1-4 そういうのを不条理って言うんだよ

 ギプスごと切断された右脚を残して、転げ落ちるようにベッドから逃げ出した。

「……っ……!」

 怖い、怖い怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 夢だと分かっていても、なら大丈夫だとかどうにか出来るなんて考えは浮かびもしない。ただ逃げたい。この場から離れたい。あの男の前から逃れたい。それしかなかった。動かない脚を引きずって這いつくばって逃げようとした。

「……てめえ……何度言えば分かるんだよ……」

 聞いただけで全身の筋肉がびりびりと引きつるような声を上げながら、男は残された左脚を踏みつけてきた。

「人の顔見て怖がる顔すんなっつっただろ!失礼だっつってんだろうが!」

 言いながら床を掴んでいた右手に向かって斧を振り下ろした。

「あああ!」

 その勢いに乗って指が飛び散る。

「おかしいだろ?何でてめえが綺麗な部屋でベッドで寝てて、俺が拘置所の狭い部屋にぶち込まれてねえといけねえんだよ!」

 変わらない。何も現実と変わらない。

 鋭利な刃物のように攻撃性に満ちた声。ぼさぼさの髪の間から覗く怒りを漲らせた暗い目つき。訳の分からない理不尽な物言い。

「全部、てめえのせいだ!」

「あがっ!」

 背中を刺された。凶器が槍か剣のようなものに変わったらしい。

「なんっ!でっ!俺がっ!こんなっ!目にっ!遭わねえっ!とっ!いけっ!ねえんっ!だよっ!」

「あっ!がっ!ああっ!」

 そのままめった刺しにされる。一突き毎に白い壁に血が飛び散る。

 体を貫く衝撃に動けずにいると、突然顔を掴まれて左向きに振り向かされる。

「てめえが悪いんだからな……?」

 血の付いた細い刃が、左目の真上にかざされた。

「――――っ!?」

 恐怖で喉が詰まる。声が出ない。

 そのまま真っすぐ、刃が落ちてきた。

「…………!!」

 目の前まで切っ先が迫った瞬間、突如どおんと爆発音のような音がしたかと思ったら、自分に跨っていた男が横っ飛びに吹き飛んだ。

「…………え?」

 男が壁に激突して、「がっ!?」と潰されたような声を漏らした。

「わりい、出遅れちまった!」

 新しく声のした方に振り返ると、バズーカを肩に乗せて構えたチンピラが立っていた。

「……え……と……?」

 突然の事に思考がなかなか追いつかない。なんとか起き上がりながら懸命に頭を回転させる。

「なん……だ……てめえ……?」

 吹き飛ばされた男も混乱しているようだったが、条件反射の如くチンピラを睨み付けながら立ち上がった。

「お前はちょっと待ってろ」

 そう言ってチンピラが引き金を引くと、バズーカから今度は大きな釘のようなものが二本飛び出してきて男の両腕を突き刺し、背後の壁に縫い付けてしまった。

「だっ!?何だよこれ!おいっ!」

 懸命にもがいているようだが、釘はぴくりともせず、抜ける気配は全く無い。しかも一滴の血も出ていない。

 ちょっとあり得ない光景に、確かにこれは夢なんだなと思い知る。

「……夢……そうだ……由芽乃さん……」

 チンピラ然とした男性を見上げて、ようやく思い出した名前を呟く。

「動けるか?ちょっと下がってろ」

 銘作はそう言うと、空いた左手で瑠璃の襟首を掴んで自分の後ろまで引き寄せた。

「わ……ちょっ……ん?」

 襟首から手を離した銘作を見上げると、その左手にだけ黒い手袋をしているのに気が付いた。

 確か現実で見た時にはしていなかったと思う。何か仕事着のようなものなのだろうか。

「脚も全部治したぞ、立てるか?」

「え?……ええ?」

 妙な事を言われて自分の脚を見ると、切断された右脚がいつの間にか繋がっていて、左脚も覆っていたギプスが外れて元通りに治っているようだった。

 しかも飛び散った筈の右手の指も、あれだけ開けられた背中の穴も、服を含めて全て最初から何事もなかったかのように元に戻っていた。壁や床にこびり付いた血痕がなければ本当に暴行を受けたのだろうかと思ってしまうくらいだ。

