第2話‐4 仕事モード

「――というわけなんです」


 えりが話し終えると、二階堂はどうしたものかと思案する。


 もちろん助けたい。しかし、解決策がまったく浮かばないのだ。


「あの……」


 難しい顔をしている二階堂に、不安そうなえりがおずおずと声をかける。


 だが、二階堂からの返事はない。


「らしくねえな、誠一」


 突然、居間の入口から声が聞こえた。


 二人が振り向くと、いつの間にか下りて来ていた、銀色の長い髪を持つ青年――蒼矢が腕を組んで壁に背を預けていた。青と白のチェック柄シャツに蜂蜜色のチノパンを着こなす彼の立ち姿は、ファッション雑誌に載っているモデルかと思えるくらいさまになっている。


 性別や年齢を問わず、彼に魅了される人は数多い。まなみもその一人で、頬を少し赤らめて蒼矢に見とれていた。


 まなみの熱視線に気づいているのかいないのか、蒼矢は軽くあいさつと自己紹介をすると、


「話はあらかた聞かせてもらった。この依頼、受けさせてもらうぜ」


 笑顔でそう言いながら、えりの隣までやって来た。


「本当ですか!?」


 先程まで蒼矢に見とれていたえりが、我に返り期待にあふれた眼差しで蒼矢を見つめる。


「解決策あるのか?」


 二階堂が蒼矢に問えば、


「フウコってのを退治すりゃいいだけだろ?」


 蒼矢は、あっけらかんと告げた。


 確かにそうかもしれない。だが、もし蒼矢の攻撃が通用しなかったら? そんな不安がよぎる。


「何とかなるって」


 今までだって何とかしてきたのだから大丈夫だと、蒼矢が告げる。


 見透かされている。


 表情には出していないはずだ。その証拠に、えりはきょとんとしている。


(まったく、敵わないな……)


 内心、苦笑する。二階堂の不安にだけは、察しがいいのである。そのおかげで、どれだけ心が軽くなったか知れない。蒼矢に大丈夫だと言われると、不思議と勇気が湧いてくるのである。


 二階堂はえりに向き直り、


「改めて、この依頼お受けします。えりちゃんにも協力して欲しいんだけど、いいかな?」


「ありがとうございます! もちろんです!」


 えりは鼻息荒くうなずいた。


 早速行こうとしたが、先程よりも勢いを増した雨音を聞いて、二階堂と蒼矢は上着を取りに自室へと向かう。


 しばらくして、上着を羽織った二人がほぼ同時に居間に戻って来た。


「お待たせ。それじゃあ、行きますか。まなみちゃん、案内よろしく」


 テーブルの脇に置かれている小さな戸棚から名刺入れと免許証、車の鍵を取り出すと、二階堂は蒼矢とまなみに声をかける。


 善は急げとばかりに、三人は二階堂が運転する車で現場へと向かった。

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