気がつけばどっかの店の前に突っ立っていた。

 意識がなかったわけでもなくただ単純にあの場から瞬間移動ワープさせられたような感じである。

「所長!大丈夫ですか!」

「大丈夫大丈夫。しかし、本当にいきなり追い出されるんだな」

 唐突なバリアの発生によりその効果なのか追い出された。

「む」

「心配しなくていい。怪我なんてしてないから」

「ん」

 よしよし。

「ん」

 本当に可愛いなー。おっさんの最大の癒しだよ。血生臭くないし。

「しかし、不思議な結界ですね」

「そうだな。ヒーローどもが割り込んできたんだろう」

「特定の人間を除いて問答無用で追い出す仕組みのようですね」

 そうじゃ無いとヒーローと怪人すら追い出されるからな。

「解除できる?」

「前にも申し上げましたが、この世界に存在する界の力ではないので干渉はやめておいた方がいいかと」

 原理不明だから下手に干渉したらどうなるのかわからんのね

「そうか。……ところで英毅君は?」

「先程、逃げようとしていたところを機動隊に確保されました」

 そうか。あいつそんなことになったのか。

「いやなんで?」

 軽く流しそうになったが聞き捨てならないぞ。

「私が閻魔を案内して欲しいと頼んでおいたからです。そしたら逃げようとしたそうなので確保したそうです」

「……もしかして捕まえるように頼んでた?」

「重要人物とは言っておきました」

 確かに今回の関連の事件の解決の鍵になるだろうから間違っては無いんだろうけど。

「あんまり警察を顎で使わないように」

 気持ちは何となくわかるけど。

「それで英毅君は?」

「そこの地面に転がしてます」

「……連れてきて」

「わかりました」

 クラウディアとドーナツを食べながら待っていると。

「連れてきました」

「お帰り。なんでボコボコなのかは話が進まなくなるから聞かないことにするよ」

「いや聞いて下さいよ!」

「どうせエリちゃんを怒らせたんでしょ」

「うっ」

 やっぱりか。

「一応聞くけどなんで朝来なかったの?」

「………………寝坊しました」

「監視カメラにデートしてるとこ映ってたぞ?」

「デート?……あ」

 一瞬、本当に何を言われているのか理解できなかったようだがすぐに心当たりを思いだしたようである。

「エリちゃん。ボコっていいよ」

「わかりました」

「いやいやいやいや!待って!?そうだ!なんでここでゆっくりしてんですか?そこのバリア破ればいいじゃないですか!?」

バリアあれはこの世界とは別次元の力だから干渉できないんだよ。ヒーローが来る前に片付けるつもりだったんだがな。ヒーローの奴め邪魔しやがって」

 ちなみにクラウディアの予言のことは他のメンバーに教えてないので英毅君に自主的にやって貰う必要がある。というわけで嘘を吐く。ちなみに全員には怪人を確保することが今回の作戦の目的と話している。

「それに朝から来るはずだった奴も来なかったからな」

 エリちゃんがキレてる。本当に腹立ってるんだろう。

「いやさっきそれでボコられましたよね!?いい加減許してくれよ!そうだ!あれ解除するんで許してください!」

「ほう?本当だろうな?」

「あれ?もしかして墓穴掘った?」

「なら今すぐ解除しなさい」

「やってみますから、ほどいて下さい」

「いいだろう」

 いつの間にか。話がまとまっていた。今回戦闘に混ざれなかったからと言ってイライラしてるのはわかるけど、エリちゃん怖がられすぎだな。

「それじゃあやってみます」


    ――5分経過――


「まだか?」

「いやもう少し待って――あ」

 バリアを破った。

 いや、英毅君の反応を見る限り破ったんじゃなく解除されただけか?

 すぐに変身した戦隊シリーズみたいなのが出てきた。とりあえず英毅君はあとでエリちゃんにしばかれることが確定しました。 

『怪人は我々が退治した!』

『みんな安心するといい!』

『騒いでないで撤退するぞ』

『そうですよ!?ほら警察が迫って来てますよ!』

『それではさらば!』

 ヒーローのコントを聞く前に飛び出そうとするエリちゃんを止める。こっちとしては今回は解析に専念したい。

『α隊は追跡!β隊は包囲網を強化しろ!』

 機動隊の追跡だがおそらく成功はしないだろう。

「いや待って下さい!戦闘に参加できないからって俺にあたらないで下さいよ!」

「しかしバリアを解除できなかっただろう?」

「…………………………はい」

「あっちで残りのドーナツ食べちゃおうか」

「ん」

「いやー!?見捨てないで!可愛い部下が死ぬかもしれないのよ!?」

「悪い。ドーナツ食べなきゃいけないから。ほら、行くよクラウディア」

「ん。骨は拾う」

「歯を食いしばれ」


 辺り一帯に汚い悲鳴が響き渡り、何件か通報されたが事件性は無いとされ、捜査はされなかったそうだ。


「あーあ、完全に無駄足になったな。バリアが厄介すぎる」

 ヒーローを取り逃がしたとのことで事務所に戻って反省会中である。

 ちなみにクラウディアは家の人が迎えに来た上に、正規のメンバーではないためいない。

閻魔これも役立たずでしたしね」

「とりあえず英毅君はしばらくさらに減給ね」

 給料泥棒という

「ちょっと待って下さい!これ以上減らされたら生きていけないですよ!?それに無駄じゃないですよ!」

「何がだ?」

「さっきのバリアは別次元の産物でした。別次元に干渉するのは召喚術の十八番ですよ」

 妙に必死だなあ。木刀持ってるエリちゃんが怖いだけかもしれないが。

「しかし、さっきはどうにもできなかっただろ」

「いや、解析は半分くらいは終わってたのでそれを終わらせれば対抗用の術が作れますんで減給は勘弁してください!」

 自活している英毅君にとってそれは死活問題らしい。

「……それはどんぐらいで終わるんだ?」

「え?順調に行けば一週間後ぐらいですかね?」

「5分で半分解析できたのにか?」

「先輩木刀を突きつけないで下さいって!?現物前にしたならともかく現物無しでは試行錯誤してそんなもんですから!?」

「エリちゃん落ち着いて。それなら来週までに結果を出せ。出せなかったら本当に減給するから」

 初っ端から減給されてるため、今月の給料が絶望的になったら来月生きて行けないんじゃないだろうか。

「……わかりました」

「それが有用だったらボーナスだからね」

「本当ですか!?」

「有用だったらヒーローも悪の組織も両方潰せるからな。あいつらは上も目障りに思ってるようだからボーナスは当然だ。ボーナスが出るだろうな」

「俺ら以外が出てくる可能性あるんですか?」

「超対の上の連中が出張って来たら全部かっさらわれるだろうな。そん時は減給どころか罰則になる。というわけで来週の土曜までだ。なんとかしろ」

「……ボーナス弾んでくださいね?」

「有用だったらな」

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