「脚は元の形は分かんねえから、とりあえず俺好みの細いけどふくらはぎはちょっと肉がついてて程よくくびれてる脚にしといたぞ。違ってたら調整してくれ」

「ちょ、調整!?」

「ああ、お前さんなら出来る筈だぜ」

「ええ?で……出来るって……?」

「おいてめえ……さっきから人を無視してんじゃねえぞ!失礼だろうが!」

「ひっ!?」

 突然壁に縫い付けられていた男が大声を張り上げた。思わず銘作のズボンを握り締めてしまう。

 その銘作は「うるせえな……」と面倒くさそうに呟くと、持っていたバズーカをぽいと投げ捨てた。するとバズーカは手から離れた瞬間、蜃気楼のように消えてしまった。

「おい、前科三犯矢作京介!」

「四犯だ!人を呼ぶなら間違えんな!」

「……うわ……カマかけようと思ったら実際は更に多かったのかよ……」

「……?」

 よく分からない会話で男はまた腹を立て、銘作は引いた顔をした。

「まあとにかくよく分かった。お前はタイプ2、矢作京介自身の精神だな」

「――――っ!」

 思わず息が詰まった。

 そうではないかと思ってはいたが、やはり目の前にいるのがあの男自身だと分かると体の芯から震えが湧き上がってくる。

「それなら俺の独占市場だ。追っ払って稼がせてもらうぜ?」

 なのに銘作ときたら、どちらが犯罪者か分からないような凶悪な笑みを浮かべて指を鳴らしていた。

「……っふざけてんじゃ……ねえぞおお!」

 そんな様子に更に神経を逆撫でされたらしい男は獣のような勢いで吠えると、刺されて動かせなかった両腕をぶちぶちと千切って拘束から抜け出してきた。

「な……!?」

「俺の出したイメージじゃなく自分を上書きしてきたか。思ったよりやるな」

 青ざめる瑠璃と平然とした銘作の目の前で、千切れた筈の両腕がまたずるりと生えてきた。

「分かってやってんのかどうなのか……思いのほか使いこなしてんな」

「邪魔してんじゃねえ!てめえもぶった切るぞ!」

 顎に手を当てて感心したように呟く銘作に向かって、怒声を浴びせながら男が向かっていった。

「何でそいつの味方なん……あがあっ!?」

 その途中で、男の足元の床が巨大なつららのように尖って突き出してきて、男の体を一突きに貫いた。

 尻の辺りから鎖骨付近までを一本の巨大で太い棘に貫かれて、今度はとても抜け出せるようには見えない。

「……凄い……」

 あんなに恐ろしくて絶対的な強者のように思えていたあの男が、まるで大人と子供の喧嘩の如く為す術も無く翻弄されている。

 あの男は実は大した事がなかったのか、それとも由芽乃銘作が遥かに強いのか。

(お前さんなら出来る筈だぜ)

 ――いや、まさか。

「しかし、そんだけの精神力を何でこんな事に使ってんだよ。何で女の子一人をそんなに殺す勢いで付け狙ってんだ?あ、喋れるようにはしてあっから」

 その銘作はと言うと、ぼりぼりと頭を掻きながらまるで暇潰しのように男に問い掛けた。

「……何でじゃねえ!全部そいつのせいだからだ!そいつが俺の言う事聞かなかったせいで俺が逮捕なんかされる破目になったんだ!」

「……は?」

 とても喋れるようには見えなかったが、銘作の言う通り言葉を発する事は出来るらしかった。

 そしてその銘作の質問に対する男の答えを聞くと、銘作は頭を掻いていた手を止めて呆れたような声を出した。

「何回も言った!人の顔見て怖がんなとか!俺にされる事を嫌がんなとか!なのにどれだけ言っても聞きやしねえ!だから殴ったんだ!言う事聞かねえ奴は殴られて当然だろうが!それで何で逮捕されなきゃならねえんだよ!」

「…………」

 血管が切れそうな勢いで喚き散らされた理屈を聞いて、銘作は眉間に皺を寄せながら目を細めて黙り込んでしまった。

 その顔には、呆れて声も出ないという表情がありありと浮かんでいた。

「……ひょっとして、言っても言う通りにしなかったってのがイコール『彼女自身の意思で殴ってくれってせがまれた』って供述になったのか、それとも単に警察がいねえから本音で喋ってるだけなのかは分からねえが……」

