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現在の時間は時刻は午前十一時。前回の会合で話した集合時間は午前六時。
完全に遅刻である。
「ここまで言い訳の余地なく遅刻すると逆に急ぐ気失せるな」
どこ情報なのかは知らないが始まるのは十二時以降という話だったのでそんなに早くに行く必要は無いと思うのだが、遅刻した事には変わりないのだから言い訳するのを辞めよう。
「食い物食い物」
朝ごはんはやっぱり米とみそ汁が鉄板だよね。
なんか携帯に着信とかメールが届いているが中を見たくないのでスルーする。
ニュースでは大した話題にはなってない所を見るとまだ始まって無いらしい。
「……ごちそうさまでした」
……………………………………………………………………………………………………行くか。
超対に入るにあたって用意されていたアパートの一室から出ると、空はムカつくぐらいに晴れていた。
「集合場所は――あっちか」
休日とはいえ店の多い方向へ向かうにつれ人が増えていく。仕事前とはいえ目立たない格好にしろと言われたのはこのためか。
俺は普段着に色んなものを仕込んでいるとはいえ、怪しい札とか魔法陣とか見られたら下手すれば通報されそうな気がする。
「自意識過剰かな?」
そうだといいが、やはり周りとの距離感がいまいちわからない。
父親が大物だからかご機嫌問いされるのが普通の環境で生きていたため、そういうのを取っ払った今の状態は今まで培ってきたものが通じないといっても過言ではない。
他人に顔色を窺われることはあっても逆は無いから、距離感が掴みにくいのだ。
結果、教室でボッチと化しているのは気のせいではないだろう。話しかけようにも
ホントにどうすればいいのだろうか?
親父が普通の学校に行った方がいいと言う意味がわかった気がする。自分がどれほど世間という存在から乖離しているのか自覚させられるし、隠しておくにしては普通を知らなすぎる。
結果、沈黙するしかないとは皮肉すぎるな。
それでも話しかけてくるような奇特な奴はいることはいるが、それも一瞬だけでしかないしこれからの学校生活が不安である。
「まあボッチで三年過ごせばいいしそこら辺は問題ないか」
「いや。問題だと思うよ?」
自虐気味に嗤うと予想外な事にそれに突っ込まれた。
「出たな奇特な奴」
横を見るといかにもデート前と言わんばかりにオシャレをしたクラスメイトの
『明~。こんなやつ気にすることはないわよ』
この世界のモノとは思えないなんだかよくわからないぬいぐるみのような生物がいた。
たまに学校に(勝手に)ついてきているのを見ると、召喚術を使える同志かもしれない。
同門なら俺の顔を知っているだろうし俺も知っているだろう。別の派閥ならここまで俺に何らかのアクションを起こさないのはおかしい。
となると一般人が偶然召喚を成功したパターンなのだろう。害はなさそうだし、双方のお互いの事を理解してるようだからほっとくのがベストかな。
「奇特って。気にしているなら積極的に話しかけに行ったらいいじゃない」
……それが出来たら苦労はしないわ。
「で、桃乃後輩は何か用?」
「入学式の前に閻魔くんを先輩だと勘違いしたのまだ根に持っているの!?」
入学式の後の同じ教室だったクラスのHRが終わった時に詰め寄られていきなり文句を言われたのは予想外だったがそれはそれだ。
「いや?別に?」
なぜかその後に女子からはあからさまに距離を取られて、男子からは敵意を買うというわけのわからない状態になってしまったが別に気にはしてない。それを根に持ったら逆恨みだし、そういう感情は喰わせてるし。
「桃乃は何してるの?デート?」
『はぁ!?そんなわけないじゃん!明!さっさとあしらって他の奴らと合流するよ!』
気付かないふり気付かないふり。チラチラとこのぬいぐるみを見ている桃乃に気付かれないように、しっかりと気付かないふりをしないと。
「あはは。これから友達と遊びに行くところなんだ」
そのオシャレが普段着なのか。やはりリア充は相いれないな。
「へー。リア充は楽しそうだねー」
「だからデートじゃないんだって」
どうやら向かう先が同じらしく、なんとなく一緒に歩いて行く。
「どうだか。桃乃はモテそうだしー。これからバイトの俺としては羨ましいですなー」
「だから違うんだって!」
思いっ切り遅刻してるし、もうサボろうかな?なんか嫌な奴にもあってしまったし。
目と鼻の先の場所まで来ておいてそんな役に立たない事を考えていると。
「ブルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッ!!」
爆発音とともに毛むくじゃらで牙の生えた豚男みたいなのが飛び出してきた。
げ!?間に合わなかった!
どうしようかと思って桃乃を見ると。
『ステインめ!今日こそ決着をつけてやる!行くよ明!』
「で、でもバレないように誤魔化しとかないと」
聞こえるような場所で相談するな。こっちもお前らと別れないと正体ばれかねないから困るんだよ。
えーっと、こういう時はどう誤魔化すべきだ?あー面倒くせえ。とりあえず人ごみに紛れて逃げるか。
「おい。逃げるぞ!」
「え?で、でも!?」
「アレが何かわからないけど人ごみに紛れて逃げれば後ろの奴が盾になって逃げきれるはずだ!」
自分でも何言ってるのかよくわからないけど勢いに乗せて話していく。
「そういうわけであっちだ!」
「——それよくないんじゃ!?あっ――」
なんとなく手を引いて人ごみの方へ逃げる。
『なにどさくさに紛れて明の手を握ってんだお前!』
変なぬいぐるみは無視して逃げながら周りを観察すると、機動隊を思われる部隊が豚男を足止めしていた。
比較的安全っぽいし、ここで撒くか。
「あ――」
「さらばだ桃乃。君の事は明日まで忘れない」
適当なことを言って人ごみに紛れて離れる。
「よし。逃げ切ったな」
ある程度距離を取ってさらにまわりこんだりして目的地へ向かうが。
「ここは立ち入り禁止だ!避難したまえ!」
機動隊と思われる包囲網にぶつかって追い帰された。
まあ、見た目一般人だし追い帰されるわな。
……待てよ?これを言い訳に帰っても問題なくないか?タグは忘れたことにでもして。
……あ。
装甲車(?)から顔を出した先輩と偶然目が合う。
ニコ(形だけの笑顔を向ける音)――サッ(すごい勢いで目を逸らす音)
よし逃げよう。
「目の前の男を逃がすな?了解。えーっと、ちょっと君待って――って逃げるな!」
そんなこと言われて待つ奴がいるか!絶対に逃げ切ってやる!
この後、無茶苦茶ボコボコにされた。
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