第2話 おてんばロッティー

すくすく育ったロッティーは、

ムーンライトの森中で、

一番おてんばな女の子になりました。


川遊び、キノコとり、森の探検など

毎日、森の中をかけまわって遊んでいます。


いろんな遊びの中でも、ロッティーは木登りが大好き。

ムーンライトの森で一番高い木のクスノキに登るのが

とくにお気に入りです。


ある日、クスノキのてっぺんに登って、

遠くをながめていると、ムーライトの森をぬけて、

荒れ地をこえると、こんもりと木が茂った、

別の森があることに気がつきました。


「ねぇ、お母さん。向こうの森はなんて名前なの?」

ロッティーはお母さんにたずねました。

「さぁ、知らない。昔から『知らない森』って呼んでいるけどね」

「お母さんはあの森に行ったことがある?」

「いいえ、行ったことはないよ」

ロッティーのお母さんも、そのまたお母さんもだれも、

あの『知らない森』に行ったことがなかったのです。


どんなところだろう?

クスノキのてっぺんから見える、

あの『 知らない森 』が気になって、気になって……。

ロッティーは仕方がありません。


いつか『 知らない森 』に行ってみたいなぁー。

おてんばロッティーは、そんなことを考えていました。


ある日、お母さんに思いきって言いました。

「わたし『知らない森』に行ってみたい」

すると、お母さんはおどろいて。

「ダメ、ダメ! あの森には、だれも行ったことがない」

「だから、わたしが行ってくるわ」

ロッティーはそう答えました。


それからロッティーは毎日、毎日……。

どうしても『知らない森』に行ってみたいと、

お母さんにお願いしました。


ついに、根負けしたお母さんは、

ロッティーが『知らない森』に行くことを、

仕方なく許してくれましたが、


かわりに、三つの約束をさせられました。


   ひとつ、ウソをつかない。

   ふたつ、欲ばらない。

   みっつ、友だちを大事にする。


「はい。三つの約束は守ります!」

ロッティーはお母さんと約束をして、

ついに『知らない森』に行くことになったのです。


お母さんは、とても心配だったけれど、

『可愛い子には旅をさせろ』

ということわざがあるので、

行かせてみようと思ったのです。


だけど、お母さんの心の中では、

よっつ目の約束……。

『無事に帰ってきてね』

これが一番大事な、

ロッティーに守ってほしい約束でした。


「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい」

お母さんが見送ってくれました。

やがて手をふりながら、ムーンライトの森へ、

引き返してしまったのです。


お母さんの姿が見えなくなると、

急にロッティーは心細くなって……。

『知らない森』に行くのを、止めようかと思いました。


ダメ、ダメ!

お母さんとの約束、ウソをつかない。


もしも、ここで行くことを止めたら……。

『知らない森』に行きたいと思っている、

自分にウソをつくことになります。

お母さんとの約束を守らなければいけません。


背中のリュックには、

磁石と食べ物とお水が入っています。


元気いっぱい! ロッティーは、 

だれも行ったことのない『知らない森』を目指して、

一歩一歩と、進み出しました。


――くまの子ロッティーの冒険の始まりです。

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