第8話 ロッティーの大事なもの

「チャムを許して欲しいなら、おまえが持っている物の中で……」

イノシシはそう言うと、ひと呼吸してから――。

「一番大事な物を俺たちによこせ!」

「ええー!」

ロッティーは困りました。

今持っている物の中で、一番大事な物と言えば

カラスのおばさんがくれた、

キラキラ光る色ガラスしかありません。

すごく気にいっているので、やりたくない。


「どうだ、一番大事な物をわたすのはイヤだろう?」

「こんなウソつきは放っとけばいいんだ」

「俺たちにチャムを殴らせろっ!」

三匹は口々にまくし立てました。

ウソつきチャムのために、

カラスのおばさんがくれた色ガラスをわたすのは、

ホントに惜しいのです。


「どうせ、口だけだろう? こんな奴、たすける価値ないぞ」

そういうとイノシシはチャムの首を絞めあげました。

「痛たたぁー」

チャムが苦しそうにもがいています。

「やめてください! これをあげます」

キラキラ光る色ガラスを、ロッティーは差し出しました。


「おおー!」

三匹はおどろきました。まさかロッティーがチャムのために

一番大事な物を差し出すとは思っていなかったから、

「きれいなガラスだな、ホントに俺たちにくれるのか?」

「ええ、だからチャムは許してあげて」

「わかった! ウソつきチャムはおまえに返す」

イノシシはチャムを放しました。

やっと、三匹は森の中へ帰っていってくれたのです。


「ロッティーありがとう」

しんみょうな顔でチャムが礼を言ったが……

「もう、あなたの顔なんかと見たくない!」

ロッティーは怒っています。

大事な色ガラスを三匹にわたして、くやしかったのです。


ムーンライトの森に向かって、はや足で歩くロッティーの後から

なにか言いた気にチャムがついてきます。

「ロッティー怒ってる?」

「あなたのせいで、カラスのおばさんがくれた色ガラスをなくしたのよ」

「ゴメンよ……」

「もう! あたしについてこないで!」

きつい口調で、チャムに向かってそういうと、

ロッティーは泣きながら、荒れ地へ走っていきました。


――その後ろ姿を、しょんぼりとチャムが見送っていた。

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