第2章3話:文章表現能力を鍛える方法(前編)

 タチマチPです。

 今回は、文章を書くに当たっての文章表現能力の鍛え方について説明します。


 文章表現能力ってのは、つまりシーン描写や会話などを文章として書き起こす際に、どのような言葉を作って形成するかという能力ですね。

 プロの作家さんになると、スラスラと難しい言葉や趣深い言葉で物語を描写されています。


 小説を書くにあたっては、少しずつプロのような能力に近づいていくことが望ましいことといえます。

 ただ、あんな小難しい文章表現とかどうやって鍛えればええねんってのは、確かに気になる点ではありますよね。


 今回は、日常の中でどのようにして慢性的に文章表現能力を鍛えられるかという点にて説明を行います。

 ピンからキリまでというよりは、どうやって覚えていけば良いのかってのをメインで書いていきます。


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★文章表現能力の鍛え方

 →自分のいつもの行動を文章にしてみる

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 はい、これが一番の王道パターンです。

 初級者の人は、まずこれを行っていきましょう。


 自分の行動というのは、それこそ言葉のままに、自分の行動を文章にするという意味です。


 朝起きて、顔を洗って、朝ごはんを食べて、身支度をして、出かけるという生活の一連の流れを文章として書き起こしてみることで、人の描写を書いていく癖をつけて、文章を思い浮かべられるトレーニングをします。


 下記は、自分の行動を文章化した例となります。

 小説風というよりは、まず事実を的確に説明した文章にしています。


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【シーン1:起床後】

 午前七時、私はスマートフォンで設定した目覚まし時計の音で起床する。

 前日は、マンガを夜遅くまで読んでいたせいで、いつもよりも体の調整が万全ではなさそうだ。

 全身に気だるさがあり、まぶたが重くてしょうがない。


 しかし、今日は九時に友達との約束があるので、八時前には家を出る必要がある。

 自分の生活バランスの悪さを理由に、遅刻するのは申し訳ない。


 私は、なまりが埋め込まれたように重たい体を最大限の気力をもって起き上がらせ、両腕を上に伸ばしてストレッチする。

 そのまま手をカーテンの前まで移動させ、両手で掴んで一気に開く。


 すると、窓越しから太陽の光が私の部屋へと降り注ぎ、暗かった部屋を一気に明るくさせてきた。

 眩しく両目を塞いでしまうほどに強く照りつける太陽は、寝ぼけた私の脳を一瞬で覚醒させるのには十分なほどだ。


「身支度しないとなぁ……」


 私は小さく呟きながら、ゆっくりとベットを降りて、纏うパジャマをするすると脱ぎ始めた。

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【シーン1:解説】

 ここでは、自分が心の中で思った心情についてと、自分が行った行動について、そして時間や場所、状況についてを文章化しています。


<心情>

 ・朝から眠い

 ・気だるい

 ・もう少し寝ていたい気分

 ・でも、出かける用事があるから頑張らないと


<行動>

 ・スマートフォンの目覚ましをセットする(前日)

 ・夜遅くまでマンガを読んでいた(前日)

 ・気だるい体をベッドから起こす

 ・カーテンを両手で開ける

 ・パジャマを脱ぐ


<場所、時間、状況>

 ・目覚まし時計を通じて時間を説明する

 ・カーテンを開く

 ・天気が快晴であることを説明する

 ・友達との約束がある


 文章の中で大事なのは、とにかくテキストだけで、いかに丁寧に状況を説明できるかということです。

 言葉足らずな文章というのは、読者にとって必要最低限シーンを思い浮かべることすらできなくなってしまう無価値な存在になってしまいます。


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<悪い例>

 私はドラゴンをぶっ飛ばした。やったぜ!


<良い例>

 私はさやから剣を抜き、両手で構えて空高くジャンプする。

 ドラゴンが構えて私に炎を放とうとしているが、もう遅い。

 弱点である額の古傷目掛けて私は刃先を強くねじ込んだ。


 ぐぁぁぁぁ……というドラゴンの強烈な悲鳴が上がり、翼をバサバサと乱した後に、数十メートル上空から大きな音を立てて落下した。

 剣を両手で握ったままドラゴンとともに落下した私は、ドラゴンの目が生気を失っていることをこの目で完全に確認した上で、無事に討伐できたのだと確信した。


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 シーンの描写を丁寧に行う理由には、もう一つ理由があります。

 自分が思っているシーンと、読み手が想像するシーンとで、大きな相違が発生しないようにするためです。

 例えば、上記の「ドラゴンをぶっ飛ばした」だけの描写ですと、殴って倒したのか、剣で倒したのか、全くもってわかりません。

 ストーリーの中で大事なのは、どのキャラが、どこで何をして、どのような結果になったのかというフローです。


 長編作品を作るにあたって、その流れを適切に説明できないというのは、そもそもストーリーとしての形を成していないことになります。


 例えば、一番最初に例として書いたシーンを悪い例で書き直すと、下記のようになります。


【悪い例:シーン1:起床後】

 目を覚ました。

 寝不足だなぁ、でも出かけるから頑張ろう。

 起きて準備する。


 →いつ目を覚ました?

 →何で寝不足? 何で出かける?

 →寝不足だけど、機械的にすぐ準備に移行できるのか、すげえなお前。


 と、このように様々な疑問を残したままで、文章が作られることになります。



<心情、描写の書き方訓練について>

 上記の良い例、悪い例を参考にした上で、まずは自分の一日の行動をテキスト化する練習をしてみましょう。


 自分が今日行った行動の中で、朝起きたときでも、朝食を食べたときでも、余暇を楽しんでいるときでも、どのタイミングでも構いませんので、良い例を参考として、テキスト化してみましょう。


<例>

 朝ごはん食べているとき


 左手でお茶碗を取って、山盛りになった白飯を口の中にかっこんだ。

 今日の味噌汁の具は豆腐だったので、嬉しかった。


 など、とにかくリアルタイムで文章化したらどうなるかというのを考えると、パソコンがなかったとしても小説を書くトレーニングが出来るようになります。


 簡単に始められることですので、まずはササッと始めてみましょう。

 たくさんのシーンをテキスト化できるようになるほど、小説の表現力というのは格段に上がっていきます。

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 次回は、自分以外のキャラとの連携についての描写方法をまとめていきますので、どうぞお楽しみに。

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