第1話
「よく似合ってますよ、若」
「そうか?」
俺――――藤堂悠雅は、今日から晴れて高校生だ。
そのため、黒を基調としたブレザータイプの新しい制服を着ている。
身だしなみを鏡で確認するが、やはり着始めはどうしても服に着られてる感があるな。
「よし、ならあとは……これだな」
「……その、本当によろしいのですかい?」
「ん? 護衛の件か? それは大丈夫だって言ったろ?」
「いえ、それはもう若のことですから心配はしておりませんが……俺が言いたいのはそのメガネのことでして……」
「変か?」
俺は今、かけているメガネに手を伸ばした。
俺の言葉に、目の前の強面な男……
「……そうですね。相当変です……そもそもなぜ度の入っていないビン底メガネなんてものを?」
「バカ野郎。俺は学校に行くんだぞ? 学生の本分は勉強だ。勉強と言えばガリ勉! これはその形から入ってるって訳よ。どうだ? 頭良いだろ?」
「何という偏見。もうその考え方がすでに頭が悪そうなんですが……勿体ない。ま、まあ若がいいのであれば、これ以上は何も言いませんよ」
「そうか」
まったく。なぜ俺のこの発想を理解してくれないんだ?
ガリ勉ってのはすごいんだぞ。学生の本分を全うしてるわけだからな。
そもそもガリ勉って言葉自体は何かバカにした言い方らしいが、俺から言わせればそんだけ必死に勉強してるスゲェヤツなんだから、他のヤツらよりよっぽどすごいと思うけどな。
「んじゃ、俺はもう行くぜ。初日から遅刻じゃ格好がつかねぇからよ」
「もうその恰好がすでにカッコよくはないのですが……とにかく、行ってらっしゃいませ」
鬼道にそう言われ、靴を履いて玄関を出ると、鬼道と同じような強面の屈強な男たちが俺を見て一斉に頭を下げた。
『行ってらっしゃいませ、若頭!』
「おう」
俺は鞄を肩に担ぎ、そのまま徒歩でこれから通う高校へと向かった。
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