第九
授業が一通り終わり、部活の時間になると、眠気の取れない心優は、先生に、具合が悪いと言って、部活をやらずに帰った。
家に着くと、母が「あら、早いわね。部活なかったの?」と、聞くと「うん。」と応え、二階に上がって行った。
部屋に入ると、靴下だけ脱ぐと、ベッドに横になり、寝てしまった。
夕飯の時間になり、弟の春一が、食べに来ないから、どうしたのかと、姉の部屋に入ると、心優は、爆睡していた。
「おこそっかなー?やめよっかなー?」と、考えて、起こさないことに決めると、一階におりて行った。
「お姉ちゃん、もっと寝てたいんだってー、後で食べるって」と、言うと、食べ出した。
「あら、そうなの?いつもなら、必ず食べるのにね。」と気になりながら、家族は、食べ出した。
じーちゃんは、もう七十を過ぎて、隠居生活をしていたが、見た目が若いので、老人には見られなくて、それがじーちゃんの自慢でもあった。
ばーちゃんに先立たれて、一時は、がっくりとして、無口になり、何もしなかった時期もあった。
老人性鬱病と、診断され、心優たちは、一生懸命がんばった。
じーちゃんまで、死んだらどうしようと、家族は不安な日々を過ごしていた。
心優と春一は、協定を結び、じーちゃん戻す作戦を、互いに意見しながら考えて、できるだけじーちゃんハッピーになれるようにと、毎日面白いことを考えては、二人で、仲良く挑戦していた。
其のかいがあって、じーちゃんは、元気になった。
じーちゃんは、そんな二人の孫が、可愛くてしょうがなかった。
家族の支えで、元のように、元気になると、家族は、安堵した。
ばーちゃんは、歳の割りに、早く亡くなってしまい、家族はショックだった。まだ、六十を過ぎたばかりだった。
心優は、まだ11歳で、弟の春一は、7歳だった。
心優と春一は、明るく懐こい子供だったが、ばーちゃんが亡くなると、少し性格が変わった。
ばーちゃん子の心優は、じーちゃんにかかり切りで、今思い出せば、じーちゃんが、元気になるのと引き換えに、あまり笑わなくなったように、家族は、感じていた。
まるでばーちゃんの仏壇を避けるように心優は、暮らしていた。
だから、心優が、ばーちゃんの仏壇の前に座っていたのは、家族は驚くあまりの事だった。
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