第7話 地龍
───第一次神魔大戦。
遡ること二十年前。小競り合いを繰り返していた神聖教会と魔術師協会がついに戦争を始めた。攻勢的要素を多く持つ魔術師に対抗すべく、劣勢に立たされた法術士は禁忌とされる悪魔召喚術を使用し、魔界より夜族の集団を呼び寄せる。しかし夜族の人類に対して見境ない攻撃に両者は一時休戦。戦争は人対人から人対夜族へと変わった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
それは地震と呼ぶよりは地鳴りに等しいものだった。この地のあちこちが裂け始める。
「く・・・まともに立っていられないわね」
体力が回復して間もないフィーアは建物の壁をつたいながら外へと出る。
「『紅い月の夜』の狂気で盛っているのね。少し手強いかも」
エリカが針を構え、戦闘体勢に入る。
「俺は飛べるから気にならねえけどなー。結構でけえなあいつ」
杖にまたがり、地上数メートルの高さから戒流はそれを視認した。
「戒流!相手はなにもんなの!?」
フィーアのそれに答えたのは戒流ではなくエリカだった。
「魔界の二大神龍の一体。地龍・ロドスバデス」
ズドオオオオオオオオン!
黒い身体の大蛇はその姿を地上に現した。硬い鱗に覆われ大きく開いた口の中には長く鋭い牙が並ぶ。
『ニンゲン、ワレノ地ニ許可ナクアガリシ罪ヲ恥ジロ』
人語を話すとロドスバデスは雄叫びをあげる。地の裂け目から深紅の液体・・・マグマが吹き出す。
「おいおい・・・一階層破滅すんぞ・・・」
戒流がスイスイとマグマを避けながら詠唱を開始する。
「参拾弐式『迅』!」
エリカが前方に32本の針をまとめて射出する。しかしそれは命中してもその皮膚は固く貫くことはできないであろう。
『ムダナコトヲ』
「そうかしら?」
エリカは左耳のイヤリングを弾き、時を止めると寸分違わぬ場所に追加の32本を射出し、時を戻す。
「陸拾肆式『重』」
命中した先の針の後ろに続けて勢いをつけた針が当たることにより、倍の勢いをつけた攻撃となり、硬い皮膚を貫く。
『ソノ程度カ』
「おまけが本命よ。解・『縛符』」
ビシイッ!
突き刺さった針に込められていた氷結の魔術が解放され、一瞬ロドスバデスの動きを封じる。
『グ・・・』
「戒流!」
エリカは上空で詠唱を完了した戒流に合図を送る。
「いっくぜー!マハ・アグニ・イクス!!」
猛スピードで滑空し、ロドスバデスの頭上に爆裂魔術の倍掛けを叩き込む。
ドゴオオオオオオオオオン!
たまらず巨体を地に伏すロドスバデス。しかしまだ戦意は消失していない。
『貴様ラアアアアアア!』
起き上がりの瞬間
「二人とも、下がって!」
2台の対戦車用ミサイルポッドを召喚していたフィーアが計8発の弾を射出する。
ドドドドドドドド!
中距離からのロックオンに外す理由はなく全弾命中につきとうとう硬い皮膚を破壊し、内側の骨肉に致命傷を与える。
「やったか!」
「こらバカイル!フラグたてんな!」
「フラグ・・・?」
ズズズズズズズズ・・・
『貴様ラ文字通リ逆鱗ニフレタ・・・コノ階層ト共ニ消エヨ!』
ロドスバデスは地底に潜り込み、姿を消した。
「あっちゃー・・・」
フィーアは手のひらを額に当てて失意する。
「フラグってなんだ?」
戒流の頭の上にはハテナマークが消えなかった。そんな戒流にエリカは語りかける。
「戒流、私は言ったわ。おまけが本命、と。その意味わかるわね?」
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