6
土曜日 昼
「部長。ただいま合流しました」
「来てやったぞ」
もうすぐ12時というところでエリちゃんとクラウディアが合流した。
「おう。早かったな。ドーナツあるけど食べる?」
「ん」
「コラッ」
「む」
そう言って渡そうとしたドーナツがエリちゃんに取り上げられた。ちょっ!?全部没収するの!?
「お昼食べてきたので後で頂きます。あとクラウディアちゃんにあまり餌付けしないでください」
「いや、つい可愛くて。あとドーナツ返して」
「ダメです」
「おやつは別腹だから」
「太るからダメ。三時のおやつに食べましょうね」
「ん」
エリちゃんが母親みたいになっているな。
「ところで閻魔は?」
「何回か電話したけどどこにいるのか不明」
「あとで〆ときますね」
「今回は流石に手加減しなくていいよ」
擁護不可能である。朝早くに来いと言ったのに来なかった罰だ。
諦めてエリちゃんにボコボコにされればいい(闇微笑)。
「ん」
「はいはい。よっと」
「ん」
膝の上にクラウディアを載せて監視カメラの映像の確認に戻る。
「所長」
「なに?」
「
「あいつの戦力が測りたかったが仕方がない。いや当初の通り俺が出る。クラウディアの安全が最優先だ。俺が出る以上彼女を守れるのはエリちゃんだけだ。頼む」
「……守るのなら所長の方が向いているのでは?」
「一対一で戦うなら怪人程度、エリちゃんでも問題ないだろうけど。ヒーローごと制圧するのには向いてないでしょ」
エリちゃんの場合、一対一を繰り返して敵を全滅させかねない。
……なんで幽霊や妖怪等の退魔特化のはずの
「何か失礼なこと考えてません?」
「気のせいだろ」
「ん」
クラウディアがなにかを見つけたらしい。指差す画面を見て見ると。
「お?英毅君じゃないか。やっと来たのか」
完全に遅刻だが事が起こる前に来れたとして良しとしよう。流石に説教してる暇は無くなるだろうしな。
「ホントですね。しかし、一緒に歩いている女子はいったい……?」
「デート?」
「そうかもねえ。同い年っぽいから同級生かな?英毅君もモテモテだねえ」
――バキッ
「……それ一応警察の備品だからあたらないように」
「こっちが仕事してるのにあのクズは来ないばかりに飽き足らずデートしてるとは!成敗してきます」
「うんちょっと待とうか」
事が起こる前に木刀での惨殺事件が起きかねない。仕方がない。ここは
「エリちゃんパス!」
「わぁ」
「ん!?危ないですね!?クラウディアちゃんを投げないでください!」
「あれは俺が迎えに行くから、しばらくここで待機」
「いってらっしゃい」
「ほいほい。いってきます」
「……早く連れてきてくださいね」
エリちゃんの人を殺しそうな視線から逃げるように偽装用のトラックから降りる。
「えっとさっきの映像からしてあっちか」
『α1よりθ1へ。α1よりθ1へ。応答求む』
耳に着けてた無線機に連絡が入る。どうやら隊長さんからだ。
「あーあー。θ1よりα1へ。何か問題でも?」
『α1よりθ1へ。事件が起きる前に外に出る時には許可を取っていただきたい。持ち場を離れられるといざという時の対応に困る』
「θ1よりα1へ。別に
『α1よりθ1へ。一般人の避難が終わった後は君たちに任せるんだ。その時に特別扱いなんぞ出来ないぞ』
超対は表に出せないから、特別扱いで中に入れると目立つようなことは避けないといけない。その時はその時で対処のしようはいくらでもあるし。
「θ1よりα1へ。その時はばれないように入り込むんで気にしなくていいですよ。人もあまり多くないですし」
『α1よりθ1へ。それなら構わないが出来るだけ早く戻れ。オーバー』
「θ1よりα1へ。了解しました」
やれやれ、隊長さんも心配性だなあ。さて、あのバカを回収しな――ドゴオオオオオ――ヤバい。フラグだったか?それにしても回収早すぎだろ。
『α隊は怪人への牽制に務めろ!β隊は避難誘導だ!急げ!』
『『『了解!』』』
あっちこっちに停車していた偽装用のトラックから機動隊員が飛び出し、悲鳴と銃声の中で避難誘導を開始する。
「さすがプロ。仕事が早い。俺も合流するか」
あのバカとの合流は今回は諦める。
流れに逆らうように歩きながらも人の死角に入るように移動する。そうでなくてもみんな慌てながら離れようとするので、端っこの方で視界から外れるように脇道に入るだけでいい。
「よっと」
屋上まで飛び、そのまま騒ぎの中心へ移動する。
「ここが見晴らしがいいな」
無線からは雑音混じりに怒号が聞こえてくる。
『クソッ!銃弾が効かねえ!』『こっちの方です!』『そんなのわかっていた事だろ!』『流れ弾の危険があるため見える範囲に近づかないでください!』『動きを制限するには弾幕で圧倒するしかねえ!』『クソッ避難完了はまだか!?』
ふむ。あの怪人はイノシシをベースとした怪人のようだな。それにしても銃弾がまるで効いてないな。
「ブルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッ!!」
五月蠅いなあ。しかし見た所、呼吸してるし攻撃は銃撃に抑えられてるからか、単調な突進と手足を振り回しているだけだ。
怪人は銃撃の弾幕のせいで思うように動けず、警察は怪人の攻撃を辛うじて避けられている。
危うい均衡だ。長くは持たない。
『β1よりα1へ!避難完了!繰り返す!β1よりα1へ!避難完了!』
数時間にも思える数分に待ち望んでいた連絡でようやく光明が指す。
『α1からβ1へ!了承した!θ1行けるか!?』
「θ1。いつでも行けます」
『α1了承!各員へ通達!コード:アタック!繰り返す!コード:アタック!』
その命令が放たれた瞬間に銃撃が強まり、銃撃に参加してない機動隊員から方々からスタングレネードが投げられる。
それを直視しないように建物が壁になるようにかがみこんで目を閉じてそれに備える。
――――ッ!!