 目を伏せてまた頭を掻いた後、す、と視線を男に向けた。

 それとほぼ同時に、ずん、と天井の一部が切り取られたように四角く、それでいてプレス機の様に四角柱状に一気に男の上に落ちてきた。

「とりあえず潰れとけ」

 その声と男に向けられた目には、今までとは違う鋭い怒りが込められていた。

「あ……が……くああ……!」

 うつ伏せの姿勢で天井と床の間に挟まれた形の男は苦しそうな声を上げ続けている。本当にプレス機のように重みで潰しているのだろう。

 辛うじて挟まれずに済んだ右腕がじたばたしていたが、ふいに歩み寄った銘作がその手を勢いよく踏み付けた。

「ぐ……!?」

「これから見ねえ方がいい事すっから、目え覚ませるなら覚ましといた方がいいぞ」

 そう背後の瑠璃に忠告すると、銘作は軽く右手を掲げた。

 その手の中に、蜃気楼のように一台のチェーンソーが現れた。

「!?」

 何が起きるのか想像がついたが咄嗟に目を覚ませる気がしなかったので、慌てて耳を塞いで目をぎゅっとつぶった。

 間も無くチェーンソーが回転する音が聞こえてきたかと思うと、すぐに男のけたたましい悲鳴と、何か水分を含んだものが削られ、飛び散る様な音が聞こえてきた。

「あああああああああああ!」

「痛みは無くても、肉や骨が削られて飛び散る感触くらいは再現してやれるからな」

 大きな声と音の隙間にそんな声が聞こえた。

 やがて音が止み、恐る恐る目を開けてみると、銘作の左手にじたばたと動く右腕が握られているのが見えた。

「!!!!!?????」

「暴れんなよ、輪切りにすっぞ?」

 ある意味想像していた以上にショッキングな光景だったが、切られた腕がじたばた暴れるという現実にはあり得ない様子と、飛び散るような音の割に周囲には一滴の血も見当たらなかった事が多少衝撃を和らげてくれた。

「て……てめえ……自分が何やってっか分かってんのか……!?」

「いや、お前に言われる筋合いねえけど」

 ぜえぜえと荒い息を漏らしながらも悪態をつく男の腕を肩に抱えるようにすると、暴れていた腕が今度は銘作の後ろ髪を捕まえて引っ張りだした。

「ちょ、痛えな、引っ張んなって、ほんとに輪切りに……?」

 突然持っていた腕を床に投げると、銘作は一跳びで瑠璃の近くに戻ってきた。

「由芽乃さん……?」

 銘作の顔を見上げると、今までと違う真剣な目で男の方を見ていた。

「由芽乃さん……何か……え!?」

 つられるように男に目をやると、男の体側の切断面からずるずると黒い影のようなものが抜け出てくるのが見えた。

 それは投げ捨てられた腕へと床を這うように向かっていき、間も無くその切り口へと繋がった。

「……!?」

 夢の中なのだから何が起きても不思議ではない筈だ。だが今目の前で起きたこの光景には、瑠璃は何とも言えない異様さを感じた。

「由芽乃さ……ひゃ……っ!?」

 思わず銘作の方へと身を寄せると、急に銘作の腕が瑠璃の腰を捕らえて、その小脇に小柄な体を抱え上げた。

 次の瞬間、瑠璃を抱えたまま銘作が天井に向かって高く跳躍したと思うと、気が付いたら屋上らしき場所に出ていた。

「え……え?」

「ちょっと待っててくれ。目え覚ませるなら覚ました方がいい」

 屋上に下ろされたが、自分の脚は見た目は治っていても立てる気がせず、その場に座り込んだ。思わずきょろきょろと辺りを見回していると、銘作は妹にちょっとした事を言い聞かせる兄のような声色でそれだけ伝えた。

「あの……由芽乃さん、今のは……?」

「ああ、タイプ3になろうとしてんだ」

「……タイプ3?」

 そういえば銘作は、悪夢の原因は大きく分けて三つあると言っていた。だがその三つ目の説明だけは聞かされていない。

「今まさに変わろうとしてる瞬間に出くわすなんて珍しいぜ?でもちょっと危険だから離れてた方が……」

 そこまで言った所で、また銘作が瑠璃を抱えてジャンプした。

 次の瞬間、足元のコンクリートを黒い何かが破壊して飛び出してきた。

 よく見ると、それは異様に大きい手のようだった。

 野球のグローブを更に二回り程上回る大きさだったが、動いているのでグローブなどではない事が分かる。

 離れた位置に着地し、また下ろされる。

「壊してきやがったか。俺みてえにすり抜けりゃいいものを」

 間も無く自分が作った穴に手をかけ、その手の主が這い上がってきた。

「……え……!?」

 体の右半分程を影のようなものに包まれ、関節が無くなったかのように黒く蠢く腕は体の倍はある長さになっていたが、その顔は紛れもなく自分を苦しめたあの男で間違いが無かった。

「てめえじゃねえ……そうやって刺したり切ったりしていいのはてめえじゃねえ……!」

 地の底から湧き上がってくるような怒声を漏らしながら、男は長く伸びた手を屋上に付いたまま、獣のような姿勢でこちらを睨み付けてきた。

 するとその体から怒りが漏れ出したかのように、その周囲に黒い影のようなものが二重三重と現れ、男の全身を次々と包み込んでいった。

「……何……あれ……」

 何かに包まれていくその体は、四つん這いの姿勢のまま見る見るうちに大きくなっていき、長かった腕が体に対して普通に見える程の、体長五メートルはある真っ黒で巨大な姿となった。

