第二十六

夜になっても、戻らない心優に、じーちゃんは、不安がった。

母に言うと、「行き場がなくで、帰って来ますよ」と、焦りもしなかった。

実際、心優の行けるとこはなかった。

とまこたちの家に行こうかとも思ったが、おばさんに、いろいろ聞かれるのは、嫌だった。

街を彷徨っていると、大祐と、会った。

心優は、泣き続けていた眼は赤くなり、まぶたは、腫れていた。

誰が見ても痛々しいその顔は、大祐も、びっくりした。

声をかけようか悩んでいる間に、心優の正面に立ってしまった。

ドンっと、ぶつかると、心優は、当たったこともわからず、そのまま歩き続けた。

大祐は、「お、おい、荒井、、、」と、声をかけると、ピクッと心優は、反応した。

自然に振り返ると、「大祐?」と、泣顔から、声がした。

「ああ、そうだよ。どうしたんだよ。何があったんだよ」と、言うと、

「あたし、行くとこないんだ。家にはあたしの居場所なかったんだ。ずっと産まれた時から、なかったんだ」と、言うと、心優は、しゃくりあげて泣き出した。

大祐は「なんだか、よくわからないが、とにかくうちに来なよ」と、言うと「うちに連絡するでしょ?だから、行かない」と言ってまた、歩き出した。

大祐は、止められす、心優のあとをついて行った。

どこまで歩いたろう、心優たちは、隣の街まで来ていた。

大祐は、「なあ、荒井、俺今日ずっと一緒にいるから、少し休まないか?」と、言うと、心優は、振り向いて、「大祐、ずっとついてきていたの?」と、聞くと「ああ、ほっておけるわけないだろ?」と応えると、「大祐ー!」と、心優は、抱きついていた。

それから、公園にたどり着くと、心優は、ポツリポツリと、話して行った。

大祐は、泣かないように、泣かないようにと、気を入れながら、それでも泣きそうになり、横を見ながら聞いていた。

返す言葉は、見つからなかった。

静かに、ただ、心優の泣き声しか、聞こえなかった。

「お、俺ん家来いよ!妹もいるから、安心しろよ。」

「寒いだろう?この季節は、夜冷えるじゃん。親父たちには、荒井が誤解されないようにちゃんと言うから、な!」と、言うと、何度も断ったが、大祐は、諦めず説得すると、心優は、大祐にすまなく思い、家に行くことにした。

それから、1時間半後、心優たちは、大祐の家にたどり着いた。

「ただいま!」と言うと、妹が、真っ先に出てきて、「遅い!どこまで買いに行っていたの?もう、おかずは全部作って食べちゃたよ!」と、プンプン怒っていた。

「その人誰?」と、聞かれ、大祐は、「友達だよ。今日は泊まるから、俺はお前の部屋で、寝ていいか?」と、聞くと「いいけど、お父さんは、知ってるの?」

「親父には、俺から、説明するから、安心しろ」と、いい、「荒井、腹減ってるだろ?何か食べれる物持ってくるな」と、いい台所に探しに行った。

さすが、妹も、心優の腫れた顔がどういう意味かわかった。

「お姉ちゃん、ここ座っていいよ。座布団持ってくるね。」と、言って、取りに行った。

大祐は、「ご飯と煮物があったよ、一緒に食べよう」と、持ってくると

心優は「お母さんは?」と聞いた。「あ、うちいないんだ。昔、離婚して、、、」と応えると、心優は「あごめん、聞いちゃって」と、謝ると

「それより、飯食おうぜ」と、言って、二人で食べ出した。

「荒井、明日どうしようか?学校。」

「う、ん。行きたいような、行きたくないような、。」

心優は、学校は、大好きだった。出来れば休みたくなかった。

しかし、制服もカバンも教材もみな、家にあった。

家には、もう帰りたくなかった。

大祐も、心優の気持ちがわかり、「とにかく今日は、風呂入ってくつろげよ」と言い、風呂場を案内して、タオルとかを用意して、心優はとまこのうちでも良かったかもと、反省しながら、湯船につかっていた。

心優が、風呂から上がると、「俺の部屋きたないけど勘弁な」と言い2階に案内すると、「今日はゆっくり休みな、明日のことは、明日考えようぜ」と、言い扉を閉めた。

心優は、既にだいぶ心が落ち着いていた。

大祐の、優しさに、ホッと心が和んだ。

代えたてのシーツに包まれた、布団に入ると、すぐに寝てしまった。

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