第二十

自宅に帰ると、母が、「心優、あの傘いつ買ったの?新品みたいだけど?」と、聞くと、

「あの傘?、セールで買ったんだ。

500円だったかな。」と、言うとそそくさと、部屋に行った。

部屋に入ると、真っ先に傘に飛びついた。

「天気予報だと、明日は雨なんだよ!一緒に学校に行こうね」と、言いながら、「あ、今日の天気予報見ないと」「やっぱ夜の天気予報を見た方がいいな」と、いい、「紺の傘には、紺の長靴がいいよなー。」と、日がくれた、夜の街に、靴屋さんまで、長靴を買いに行った。

「やった!売ってたぁー。良かったー。」と、紺の長靴をみつけると、値段交渉をお店のおじさんとして、500円値切らせると、嬉しそうに持って帰った。

翌日、朝から雨の中、心優はいつもよりは早く目が覚め、テーブルに、おにぎりをみつけると、そのおにぎりを持って、紺色の長靴に、紺色の傘を持ち、嬉しそうに学校に向かった。

小走りに、歩いている生徒たちに紛れて、心優も小走りに歩き、「そういえば、なんで、朝ごはんに、ホットケーキや、おにぎりがあるんだろう?」と、考えながら、おにぎりをむしゃむしゃ食べていた。

ゆかりの混ざったおにぎりは、心優の大好物だった。平らげると、まだお腹空いたなと思いながら、学校に着くと、傘立てにしっかり固定して長靴を入れて、走ってクラスまで行った。

「あ、荒井が遅刻してない」

男子はびっくりした。遅刻していないというが、3分早く教室にたどり着いただけだが。

席につくと、心優は、「あたしだってできるじゃない。」と、満足気に浸っていた。

担任が、来ると、「みなさん、おはようございます。」と、言うと「おはようございます」と、みな立ちお辞儀をした。

「それでは、点呼します。」

と、点呼しだすと、「荒井さん、ているわけないか」と、言うと、「はい!」と、後ろから声がして、担任はびっくりした。

「い、いるのね。先生もホッとするわ」と、言って続けた。

一時限目が、終わると、男子が、「お前、今日早いじゃん。いつもチャイムと一緒に入ってくるのに、いや、チャイムと一緒に入ってくるのは、いい方か。」と、訂正すると、「なんかいい事あったのかー?」と言われ、「いひっ!傘!」と応えると「傘??」と、みんなきょとんとなってしまった。

「荒井の考える事はわかんないなー」と言うと、男子は、ちりじりになった。

「荒井さん、その傘、後で見せてもらえますか?」と、声をかけたのは、転校したての杉原だった。

心優は、「え?」と驚いたけど。「敬語でなくていいよー。照れ臭いじゃん」と言うと、「荒井、それ通販か?」と、返事が返ってきたので、みんなびっくりした。

い、今の空耳か⁈と、みんな思うと、

「昼休みに見せてくれ」と、言葉が続いた。

「わ、分かった」と、心優は、答えると、「こ、この子、私の好みかも」と、思った。

梅雨といえ、暑さはあまり真夏と変わらず、生徒は「あちー、あちー、もうたまんねー」と、扇風機だけの教室で、下敷きをぱたぱたしていた。

「いいなー、窓側、変わって欲しいよ」と、文句をたれていると、窓側族が、「窓側は、直射日光が当たって暑いんだよ」と、言い返し、「じゃあ、窓側二号変わってくれよー」と、「窓側二号て、誰だよー。」と、みんなが騒いでいる頃、「杉原さん?」と声がして、杉原を見ると「杉原さん、それ何?」と、聞くと「扇子」と、一言返ってきた。

みんな、扇子という手があったか、と気づき、下敷きは古いなと、思う様になり、「扇子買おう!」と、決めた。

昼休みになると、杉原は、「傘見せてくれる?」と、心優に言いに来ると、待ってましたとばかり、心優は、杉原を連れて、一階の玄関までいった。

傘置き場まで行くと、鍵を開け、「これだよ」と、傘を広げると、「おー!これだ!」と、驚きながら、「アマゾンの50本限定の傘だ!」とマジマジと見ていた。心優は、「知ってるの?これ、30分で、売り切れになったんだよ」と、言うと杉原は、心優をキっと睨むと、「そう!これは紛れもなく、あっという間に売り切れになった傘だ!」

「お母さんにねだっている間に、売り切れてしまった傘!」

と、言うと、「うらやましいー!」と、言いながら、泣き出した。「私も欲しかった〜」と、言うと「好評に付き、50本増加になったら、今度こそ買ってやる」と言うと、「ありがとう」と、心優の肩に手を置くと、教室に戻って行った。

心優は、唖然としながら、「そこまで欲しかったんだ。じーちゃんにねだって良かった。」と、ホッとした。

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