第3話 ロッティーしじんと出会う

ゴツゴツした岩ばかりで、草木もはえていない。

そんな寂しい荒れ地をロッティーは歩きます。

時々、磁石で方向をたしかめたりしながら進んでゆく――。

荒れ地をこえると『 知らない森 』が見えてくるはずです。


しばらく歩くと……

荒れ地の黒い岩の上に、だれかがすわっています。

近づいてよく見ると、一匹の大きなブタでした。


「こんにちは。ブタさん」

ロッティーはあいさつをします。

すると、そのブタは……

「ん? 今、わたしのことをブタさんと呼んだかね?」

「はい。だってブタさんだもの」

「なぜ? わたしをブタだと決めつけるのだ」

「えっ? ちがうの」

そんなことをいわれて、ロッティーはおどろきました。

肩からマントをはおり、とんがり帽子をかぶって、

ギターに似た楽器マンドリンを持った、

大きなブタに違いありません。


すると、ブタはマンドリンをかき鳴らしました。


   空は青いと だれが決めたぁ~♪

   雲は白いと だれがいったぁ~♪


   ホントの色なんか分からない

   見た目じゃあ 中身は分からない

  

   空の色も 雲の色も みんな

   思いこみで決めつけるなぁ~♪

  

なんだか、ヘンテコリンな歌をうたっています。


「どうだい、分かっただろう?」

「なにが?」

「きみは見た目で、わたしをブタだと決めつけたのさ」

「ブタさんじゃないなら、あなたはだぁれ?」

「わたしはしじんなんだよ」


やけに偉そうに、ブタが胸を張って言いました。


「しじんって? そんな動物はしらないわ」

「しじんは動物ではない。月や星や風とも話ができるんだ」

「あたし、先を急いでいるので……さよなら」

この変ったブタの元から去ろうとしましたが……。


「あ、ちょっと、きみ!」

「なにか?」

「わたしの話をもっと聴きなさい」

「あたし『 知らない森 』に行くのに急いでいます」

「ふむ。だが、きみはしじんのことを知りたくないのかね?」

「……じゃあ、しじんって、どんなことができるの?」

「いい質問だ! しじんは『心の目』を持っている」

「こころのめ?」

「だから、真実が見えるのだ」

「ふーん……」

ロッティーには、ブタのいうことがよく分かりません。

「大事なことは目には見えない。だから『心の目』で見るのだ」

「はい」

「君はだまされやすそうだから、用心しなさい」

「ありがとう、しじんさん。じゃあね!」

ロッティーは再び『知らない森』を目指して、

早足に歩きはじめました。


   この世は ウソがいっぱいだぁ~

   あいつも こいつも ウソつきだぁ~


   だれかがウソをついても みんな信じてしまったら

   それはウソじゃあない ホントになるんだぞぉ~


   ホントの中に混ざってる ウソがいっぱい

   ウソにかくれた ちょっぴりのホントもあるさ


   言葉を信じるな 『心の目』で見るんだ

   お人好しは気をつけろ カモにされるぞぉ~

  

   だまされるなぁ~ だまされるなぁ~♪


自分をしじんだという変なブタが、

マンドリンをかき鳴らして、また歌っています。

その歌声は大空にすい込まれてゆく――。

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