の頃から、母とは、勉強の話しかしてなかった気がする。
そのうち、勉強の話もしなくなり、テストを見せることもなくなり、母は、僕がいつもいい点を取っていたと当たり前の様に、思っている様に、なってたんじゃないかな?と、ふと気付いた。
孝一は、、帰ったら、期末試験の用紙を見せようと思った。
しかし、その日から、母は、家からいなくなった。
愛人の家に行ったのだ。
まだ、幼児の女の子と、小学生の男の子は、母の愛情を注ぎやすかった。
無邪気に、母に抱きつく子供たちは、とても可愛くて、母は、二人の子供を愛した。
そんなことを、知らない孝一たちは、普段通りに、皆帰宅すると、お風呂も夕飯も、できていなくて、三人は、母はどうしたんだと、ワサワサし始めた。
ダイニングのテーブルの上には、紙が一枚置いてあり、それには、「子供達の夏休みが終わるまで、知人の家にいます。ご飯は自分たちで作って下ださい。 母より」と、書いてあった。
父は、憤慨する。「なんて奴だ!家事放棄をしやがって!」
しかし、孝一には、なんとなく母の気持ちがわかった。
「今日は、出前取ろうよ。何がいい?お姉ちゃん?」と聞くと、姉はマイペースに「出前だったら、お寿司がいいな。最近、食べていないから。お父さんは?」
「勝手にしろ!」と言うと、父は、部屋へ行ってしまった。
姉は、「今日は、出前にするけど、明日からは私が作るね」と、優しく言うと、「お母さんの行き先、私わかるよ」と、ポツンと言うと、いったん部屋に戻った。
孝一は、リビングで、出前が来るのを待つと、30分くらいして、お寿司屋さんが来た。
お寿司をもらうと、2人を呼んだ。姉がおりて来ると、目の周りが、赤く腫れていた。
聴きづらくて、黙っていると、父が、おりて来て、姉の顔に気づくと、「あんな奴のために泣く必要はない」と、言ったが、その父もまぶたが赤く腫れていた。
その二人の顔を見て、「ああ、二人も気付いていたんだ」と、思いながら、お寿司を食べ出した。
お寿司を食べ終わると、姉は、冷蔵庫の中を見出した。
「魚もあるし、野菜もあるし、納豆もあるし、明日の朝ごはんはあるから大丈夫だよ。」と、いい、にこっと、笑った。
「夕飯は、僕が作るよ。何か、付け足したいものある?」と、姉に聞くと、「お豆腐もあるし、お肉買ってくれたら、野菜炒めができるよ」と、応えると、「じゃ、朝ごはんのおかずを、買ってきてくれるといいな」と姉はいい、「お父さん、食費」と、姉が催促すると「悪いな」といいながら、お金を渡した。
「風呂も沸かしとくから、二人もいつも通りに、帰ってきなよ」と、言うと、二人はお願いして、父は風呂に、姉は、からになった箱を洗い外に出すと、部屋に戻った。
孝一は、何気に、「この広いリビングも、お母さんが望んで作ったんだよな。」と、言うと「ほんと、理想ばかりね」と姉は言うと、部屋に戻って行った。
孝一は、「お姉ちゃんも、お母さんの理想に振り回されていたのか」と、思うと、その晩の勉強は、やめ、遅くまで、リビングにいた。
父が、お風呂から出て来ると、「なんだ、まだ、いたのか、風呂に入るのか?ならちょうどいいぞ、お湯をはったところだ、入るといい。」と、言うと「そうだね。入ってくよ」と、いい、二階にパジャマとかを取りに行き、降りてくると、お風呂に、入った。
お風呂から上がると、今度は父が、リビングのソファに寝転んでいた。
孝一に気づくと、「このソファは、寝心地がいいな。初めて寝転んだよ」と、気持ち良さそうに言った。
「お父さん、覚えている?みんなで家具選びに行ったこと。そのソファ、お母さんが、ぴょんぴょん跳ねて気に入って買ったこと」と、孝一が、言うと、
「そうだったな、母さんが喜んでいたな」「そんなことも、忘れていたよ」と、言うと、「孝一、なにか、布団がわりに、なる物を持ってきてくれないか?今日はここで眠るよ」と言うと、孝一は、「うん。わかった、持ってくるね」と、いい、二階からタオル布団を持ってくると、父にかけた。「おやすみ」と、互いに言うと、孝一は、二階の自分の部屋に帰ると、布団に入ると、母を思い出しながら、眠りに着いた。
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