第二十八
部活を終え、帰宅する時、とまこは、「昨日、どこに行ってたん?」と、心優に聞いた。
美歌は、「とまこっ!」と、さえぎろうとしたが、とまこは、「水くさいじゃん、あたしらって、親友じゃなかったん?」と、続けると、心優は、「おばさんに、いろいろ聞かれたくなかった」と、言うと、「もう、親がとやかく言う年じゃないよ。信じてくれなかったの?」と続ける。「何も聞かれたくなかった」と、言った。
美歌は、「そうだよ。聞かれたくないことあるよ。もう、よそうよ。終わったことじゃん。」と、言うと、「はい!この話はもうおしまい!」と、遮り、話は終わった。
校門に向かうと、園子が、待っていた。
「お疲れ、心優、何かあったのか?」と、露骨に聞くと、心優は、「これから、あるんだよ」と、ため息をついた。
「不安ならついて行こうか?」と、三人は、同時に言っていた。
心優は、思わず笑い出してしまった。
それから、三人にしがみつくと、泣き声のない涙を流し出した。
気づくと、心優は、泣き崩れて、座り込んでしまった。
三人が途方にくれていると、サッカー部の部活が終わった大祐たちが、帰り支度をして、帰ろうとしていた。
心優を、見つけると、大祐は、真っ先に駆けつけて、心優を抱き起こした。
「大丈夫か?しっかしろ」と、立たせると、その素早さに、昨日誰と一緒にいたのか、三人は何と無くわかった。
「大祐、これから心優を家に連れて帰るけど、一緒に来るか?」と、とまこが言うと、大祐は、今度は逃げない、と、気持ちを固め、「ああ、一緒に行く」と、言うと心優は、「大丈夫。大丈夫だから。。」と、どっから見ても大丈夫じゃない心優に、訳がわからないものの、サッカー部の他の男子も、気になり出し、「お、俺も一緒に行っていいか?」
「お、俺も。。」と、ザワザワとざわつくと、とまこは「ありがたいけど、この人数で行ったら、困るの心優だよ。代表に大祐が、来てもらえたらいいな」と、優しく言うと、みな、何故大祐なんだ?と、思いながらも、「わかった、大祐、任せたぞ!」と言うと、「じゃ、俺たち帰るな」と、いい、みな学校を後にした。
皆を見送ると、「じゃ行こうね」と、美歌が、優しく言うと、心優は、歩き出した。
足は、ゆっくりと心優の家に向かって行った、
途中、心優は、「お母さんわけわからない。あたしが、家出したのに、帰ったら、心配かけてごめんねだって」「どう言う意味?わからないよ」と、続けた。
大祐は、なんとなくわかった。
とまこと、美歌は、歩きながら、もやのかかっていた部分が、晴れつつあった。
そう、あれは、幼稚園の頃、心優と、始めてあった時、心優は、他の子よりも小さくて、ヨタヨタとあまり歩くのが得意じゃなかった。
口数も、少なく、そういえば、あまり笑ったところも見なかった気がする。、、、と、美歌は、思い出していた。
園子は、ただ、不安だった。
大好きな心優が、傷つけられたらどうしようと、心配ばかりが先に出た。「どうやって、防御しよう」と、心優を護る方法を、考えていた。
大祐は、昨日の事を、どう説明しようと、考えていた。
中学生が、男の家に泊まった事を聞いたら、親は、怒るよな、、、と、不安だったが、いざとなったら、本当の事を言うしかない。と、覚悟した。
五人は、心優の家の前に着くと、しばらくみな、茫然としていた。
すると、後ろから、春一が「あー、ヤンキーの姉貴が帰ってきたー!」と、どでかい声で、言った。
ドタドタ!バンっ!
「心優!」と、また母だった。
「心優、先生から無事に来て、ちゃんと授業受けていたんですって、よかったわ。。。」と、泣き顔で、母は、言うと、心優に抱きつこうとすると、すっと、後を引いた。
「心優、、まだ、怒っているの?」
心優の心の中は、疑心しかなかった。全部仮面だ。私なんか、どうでもいいくせに。春一だけだろう自分の子供は。そう思うと、憎しみさえ湧いてきた。
心優の目は、どんどんキツくなり、母を睨み出した。
とまこは、「おばさん、急で悪いんだけど、しばらく私の家から、心優学校に通っていいかな?
ほら、受験勉強もあるし、うちで、集まってやろうと言う話が出ているんだ。」と、言うと、母は、「ありがたいけど、今は、娘と話をしないといけないの。これは、越えなければならないの」と、応えると、「どうしても今じゃなきゃいけないんですか?」と、とまこが、言うと、美歌が、「心優、話が聞ける状態にあると思いますか?」と珍しくキツイ目で言い返した。
園子は、「訳はわかりませんが、今の心優には、力が残っていないんです。蓄えて、話し合いが出来るまで、預からせて下さい」と、応えた。
大祐は、「実は、僕は、昨日、荒井から聞いて知っています。荒井が、帰りたくない気持ちをよくわかります。」
と、言うと、母は、「あなたは誰?心優から話を聞いたって、何を?」と、言うと「昨日、荒井が知ったこと」と応えると、母は、凍りついた。
「みんな知ったの?」と母は、動揺する。
「いえ、知っているのは、僕だけだと思います」と、大祐は、応えた。
そして「昨日は、荒井はうちに泊まりました。うちには、父と妹の三人家族です。荒井は疲れきってました。」
「どうして、連絡をしてくれなかったの?」
「荒井の顔をみたら、先ず荒井を休める場所を確保しないとと、思い、自分の家に連れて行きました。」
「荒井から話を聞いたので、連絡をしませんでした。その事で怒るなら、僕を殴って下さい。」と、言われると、叩きたい気持ちを抑えた。
母は、ため息をつくと、「わかったわ、気が済むまで、預かってくれるかしら?」と、言うと、母は、許した。
心優は、大急ぎで、身支度をして、降りて行くと、母にもじーちゃんにも挨拶もせずに、玄関から出て行った、
そして、とまこの家に向かった。
とまこの家にみんなで行くと、とまこの母は、「あら、珍しく普通の子。とまこにもいたのねー。と、言うと、「いつまでいるかはわからないけど、心優は、心にでかい傷が着いてしまったんだ。傷が癒えるまで、うちで暮らすから。」と、言うと、有無も言わさずに、心優は、とまこの家の新しい住人になった。
他の三人も、家に上げさせてもらうと、とまこの部屋に通されて、一時間程いると、みな、家に帰って行った。
「うちの方が、学校近いから、ギリギリまて、寝てられるぞ」と、とまこは嬉しそうに言った。
今日は、メシ食って、お風呂入って寝ような。と言うと、心優はうん!と、元気良く頷くと、「大祐の家みたい」と、すっかり上機嫌になっていた。
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