第7話 ムーンウインドの森の住民たち

「ロッティー! たすけて!」


その声に、思わず目を開けてしまったロッティー。

見れば、チャムがイノシシに首根っこを押さえられて、

周りにはハリネズミとイタチもいます。


「たすけてよぉー」

チャムはイノシシにつかまれて、ジタバタしていました。

ロッティーは知らん顔で逃げようと思いましたが……

みんなに取り囲まれて、チャムが泣いていました。


「このウソつきチャムめ! ぶん殴ってやる!」

イノシシがこわい声で言いました。

「おまえのウソのせいでひどい目にあったぞ! ハリでつき刺してやる」

ハリネズミもカンカンに怒っています。

「ウソつきには、おいらの臭いガスをおみまいするぜ」

イタチがおしりを向けました。

どうやら、チャムのウソのせいで、みんな迷惑したようです。


……ものすごく怒っていて、チャムはひどい目に合わされそう。


「お願いです。チャムを許してやってください」

思わず……ロッティーは口走ってしまいました。

知らん顔で逃げようと思っていたのに……

チャム一匹に、おおぜいは卑怯だと思ったからです。


「ん? おまえは誰だ」

イノシシが聞きました。

「ムーンライトの森からきたロッティーです」

「よそ者はすっこんでいろっ!」

ハリネズミが怒鳴った。

「さては、おまえもこのウソつきの仲間だな?」

イタチがうたがわしい目で見ました。


「俺はウソついてないのに……こいつらがイジメるんだ」

チャムが言い訳しましたが、すぐにウソだと気づきます。

「なんだとぉー? このウソつきがっ!」

イノシシがチャムの頭をポカッと殴りました。

「みなさん、チャムはウソつきで、わたしもだまされました」

「おまえもこのウソつきにだまされたのか?」

「じゃあ俺たちの仲間だ! 一緒にこいつをぶん殴ろうぜ」

ハリネズミとイタチが言いました。


「いいえ、わたしはチャムを殴ったりしません!」

「そうか! だったらどっかへいけよ」

ムッとした顔でイノシシが言います。

「そして、チャムを殴らせたりしません!」

「なんだとぉー?」

全員が口をそろえて聞き返しました。


「いいこと、チャム。みんなにウソをついたこと、ちゃんと謝りなさい」

「……分かった」

ロッティーに言われ、チャムは素直にうなずきました。


「みんな、ウソついてゴメンなさい」

チャムはみんなに謝りました。


「チャム、そして二度とウソをつかないって誓いなさい」

さらに、ロッティーに言われ、コクンとうなずくと……。


「二度とウソはつきません」


「ちゃんと謝って、ウソつかないこと誓ったから、もう許してやって」

ロッティーがチャムの手を引っ張っていこうとすると、

「待てよ!」

「俺たちは謝ってもらっても気がすまない」

「そうだ、そうだ!」

三匹は口々に不満を言いますが、

そんなことを言われても……

どうしたものか困ってしまいます。


「じゃあ、どうすればチャムを許してくれるの?」

「そうだなぁー」

イノシシはしばらく考えてから、仲間と相談を始めました。

三匹はヒソヒソしゃべっていましたが……

どうやら決まったようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る