第十三

うちに帰ると、母とじーちゃんは、待ち構えていた。

「面談どうだったの志望校には、受かりそうなの?」と母が聞くと、心優は「ないみたい」と言いながら、手で頭のてっぺんを撫でた。

「ないの?成績は、いいんじゃないの?」と、言うと、「あたしが行きたい学校がないの」と言いながら長靴を脱ぎ、自分の部屋に向かうと「なんか、食べ物ある?お腹空いちゃった」と聞くと、「ホットケーキ作ったげるよ。」と言い、母は、台所に入った。

じーちゃんは、どうやって聞こうかと悩んで、台所に行くと、冷蔵庫の中に苺が入っていたので、それを持ち出そうとすると。「おじいちゃん!ホットケーキが先よ!」と、すかさず母が言い、苺はあとになった。

母は、「できたわよ、食べる?」と言いながらドアを開けると、心優は、机の前に座っていた。

母は、びっくりして、「心優!どうしたの?また、風邪引いたの?」と言いながら部屋に入ると、「お母さん、あたし高校に行けるのかなー。」と言いながら、志望校の記入欄を、ジッと見ていた。

母は、「あら?白紙じゃない、どこにしたの?」と聞くと、「遅刻しても大丈夫なとこか、遅刻しない範囲にあるところ。」と、応えるとおぼんの返事が返ってきた。

今日は、父が帰りが遅く、家族は、母と心優とじーちゃんと、春一だけで夕飯を食べた。

じーちゃんは、苺を洗って持ってくると、「心優、今日の二者面談とやらは、どうだったんだい?」と、聞くと、「じーちゃんは、入れ歯を投げそうだから、言わない」といい、だんまりを決め込んだ。

じーちゃんは、寂しく思った。

父が帰宅して、母とじーちゃんが、言うと、父は、冷静に「心優と話をしてこよう」と言い二階に上がっていった。

弟の春一は、姉が怒られるのかなと、楽しみにしていた。

父は、「心優、入っていいか?」と、聞くと「お父さん?今日残業だったの?」と言いながらドアを開けると「志望校、決まってないんだってな。」と言い、部屋に入ると、「ん?これはなんだ?」と、花瓶を見付けて、「蓮華草か?そうか、今は蓮華草の季節かぁ」と嬉しそうに笑った。

「懐かしいな、よく皆で蓮華草摘みに出かけたよなー。この前行ったのは、、、?」

「ああ、もう昔だな、、。」と言葉を続けた。

「誰にもらったんだ?この辺りはもう畑はないからなぁ?」

と、「友達からもらったの」と言い、本当の事は言わなかった。

父は、椅子に座ると、心優に、「進路がわからないんだってな。お母さんから聞いたよ。お母さんとお父さんの話は、昔したことがあったと思うんだが、覚えているか?」

「うん。覚えている。」

「今思えば、大人の話をちゃんと聞くべきでは、なかったと思うよ。」

「え?」心優は、聞き間違ったのかと思い、「今なんて?」と、聞き返す。

「子供は、子供らしく、元気に毎日を過ごせばいいんだよ。

苦しい人生も、必要なんだが、若い時の苦労は買ってもしろ、て、言葉もあるんだがな。

けど、やっぱり自分の子供は、苦労させたくないな、、」

と、言う頃、父の目はうるうるとなっていた。

「お父さん、大丈夫?」と、聞くと、父はすかさず玉ねぎを出した。

「これは、安眠に良く効くらしいぞ。枕元に置いて置くと、効果抜群!だそうだ」と言いながら、机の上に置いて、話を続けた。

「あれ?何話そうとしたんだっけ⁇」と、ホントにわからなくなってしまった、父だった。

「ん〜ん、また思い出したら来るよ」と言うと一階におりていった。

心優は、まどろっこしくていらいらした。

でも、最近こんな事があったような?と、思い出すが、「え?あれは、美歌が、今のあたしみたいに?」と考えると、思考不能、思考不能と、頭の中が、防御装置が作動して、心優は、考えが中断された。

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