第4話 集結

戒流。人間の年齢で17歳の男子魔術師。尖った耳を持つ人間と夜族のハーフ。生まれてすぐに人間の母親に捨てられ、とある夜族に拾われたのち魔術能力に開花する。


「キュー!」

ピンクの小さな恐竜が戒流の頬をペチペチと叩く。

「う・・・ポチ、大丈夫だったか?いてて・・・」

大の字で倒れていた戒流は背中をさすりながらむくりと起き上がる。

ゆっくりと周囲を見渡すと、そこは障気と雷雲の渦巻く人界とは明らかに異なった世界が広がっていた。

「魔界にこれたんだな・・・ったく、雨雲に突っ込んだときよりヒデえ目にあったぜ」

「キュー・・・」

ポチと呼ばれた生物は自分の定位置である戒流の右肩に乗ると自分のかぶっている小さなよれよれの三角帽子をかぶり直した。

「さて、行くぜポチ!早いとこアイツを探して助けてやろうぜ!」

「キュー!(おー!)」

「邪魔するやつは誰だろうと俺の魔術でドカーンと・・・」


ドカーン!


「!?」

戒流のすぐ背後で何かが落下し爆発した。その衝撃で少し吹きとばされた戒流は、その中から現れたものに更に驚愕する。

「いたたたた・・・エリカ、大丈夫?着地の仕方まではわからなかったわー」

「空の遊覧、なかなか楽しかったわよ」

召喚の反動で急激に体力を消耗したフィーアはエリカに肩を借りて爆炎から現れた。

邂逅。

一瞬の間のあと、二人が叫びをあげた。

「ええええええええええ?」

「なにいいいいいいいい!」

フィーアと戒流。法術士と魔術師の両エース。面識はもちろんあり、互いの任務から度々衝突することもあったが条約により本気の戦闘を禁じられていた。

「バカイル!アンタなんでここにいるのよ!」

「相変わらずキーキーうっせえなあ、ぺったん娘(こ)」

「おーまーえー!言ってはならないことを!」

「悔しけりゃ隣の姉ちゃんくらいグラマーになってから俺の前に現れな」

「グラマー・・・?」

エリカだけが首をかしげていた。

「アンタ、魔術師たちが外で必死に防衛戦やってたけど何やってんの?こんなとこいていいの?」

少しめまいを起こしたフィーアは、自らが体力を消耗しすぎている状態であることを再認識し、棒読みで戒流に問いかけた。

「話すと長くなるが、まあつまりは人探しってかとある夜族探しだな。無理矢理だが許可してもらった。フィーアはなにしにきたんだ?」

「アタシも・・・夜族探しよ・・・」

「隣の姉ちゃんはなにもんだ?」

エリカは自らが戒流の問いに答えた。

「ただのメイドよ。私もある夜族を探してここへきたわ」

先程の戦い方がただのメイドとは思えないんですけど、という言葉を飲み込んでフィーアは続けた。

「目的は三人とも一緒みたいね・・・エリカ、この黒づくめの不吉な魔術師は戒流といって生意気だけどなかなか戦えるやつよ」

「一言余計だがな。姉ちゃん、こいつはフィーアといって法術士なんだが死なない身体だとかいう神なんだか悪魔なんだか矛盾したやつだ。確か退魔部隊の隊長だったな。実力はあるぜ」

互いに自己紹介をしあった二人に対してエリカは二人が何を持ちかけたいのかを理解した。

「戒流、フィーア、共闘に賛同するわ。私は絵里華。夜族の使用人よ」

『夜族の!?』

戒流とフィーアは同時に驚いた。

「てことは魔界に詳しい?」

フィーアは希望の眼差しでエリカを見た。

「そうね。魔界にいたことは確かだけど、裂け目の出現のせいか変わったところも見受けられるからあまり頼りにはしないで」

「いや、心強いぜ!よろしくなエリカ!」


かくして三人と一匹の戦いが始まった。


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