「お、お、お、お、お、お、お、お!」

 呻き声のような、吠えるような声が聞こえたと思うと、首から上が何かに引っ張られているかのように伸びていき、いよいよ人とはかけ離れた形へと変わっていった。

「……あれ……は……一体……?」

 茫然とその様を見つめる事しか出来ずにいた瑠璃が絞り出したかのように呟くと、銘作がどこか楽しさすら感じさせる様な声で答えた。

「あれが悪夢の三つ目の原因、夢魔だ」

「……む、ま……?」

 そうしている間にも目の前のものの頭と首は伸びていき、四つん這いの姿と相まって漆黒の馬の様にも見えてきた。

「他人の夢に入り込んで、他人を苦しめるって行為に取り付かれた人間は、あの夢魔になっちまうんだ。あいつの性格考えたら変わるのが遅いくらいだけどな。ようするに、性根が曲がり過ぎて化物になっちまったってわけだ」

「……ばけ……もの……」

 確かに自分の目には鬼か悪魔かの様に映っていた男だった。

 その男が今まさに目の前で、本当に人ならざるものに変わってしまったのか。

「ああなると誰の夢にも自由に出入り出来て、自分も他人もその夢も自在に上書き出来るようになるし、他人の意識を体から引き離して捕まえたり、記憶まで覗いてその人間が一番苦しむ方法で苦しめる事なんかも出来る。まあ今注意が必要なのは、夢魔に傷付けられると本当に怪我する、殺されりゃあ本当に死ぬって事だ」

「……!?」

 耳に入っているのかいないのかも分からないような状態で説明を聞いていたが、その最後の部分だけはざわりと胸を刺したのが分かった。

(ちょ、痛えな、引っ張んなって)

 ようやくあの時銘作が警戒した理由が分かった。夢の中で痛みを与える事が出来た事こそ、あの男が夢魔に変化しかけていた証だったのだ。

「……そんなの……どうしたら……」

「まあ、やる事は大して変わりゃしねえさ」

 そう言いながら銘作が右手を横に伸ばすと、その手の中に、カッターで皮膚に一直線に傷を付けた時のようにぷつぷつと黒い靄のようなものが浮かんできた。

 その靄がやがて細長い枝のような一本の線になったかと思うと、銘作の身長よりも高い位置にあるその線の先端に半分だけの妙に広い傘のようなものが付いていて、それは巨大な鎌の形をしているのだと分かった。

 その鎌は先程まで銘作が出していたバスーカやチェーンソーと違って輪郭がはっきりしておらず、水に落としたインクの塊のように姿が揺らめいていたが、先程の二つと違って、それには相手を攻撃しようという明確な敵意があるように感じられた。

「こうする!」

 そう叫んで鎌を構えながら飛び出していくと、銘作は化物の左腕を一閃に斬り付けた。

 斬られた箇所から黒い液体のようなものがぶしゅっと噴き出す。あれは血なのだろうか。

「おおおああああ!」

 化物が吠えた。負傷して苦しんでいるように見える。

「ってめえ……いつまでも調子に乗ってんじゃねええええ!」

 怒声を吐き散らしながら化物が右腕を振り上げた。巨大な拳が銘作を叩き潰さんと振り下ろされる。

「由芽乃さん!」

「心配ねえよ!」

 そう言って銘作は鎌を振り上げると、自分の上半身を握り潰せそうな手をその刃で受け止めた。

「っぐ……!?」

 そのまま銘作は左手を離すと、その手の中に拳銃らしきものを出し、化物の顔に向かって立て続けに発砲した。

「ぐあああ!」

 ひるんだ化物の拳を下に受け流し、その勢いのまま高くジャンプし頭目掛けて鎌を振り下ろす。

「そら、よっ!」

「くっ!」

 その攻撃をなんとか左手で受け止めた化物は、そのまま銘作を払いのけるように腕を振るった。

 だが少し後ろに飛んだだけで、銘作は空中で静止してしまった。

「え?……あ……そっか」

 夢の中なのだし、彼なら空ぐらい飛べても不思議ではない。

「案外粘るじゃねえか、今ので仕留められると思ったぜ?」

 銘作は鎌を肩に乗せると、馬鹿にしたような笑みを浮かべながら化物を見下ろした。

「……っく……畜生があ……!」

 かろうじて目と口の位置が分かる程度に顔も真っ黒になっていたが、それでも化物が歯噛みしているのであろう事は容易に察する事が出来た。

「……っざけんなあああああああ!」

 空間が震えるのではないかと思うような絶叫を上げると、化物はまた手を振り上げた。

「おっと」

 それも空中で後ろに移動して軽く避けてしまい、銘作の位置よりも高く振り上げられた腕が空を切る。

 その手が、カマキリの手のように鎌状に変化した。

「……っ!?」

 突然自分に向かって伸びてきた鎌を避けきれず、銘作の胸から縦一文字に血が噴き出した。

「――――え?」

 一瞬、何が起きたのか分からなかった。

 彼が怪我をする所なんて、想像も出来なかった。

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