爆発したことを感知して、即座に中心へと飛び込む。
「ガアアアアア!?目がああああああ!?」
「直視したか。哀れな」
機動隊が避難したのを確認してから動く。
「ん?」
「——(ヤバッ!目が合った!?)」
……誰だ今の?
見た所、民間人みたいだけどおかしいな避難させたはずじゃ?
1、2、3、4避難し遅れたにしてはおかしな所にいるな。というか変な所にいるな。屋上に二人、路地裏に一人ずつ。
「てめえ!よくもやりやがったな!」
「ようやく復活かい?」
おっと。今はこいつに集中か。
「俺はステインの怪人だ!邪魔立てするならぶっ殺すぞ!」
「自己紹介どーも。俺はこういうもんだ」
そういいながら、首から下げてる黒タグを見せる。が、怪訝な顔をされる。これの明示義務無くならねえかな。これ見せても大概は通じねえし。
「ステインが組織でいいのかな?ようやく接触できたよ。いつもヒーローとかいう変なのに邪魔されてたからねえ」
「なんだお前?ステインに入りたいのか?なら俺の部下にしてやるぞ!」
「いや潰したいからヒーローもろとも潰すつもりだけど?」
特にすぐに解決できる問題をここまで拗らせたんだからどっちもただでは済まさん。
「は!なら死ね!」
「危ないなあ」
突進を避ける。
「あ、そっちに行くな」
「ヘブッ」
周りの機動隊にぶつかりそうになったので、壁を張って守る。
「てめえ!なにしやがった!」
「また突進かよ。ワンパターンだな」
軽く避けて、行き過ぎないようにまた壁を張る。これ面倒臭いな。
「避けんじゃねえ!――!?なんで近づけねえ!」
「最初からこうしとけばよかった」
宙に浮かせて、機動力を奪う。
「さて、あとはヒーローとやらを確保すれば仕事は終わりか」
「てめえ!卑怯だぞ!」
「大人の戦いに卑怯もクソもねえよ。勝たないと意味がねえからな」
こいつこれからどうしようか?
「無視すんじゃねえ!」
こいつ研究所にでも売り渡せば予算の足しにならないかな?
ならないか。というか買い取ってくれるところがあるとは思えない。
「てめえこら!降ろせ!」
「のぞき見してる連中をとりあえず捕まえるか?」
『α1よりθ1へ。α1よりθ1へ。動かないが何か異変でも?』
「こちらθ1。これと戦う前にヒーローの横槍が入ってくると思っていたから、あっさり捕まえられたから困惑してるだけです。ヒーローが来る前に仕留めるのも問題ですし。ヒーローも確保対象ですし」
手持無沙汰なのでとりあえず廻してみる。何か騒いで暴れてるが無害なので無視。
『……逃げたのではないか?』
「かもしれません。ですが、さっきからのぞき見してるのが気になってるんですが?」
『機動隊員ではないのか?』
「いや、別ですね。隠れてますが見た目一般人ですし」
さっき見た感じ高校生くらいの未成年だったな。
『どこにいる?確保するぞ』
「いや、たぶん普通の人間じゃ相手にならないと思いますよ?」
問答無用で射殺するなら別だけど。
『……悔しいな』
「自分の力が通じない相手なんて上を見たらきりがないですよ?――ん?」
『どうかしたか?』
「あーあー。θ1からα1へ。隊の避難をなんかガスみたいなのが出てます」
『こちらα1。そのようなものは視認できない。機器を確認しても変化はない』
「ん。霊体みたいなもんだな。普通の人には見えないですね――人の身体に侵入しようとすんな」
『こちらθ2!合流します!』
「こちらθ1。エリちゃんは予定通りそこで防御。――これには乗っ取られ?!」
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