第二十一

日暮れまじか、部活が終わると心優は、日がくれるまで、教室で待っていた。

美歌と、とまこと、杉原も、一緒に待っていた。

「荒井、光を貯めないと光らないんじゃないか?」と、杉原が、言うと、「そうだなー、電柱の灯りでも大丈夫だと思うけど」と、応えると、とまこが、「もう苗字で呼ばなくてもいいんじゃん?うちら、仲間だし」と言うと、杉原は、顔が赤くなった。

「な、名前か、、、」と、言うと、「私は、とまこ。」「私は美歌だよ。」 「あたし、心優」

「と、とまこ、、で。いいのか?」「ああ」と、とまこは応えた。

「み、美歌、、か?」

「うん!」と、美歌が応えた。

「あたしは、心優♪」と、言うと「み、心優でいいのか?」と応えると、「もち!これからは、心優と呼んでね」と、嬉しそうに応えた。

「あたしは、園子でいいぞ」

「よろしく、園子。」と、三人は言うと、

「さて、そろそろ暮れるぞ。」と、とまこが言うと、四人は、一階におりて行き、心優は長靴に履き替え、自慢の傘を広げると、玄関の灯りに照らした。

四人は、「もういいかな?」「いや、もっとじゃないか?」「何分くらい当てればいいんだろう?」「そろそろいいかな?」と、言いながら、結局、10分くらい当てたあと、「じゃ、帰ろうか?」と、まとまり、玄関を出た。

玄関から、数歩離れた時、四人は一斉に「わーーー!」と、声を出した。

「すごい!きれいだねー!」

「思ったよりすごいな」

「スッゲーきれいだ」

「買って正解だぁ」

心優は、傘をクルクルまわしながら、四人で傘の中を覗き込んだりして、帰って行った。

途中で、電柱の灯りで、充電しながら。

そして、みな、ばらばらに散って家路に着いた。

園子は、せっかく仲間に認められたのに、寂しく感じた。

父親の仕事は、紳士服の店長で、いつ転勤になるかわからなかった。

だいたい、二年に一回て感じだったが、早いと半年で転勤になることもあった。

母親は、次に転勤になったら、お父さんには、悪いけど、単身赴任になってもらうから。と、園子と、弟たちに言っていた。

しかし、父親に、惚れていた母が、本当にするかは、兄弟は、疑問だった。

友達出来ては、さようなら。その繰り返し。

いつの間にか、園子は、友達を作らなくなった。

そして、弟たちとだけ遊ぶようになっていた。

心優は、何となく、わかっていた。

男子が話し掛けても、敬語で答える。

女子が話しかけると、応えない。

転校して、直ぐ、園子に話しかけるクラスメートは、いなくなった。

不器用なのは、他のクラスメートたちも気づいていた。

園子が、心を開いてくれることを、ずっと待っていた。

でも、まさか、「傘」で、打ち解けてくれるとは、思っていなかったが。

次の日、心優以外のクラスメートたちが、みな、扇子をパタパタしていた。

教師たちも悩んだが、「OK」と、認めた。

心優は、「.あたし、買い損ねた、、、」と、悔しがったが、園子が、「心優、これ」と、扇子を渡してくれた。

「いいの?」と、聞いたら「いっぱいあるからさ」と、照れ臭そうに渡すと、席に戻った。

前の席の子が、「あんたたち、いつから仲良くなったの?」と、聞いてくると、「きのう」と応えた。

「どうやったら、仲良しになれるんだよ」と、席の近い男子がコソコソ声で話しかけると、「レア物の傘」と、そのまま応えた。

「レア物?!」みな、不思議に思ったが、一時限目が、終わると、「お、 俺、レア物のボール持ってんだぜ」と、野球部の男子が、切り出すと、「私、レア物のセーラームーンのフュギア持ってるよ!」と、続々と園子を囲み、みんな夢中で園子に話し出した。

我慢していた園子は、泣き出してしまった。

急いで席を立つと、教室から、出て行ってしまった。

クラスメートたちは、悪いことを、してしまったのかと、みな、不安になった。

「もう嫌われていると、思っていたのに、、、」

「あたし、無邪気なクラスに入っていたんだ」

「そうだよ。」と、後ろから声がした。とまこだった。

「ちょっといっぷくしようと上がってきたら。先客がいるんだもん。」

「え?」

「先に来たのは、悪かった」ともじもじ言うと、帰ろうとしたら、

「今日が、初めてじゃないじゃん、前から知ってたよ。休み時間になるたび、ここへ来てたっしょ。」

と、言うと、「おかげで、健康優良児になったよ」と、続けた。

「とまこ。知ってたの。」

「ああ」

「教室に帰りなよ。みんな、心配しているよ」

「みんな、泣かせちゃったって、動揺しまくり」

「姿見せたら、落ち着くよ。一組は、そういう組。」

「うらやましいよ。心優は、一年生の時から、寝坊助で、それを悪くとらえられて、つまはじきにされたこともあったんだ。

だけど今のクラスはどういう訳か、団結力の強いクラスでね。

心優も喜んでいるよ」

「うん。そうみたい、、今までのクラスでないのは、気づいていたよ。

でも、黙り続けていたら、誰も寄ってこなくなると思ってた。」

「心を開いてくれることを、ずっと待っている。そういうクラス」

「帰ってあげな」

チャイムが、鳴った。

とまこは、何も言わず、戻って行った。

園子もあとを付き添う様に、クラスへ戻って行った。

クラスに戻ると、園子は、「いや、あの、、、突然でど、動揺してしまった。悪かった。」と、言って頭を下げた。

クラスメートは、「よかった、よかった」と、みな、半泣き状態で園子を迎えた。

「勉強、頑張ろうね!」と、掛け声がかかると、「おー!」と、みな、団結した。

その姿を見ていた、国語の先生は、「このクラスにして、よかった」と、ホッとしていた。

少し遅れて、教室に入ると、「先生遅い〜、みんな待っていたんだよ。」と、ブーリングの嵐がふりかかってきたが、先生は、にこにこ笑うだけだった。

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