遊撃合葬曲

田中シンヤ

第1話 開戦

魔術師。自然のエネルギーを借り、自らのあらゆる力へと具現化させる能力者。

この世界で魔術師は一般的に魔術師協会へと所属し、治安維持や各国の軍務を行う。


『持ち場に戻れ戒流!』

カイルという名の空飛ぶ黒髪の少年に老人の怒号が飛ぶ。

「長老ワリィ、今しかねえんだ行かせてくれ!」

『ならん!今は魔界から溢れてくる夜族を留めることが先決じゃ!』

戒流はギリッと奥歯を噛み締めると空に向けて右腕を挙げ、叫んだ。

「邪魔をするなああああっっっっ!」

周囲の空気が急速に収縮し熱を帯びる。

『マハ・アグニ!』

爆炎魔術マハ・アグニ。術者を中心に周囲の空気の酸素の密度を上げて着火し爆発を生む魔術。

魔物・・・異形の姿をした数十体のそれは一斉に戒流に急襲するも即座に返り討ちにあったのであった。

戒流は続けて右腕を前方に突き出した。その先には先程の魔物が数千、数万は蔓延っていた。

『ギガノ・アグニ!』

直線上に戒流の右掌より渦を巻いて炎が射出される。

戒流の目的としている場所までの道は開いた開いた。

「行くぜ、ポチ」

戒流は自分の左肩に乗っている小さな恐竜のような生物に話しかける。

「キュー!」

ポチと呼ばれた生物は嬉しそうに応える。

『戒流!魔界との穴が塞がれば次はいつ人界に戻れるかわからんぞ!』

「長老・・・いや、じっちゃん。今まで世話してくれてありがとな。だけど・・・」

戒流の目的、それは上空に大きく開いた人界と魔界との裂け目。そこから魔界へ行こうとしているのだ。

「俺の家族が、あいつが俺を呼んでいる!戻ってこれたらまた説教でもなんでも聞いてやる。お互いまた生きて逢おうぜ!」

ニッと笑むと戒流は全速力で裂け目へと飛行する。

それに気づいた魔物たちは戒流へと襲いかかる。

『撃手!戒流を援護せよ!てえええっ!』

老人の声に数十名の魔術師が攻撃魔術を放つ。

「じっちゃん、サンキュー!」

戒流が裂け目の奥へ消えたのを見届けた老人は大きく息を吐き出した。

「あの齢で己の運命に向き合わせるとは神もなかなか酷な試練を与えよるわ・・・さて、わしも自らの使命を果たそうか。壁手は南西に結界展開!撃手は二手に散開し夜族を挟め!」

魔物・・・夜族と呼称するそれと人間の戦いが始まった。

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