第十一章 そして聖戦へ~ 神界編 ~
第二百二十九話 異世界ダンジョンにコンビニごと転移した日から①
竜王の城。
それは俺達が想像する様な、所謂「キャッスル」って感じの物ではなかった。
木々の生い茂る自然豊かな森の奥。そこに聳え立つ巨大なバオバブの様な大樹の上に、幹が複雑に絡み合いまるでお城のような姿になったもの、それが竜王城であった。
俺達はその大樹の中へ入って行くと中を進む。それこそ中は木製のお城って感じで、竜族達が手を加えた人工の部分もあるので、まるで日本のお城のような雰囲気もあり懐かしく思った。
階段を上がって行き奥まで行くとそこが王の間。これまた木の幹がびっしり絡み合い葉のクッションで出来た玉座にじじいはちょこんと腰掛けると、その前で膝を突き頭を下げる俺達に楽にするように言うのであった。
「あれも昔は、それはもう絵に描いたような正義漢であってな。妹思いで仲間思いの王子であった」
レイドエルシュナのことだろう。それがどうやったらあんな風になるのだろうか? どっからどう見ても輩にしか見えなかったけどそれは言わないでおこう。
「人を憎み、神を恨むようになったのはいつからだったろうか……やはり、母親を失ったのが大きかったのやもしれぬ」
竜王は顎にこしらえた髭を撫で遠い目をした。クリューシュも悲しげな眼をして黙って話を聞いているのだが……。
「いやいやいやいや、それっていつの話ですか? 神話の時代から続いてる因縁みたいに言ってるから、それはもう何万年も前の話だよね?」
そりゃあ、母親の死は悲しいこともかもしれないけれど、そんな大昔の別れのことをさすがにいつまでも引き摺りすぎじゃね? 悲しみの大きさは人それぞれかもしれないけど、いくらなんでも立ち直れなすぎだろそれ。と、思うのだがクリューシュが悲しげな声で俺に言う。
「べんり。我々竜族に限らず、長命の種族は短命の人間とは時間の感覚が異なるんだ。母上が病に伏して亡くなられたことも、人間にしてみれば途方もない大昔のことかもしれないが、私達竜族にしてみればついこの間のことなんだ」
「そっか……。ごめんクリューシュ、流石にデリカシーなさすぎた」
俺が深く頭を下げるとクリューシュは逆に困ったように「気にするな」と言ってくれるのであった。
「儂も、
そんな悲しげな眼をしながら言う竜王のことを指差しながら、メルルシャイムミルルフィアムが軽蔑する様な目をして突っ込みを入れた。
「嘘です。そいつは突然現れて僕のお尻を撫でたエロじじいです」
「妻の若い頃にそっくりだとか言いながら、天使である私に言い寄って来た変態じじいです」
クリューシュが蔑むような目で睨みつけると、竜王は冷や汗を流しながら明後日の方向を見るのであった。
さて、そういうわけで俺達は竜王に会えたわけだ。
結局、今地上で行われている戦争も小競り合いみたいなもので、大きな戦にはなっていないらしい。
絶滅要塞の一撃で危機感を覚えたレイドエルシュナによる独断先行であった為、現在はドラゴン達にも勝手に動くなとお達しがいっているようだ。
そもそも、元々ドラゴンは群れを成して行動をすることはないらしい。単体でも人間の国家、その軍隊を相手にできる強さを持つ生物だ。誰にも縛られず自由気ままに生きるのが、本来のドラゴンの習性であると竜王は説明してくれた。
しかし、時代が進み新しい世代になってくると仲間同士で徒党を組み行動する者達も出てきたと、時代は変わるものだと少し寂しそうに言うのであった。
「ではつまり、竜王陛下は人間達との戦争は望むところではないと、そうお考えであるということでしょうか?」
説明を聞き終えるとローリンが竜王に質問をする。竜王はしばらく髭を撫でながら考え込むと、これまで見せていたエロじじい然とした表情から一変。それこそ魔界の奥深くに眠る、恐ろしいドラゴンの様な視線で俺達のことを射抜くと言い放った。
「それは、きさまら人間次第だと言う事を努々忘れるな人間の娘よ。いや、おまえは大天使の生まれ変わりであったな」
レイドエルシュナのような、攻撃的な黄金の視線でローリンのことを睨むと、ふっと笑い再びエロじじいの顔に戻る。今のが竜王の本性なのだろうか? いや、どれも本性なのだろう。強大な力を持つ種族だからこそ与えられた使命。すべての生命を慈しみ、罪を犯せば贖わせる、それが神々と同位の存在であるドラゴンだということだ。俺はそれを肝に銘じながら、疑問に思っていたことを質問した。
「ところで、なんでカシムアダータは竜族を裏切ったのですか?」
「カシム……アダー……タ? 誰だっけそれ?」
竜王は惚けた表情をするのだがクリューシュが大きな溜息を吐きながら答える。
「魔王のことです父上。べんり、カシムアダータは我々を裏切ったわけではない。あいつは元々何を考えているのかわからないやつだったがこれだけは言える。あいつの行動はすべて魔族の為。おまえは嫌がる言い方だが、
クリューシュの説明に黙って頷いている竜王は、思い出したように口を開いた。
「そうそうマギナと言えば。おまえらが来る少し前に、儂の元にメタモマギナの娘と駄犬が訪れたのじゃ」
「え? それって? もしかしてメームちゃんと獣王ですかっ?」
俺の質問に竜王は深く頷いた。
よかった。メームちゃんと獣王はどうやら無事ここまでやって来ていたようだ。俺達は安心するのだが、しかし今ここに二人の姿がないことが気になる。
すると竜王は神妙な面持ちになると俺の目を見つめて予言めいたことを言いだした。
「小僧。この先、おまえの進む道には大きな
つづく。
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