第8話 天龍
───紅い月の夜。
神魔大戦の後、悪魔召喚術の副作用につき年に2度、人界と魔界との境界が薄くなる。障気の渦巻く夜が月を紅く見せる。魔術師と法術士が警戒にあたるも、密かに人界に侵入した夜族による事件が後を絶たない。
エリカの示すおまけ、それは今は戒流しか知らないはずであった事象。遠い昔、戒流がまだ夜族の元で魔術を修行していた頃の話であった。
「エリカ・・・知っていたのか?お前一体・・・」
「話はあとよ。くるわ!」
ドゴオオオオオオオオオン!
突如足下から突き上げるロドスバデスの尾に吹き飛ばされる三人。
「くっ・・・」
「どわああっ!」
「キャアアアア!」
『怒リ、全テヲ、無二』
ロドスバデスの咆哮が再びマグマを吹かせる。
「バカイル!隠してるもんあるなら早くして!エリカとアタシで時間を稼ぐ!」
「フィーア!後ろっ!」
エリカの助言は間に合わず、フィーアは高速で地より現れたロドスバデスの牙の餌食になる。
バクウウウウウウッッッッッッ!
「あ・・・ぐあっ・・・」
鋭い牙に喰い貫かれたフィーアの身体から鮮血が迸る。
「弐百伍拾陸式『鬼神乱舞』」
イヤリングを使用した全方位からの射出に加えて高速斬撃を繰り出すエリカの奥義のひとつ。硬い皮膚を失ったロドスバデスの肉体を傷つけることには成功した。しかし・・・
「厚すぎるっ!」
ゴォォォォォッ!
ロドスバデスはフィーアを振り捨て、火球を吐き出す。
やむなくイヤリングを使用し、それを回避するもエリカは舌打ちをする。
魔道具には一日の使用限界がある。それを越えて使用すると倍の代償を支払うこととなる。ここに来るまでの連戦により今日のイヤリングの使用限界に到達してしまっていた。
一方、戒流は上空に吹き飛ばされながら右肩のそれに話しかけていた。
「ポチ、力を貸してくれ。思ったよりやべえ・・・」
「キュー!」
任せろとばかりに小さな腕で自身の胸を叩くポチ。ニヤリと笑むと戒流は詠唱を開始した。
───我、契約せし戦士なり。汝、今こそその力を解き放ち、真の姿をここに現したまえ。汝の真名は・・・
『天龍・ロードスプレッド!』
ポチの首につけられた宝玉が発光して砕ける。小さな恐竜だったそれは急激に成長し、8枚の翼を纏った白い龍へと変化した。
「さて、反撃開始だ!」
『キシャアアアアアアアアアアア!』
戒流は天龍・ロードスプレッドの頭上に乗ると敵を見据えギリッと奥歯を噛み締めた。
遊撃合葬曲 田中シンヤ @seapcrest
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