第十五
試験勉強をする中で、女子は、どのクラスが一番てるてる坊主を作れるかと競っていた。
廊下に、教室に、窓、と、あちこちにぶら下げてあった。
心優のてるてる坊主は、厄よけだと、教室の入口に吊るされた。
心優は、ピンクの紫陽花も綺麗だな〜と、てるてる坊主を作ると、どぼっと、ピンクの絵の具を溶かした中に突っ込んだ。
びちゃびちゃになったてるてる坊主は、ギューっと絞ったあと、窓につるされた。
窓側の席に座っている女子に、ひんしゅくを買っていた。
「荒井〜、これ何とかならないの?」
「可愛いでしょ、それ」と言うと、
「荒井、、、質問に応えていないよ、、、。」
「乾いたら、可愛く見えるよ〜」
「この雨の中、いつ乾くんだよ」と応えると、「明日には、乾いているよ」と応えていると、「お前ら、受験する気があるのか?ままごとじゃないんだぞ」と、先生が言うと、「はーい」と、元気なく応えた。
と、ドタバタと午後の授業が終わると、心優は、あることを思いつき、筋トレして、帰ると、部屋の押入れの中をバタバタ探しまくると、懐かしいオモチャ箱を見つけた。
「これだ!よぉ〜し作るぞー!」と、元気に作り出した。
次の日、何時ものように、母に起こされ、ゆで卵片手に、学生カバンは背中にしょい、水色の長靴を履き、水色のパラソルを片手に、持つと、雨の中、元気に出かけていった。
学校に着く手前にちょうど遅刻手前組が、小走りしていて、心優も負けずに走っていた。
玄関に着くと、靴箱に長靴を突っ込み、階段を二段飛びで、駆け巡って、教室まで着くと、ちょうどチャイム!
セーフ!と、叫んで入ると、アウト、先生はすでに着ていた。
「なぁぁんだぁぁ〜」と、意気消沈していると、担任は、「この時期に転校なんて、不思議に思うかもしれませんが、彼女のお父さんが転勤になり、この学校の生徒になることが決まりました。みなさん仲良くしてね。」と、言うと、その子は、黒板に名前を書いた。
杉原園子
と書くと、「すぎはらそのこと言います。よろしくお願いします」と、落ち着いて言うと、お辞儀をした。
肩まである髪の毛は、ポニーテールにして、上でクルンと巻いて、一個の団子にしていた。
爪にはカラフルな色で絵が描かれていた。
一組のクラスは、それだけで彼女に魅了された。
心優は、髪は腰まであったが、二つにわけ、上の方で団子にしていたから、心優の髪の長さを知る人はいなかった。
席は柴田の隣になると、何故か柴田は彼女腰に心優を見て、心優は、彼女腰に柴田を見ていた。
同時に、「何やってるんだかな
」と、思い互いに顔をそらした。
一限目、朝から音楽の授業で、心優は、嬉しかった。
音符、読むだけだ。そう思うと、足も軽かった。
心優が気に入っている楽器は、木琴と鉄琴だった。
特に木琴は、心優が二年かけて音楽室に入れてもらえるようにお願いしていた物だった。
学級委員の担当が、杉原さんに、一つずつ教えていっていた。
男子が鉄琴を使って、「キンコーンカンコーン」と鳴らして遊んでいた。
それぞれの席に座ると、釜っけあり?な男性の教師が入ってきた。
すすっと入ると、「ではみなさん、おはようございます」と、しなやかに喋ると、「今日、一組には、新しい生徒が転校して来たと聞きましたが」と言うと、学級委員が、「紹介します、今日から一組になった杉原園子さんです。」と、紹介すると、彼女は、「よろしくお願いします」と立つとお辞儀をした。
「あら、御人やかな子ですね。一組にはもったいない」と、冗談半分本気半分で、言うと、「それじゃそれぞれの楽器を持って、杉原さんは、学級委員に教わりながらやって頂戴」と、言い、音楽の授業が始まった。
心優は、木琴係りになり、楽しそうに演奏していた。
一時限目の授業は、あっという間に過ぎ、生徒は移動時間に時間を取られ、あとはトイレ用にしか時間はなかった。
なかなか転校生と話ができない一組の生徒は、「昼休みだ!」と、みな昼休みを目指した。
隣のクラスや、他のクラスの子も休み時間に、「どれどれ」と見に来ていた。一組の女の子は、「だーめ!まだ見せないの〜」と、邪魔をしながら、自分たちもいつになったら近づけんだろうと半泣きをしていた。
心優は、相変わらずマイペースで、昨日、家で作った物を広げていた。
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