第2話 冤罪

神聖教会、法術士。

生まれつきもつ神より授かりし奇跡の力によって人々に平穏と安らぎをもたらす組織。医療や退魔に従事し、魔術師を異端と嫌うため度々衝突がある。一時は戦争に発展するも現在では和平条約が締結され、一切の揉め事を禁止している。


「フィーア隊長・・・これは一体・・・」

フィーアと呼ばれた金髪のツインテールの少女は返り血を浴び、彼女の足元にはまだ温もりの消えていないであろう人間の死体が横たわっていた。

「落ち着いて聞いて・・・これは・・・」

「来ないで!」

それを端的に目撃した女性法術士はその生々しい死体とフィーアの姿にショックを隠しきれず取り乱していた。

「アタシじゃない。ジェシカ、それは信じてくれるよね?」

「い、いや・・・いやあああああああっ!」

耐えきれず女性法術士のジェシカは叫びを発した。

すぐさまそれに気づいた数人の足音が近づいてくる。

「事情を説明している時間はない・・・ジェシカごめん」

フィーアは窓を破り、外へと転がりでる。

「ジェシカ副隊長!何事で・・・法王様!?」

一番に駆けつけた男法術士が状況を把握した。

法王とは教会のトップであり、人々のシンボルともされている存在である。

「一体誰が・・・」

「隊長が・・・フィーアが・・・」

「フィーア隊長が!?いやそんな・・・しかしこの痕は・・・」

ドカドカと人が集まってきてはその惨状に驚愕する。その中に教会の法術士を統率する司令塔、ギデアスが姿を見せた。

「至急フィーアを手配拘束せよ。殺人容疑の可能性も否めない。よって抵抗するならば手荒な行為も致し方あるまい」

ギデアスの冷静な指示が場を黙らせた。

「相手は・・・フィーアは不死身の身体だ。生かして捕まえようとするな。殺すつもりでかかれ。いいな?行け!」

『は、はい!』

その場にいた全員が戸惑いながらもその場を散開する。

ただ一人その場に残ったギデアスは法王の死体に近寄ると、致命傷となったであろう左胸にぽっかりと空いた傷口に触れつぶやいた。

「朱い月の夜・・・まさか・・・『金色の夜王』」


フィーアは街はずれの森へと駆け込み、息を整えていた。

「このままだとアタシが法王様を殺したことになる・・・どうする・・・」

周囲を見渡すが誰も見当たらない。

追手を気にしているのではない。

そもそもこの森には逃げ込んだわけではない。

真犯人を追ってこの森に入り、真犯人の気配を探っているのだ。

「っ!」

フィーアはふと視線を感じ、その先に向けて右手を構える。手の甲に刻まれた魔方陣が発光すると構えた手の内に拳銃が出現する。

召喚術。退魔を担当する彼女の法術であり、彼女以外に神聖教会内でそれを使える者はいない。

「気配は捉えた!出てこい!」

ザッ・・・

暗がりから人影が姿を現す。それはフィーアが予想しなかったモノだった。

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