第十一

その頃、とまこは、将来、理工学部に入りたくて、数学を、懸命に勉強していた。

父と母は、その姿が誇らしく、「無事に入れそうだな。」

と、父は、言った。

父は、家庭の事情で、他の子のようには大学に行けなかった。

二年間、働きながら、勉強をして、貯まったお金で、大学に入ったが、

それは二部制の夜間だった。

仕事と、学校で、大変苦労をした。

娘には、そんな苦労はさせたくないと、私立のエスカレーター式の大学まで行く学校に行かせるつもりでいた、

そんな親の気持ちは、つゆしらず、とまこは、理工学に強い高校に進学するつもりだった。

結果的には、親の希望通りの高校に

、入ることになるのだが。

柴田は、悩んでいた「あいつ、女子校にいくのかな?だったら一生懸命勉強しても、意味ないよな〜」と勉強をやめ、ベッドにぽんっと、身体を投げると、途方にくれた。

そして、机の裏から、何かを取り出すと、それは、五個あり、全部「縁結び」の御守りだった。

勉強も、恋もしたい年頃だった。

孝一は、そんな柴田をシビアな目で見ていた。

「何が恋じゃ、所詮勉強には、勝てん!」

孝一は最近、彼女にフラれていた。

「留学出来る学校に行きたいの。

だから、今は受験勉強に集中したいの。ごめんね。」

と、2年から付き合っていた彼女から言われた。

焼け気味の孝一に、社会科の先生が、「人生は、とても長いんだぞ。

歳を取ってから解るが、五十嵐も勉強して、見返してやれ」と、肩をポンと、叩くと、通り過ぎて行った。

「…バ、バレていた?」と、思うと、顔が赤くなり、心臓がドッキンドッキンなり始め、思わずトイレに懸けて行き、扉を開けると、真っ先にうんこ用のトイレに入ろうとしたら、既に先客がいて、「お、屋上に行くか、」と、思ったが、チャイムがなり、仕方なく教室に戻った。

教室に戻ると、「組が別々だったのは、良かったかな?」と、少し落ち着いた。

「あんなに、同じクラスになりたかったのに、俺変かな?」と、思った。

孝一は、別段目立つ方でもなく、と言って、存在がないわけでもなく

普通の男子だった。

だから、彼女から、告られた時は、びっくりした。

「ほ、ほんとに俺でいいの?」と、思わず言うと、彼女は、こっくんこっくん首を縦に ふっていた。

それから、孝一の初恋は始まった。

毎月、三千円のこずかいを、どう使えばいいんだろう?と、悩み、「ディズニーランドは、行きたいだろうな〜。動物園だったら、飯代込みでなんとかうなるかも、、、」と、夢をふくらませた。

たった一年もしない、恋人だった。

「俺も勉強しよう」社会科の先生の言葉が効いたのかわからないが、孝一は、自然と思うようになっていた。

彼女に夢中だった孝一は、全然勉強をしていなかった。

いざ!と、思った時には、もう学校の授業について行けなかった。

孝一は、「あれ⁈俺こんなに出来なかったっけ?」と、昔を思い出すと、成績はいい方だった。

夢中過ぎて、他に何も目に入らなかった事に気付くと、「そうだ、受験だ」と、思い出し、昔のように、独学で地道に学習をし始めた。

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