第十六

昼休み!

心優は、ご飯をとっとと食べ終わると、休む時間に出して揃えていた物を机の上に広げた。

近くにいた学友は、「心優?何それ?」と見出した。

心優は、この子が、ビキニで、この子が、ワンピで、この子は日焼けと、一個づつ置いていった。

「ばーびーじゃん!」

「こっちはリカちゃんだよー。」

「懐かしいー。」

「見てよ心優が、てるてる坊主に水着着せているよ!」と、言って懐かしそうに、抱っこしたりしていた。

「このビキニウケるー!」と、水着審査も通り抜け、男女問わず笑えた。

今日は、面白いてるてる坊主がいっぱいできたねーと、女子が言うと、男子も、「これは、うちが勝利するんじゃないか?」と、満足気に笑った。

心優たちは、授業の後、部活に行くが、「あー、晴れちったい。やらなきゃいけないかーと、ため息尽きながら筋トレして、其の後学校の周り三周、それから、バトンの練習と、一通り終わると、やっとペアづつで、試合ができるようになった。

割り振りで相手を決めると「えー!私荒井先輩とー?」

「嫌なの?」と素朴に疑問に思うと、後輩は「いえ、嫌じゃないです!」と。速攻応えた。

先行で、「行きまーす!」と、心優が、言って打つと、しょっぱな早々、フェイスを越えノーコンとなった。

「これだから嫌。、、」と、後輩はこぼすと「どんまいどんまい、まだ始まったばかりじゃん♪」と、まだまだこれからだと楽チンモードに心優はなっていた。

結局、ノーコン、ノーコン、ノーコンと、心優がみな外し、一点も取れなかった。

ペアを組まされた後輩は、「これだから荒井先輩と組みたくないの!」と、ガックリしていた。

「でももうじき荒井先輩と組みたくても組めなくなる日は、もう時期だよ。今のうちじゃん。」と、二年生の落合先輩が言うと、一年生たちは、「あっという間にいなくなっちゃうんですよね」

「あのノーキャラ、見れなくなるんでよね」と、別の一年生が言うと、気づけば一年生が全員泣いていた。二年生も、「今度の試合で三年生は、引退しちゃうんだな、」と、寂しく思った。

其の頃、三年生は、「なんで心優をレギュラーに入れたんだよ!負けるに決まってるじゃん!」と、言うと、「だって、三年間球拾いなんて、悲惨じゃありませんか」

と言うと、「私たちも、球拾いしてたわよ。でも実力で、レギュラーになったのよ。かわいそうでレギュラーにいれるなんて、聞いたことないよ!」

「わかったわ。心優は外すわ。二年生でメインをやらせるからいいでしょ!」と、幾分声が荒げると、「何をムキになってんのよ!」と、いざこざが起きているのに、気づくと、心優は、「楽しかったー!今日久しぶりに球を打ったー!もう充分♪」と言うと、カゴを持ち球拾いしだした。

「こいつって、運動音痴なのに、なんで頭はやたら強いんだろう?」と、不思議に思ったが、お膳立てして、負けて残念に思うのは自分たちだ。

成績を残さず、弱小チームと汚名が残る。

心優にはもう、ラケットを持たせない。そう三年生は気持ちを入れ替えた。

週末、学校の端っこにある大人用弓道教室に、心優は行くと、「おー、心優ちゃん、また来たかい?少しやって行くかい?」と聞くと、心優は、とても嬉しそうに、「着替えて来る」と、いい更衣室に入ると、窓の外から「心優はテニス部レギュラーから降ろされたんだよ。」と聞こえた。「できるだけ触れないようにな」と、話し声を聞くと、「なんでみんなレギュラーに囚われているのだろう?」と、不思議に思った。

弓道着に着替えると、束ねた二つのお団子を、解き、後ろ一本に結い直すと、軽く身体を動かし、ストレッチすると、それじゃ行きます!と、弓矢を引いた。

次の瞬間、矢はど真ん中を貫いた。

次にまた矢を引く、またど真ん中。

先輩の大人たちは、ごくっと息を飲んだ。

なんでこの学校には、弓道部がないんだろう?弓道場はあるのに。

大人たちは、不服に思いながらも、心優の実力は、プロ並だと認めていた。

「心優ちゃん、進路は決まった?」と何気に聞くと、心優はピタリと動かなくなった。

「み、心優ちゃん?」大人たちは、心優が固まった事にびっくりする。

しばらくぽけーとした後、また、目が光り、弓を引くとバンッと矢はまた真ん中を貫いた。

「私は、お母さんがテニスをさせたかったから、テニスにしただけ。お母さんは、私が小さい時から、テニスについて良く話していたの。それがとても楽しくて、自分も楽しめるんじゃないかなーて。」

そこで話は終わった。

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