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これでめでたしめでたしとは勿論なるわけがない。
「ふざけんなあーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
と、ブチ切れて後先考えず襲いかかってくるバカ一人にそれに追従する二人と、完全に出遅れてる二人。
狙いはエリちゃんかねえ。謎生物をヘドロごと消し飛ばされたことが、そんなに気に食わなかったらしい。
だけどもう変身は解けてるし、バリアも存在しないんだぜ?
「確保ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「な?!離せ!!」
その掛け声とともに押し寄せてくる警察官の群れに抵抗する間もなく取り押さえられる5名。
彼らをヒーローにしていた特別な存在もヒーローとして戦う動機も失われたのだ。彼らはもうただの凡人でしかない。
ヒーローでもなくなった彼らに対人間用の治安維持機構である警察に敵うわけがない。
「お疲れ様です!予定より時間が掛かっておりましたね?」
時計を見て見ると始まってから45分も経っていた。30分でケリつけるつもりだったのにうまくいかないものだ。
「予想外の事が多くてね。ま、目的は達成したんだし解決でいいでしょ。あ、エリちゃんはクラウディアの所で待機。
「了解です」
疲れが溜まっているのかフラフラと去っていくエリちゃんを見て明日は無理にでも休ませようと決意する。
「彼らはどうなさいますか?」
彼ら――元・ヒーロー共をあんだけ煽っといてなんだけどあいつらに対しての刑罰は決まってるんだよねえ。
「茂さんいる?話を通しとかないといけないんで」
「ここにいるぞ」
後ろから話しかけられたので驚いて振り返る。
「あれ?来てたんですか?」
「まあな。それであの5人はどうするんだ?」
「どうもこうもないですけど。まあ予定通りですかねえ」
それ以外の手を打つと俺のためにならないだろうし、ここは多少の棒読み演技で切り抜けるしかないだろう。
「なるほどな。おい、5人を連れてこい」
「は!」
茂さんも心得ているらしいく、さっさと連れてくる。手慣れてるねえ。
「俺の友達を――っ!許さねえ――っ!」
「許さなくていいけど?じゃあ、お前らの刑罰を発表するねー」
「待って下さい!裁判もなく私達を裁くつもりですか!?ここは法治国家です。裁判の上で決めるべきでしょう!」
「まあ一理あるね」
だがそれは普通の犯罪者で普通の人間にしか当て嵌まらない。
「でも通常の国の法じゃ裁けない存在を相手取るのが俺らの仕事だからねえ。故に俺の管轄で起きた超常絡みの問題は俺の権限で裁くのさ。通常の法で裁いたら無罪になってしまうような化け物を相手にするんだからな」
超能力で人を殺した奴を裁判所で証明できないからねえ。下手すれば事故死にされるし。と、ぼやく。
「俺は正義の為に戦ってたんだ!」
その言葉を聞いて哀れむように周りの大人たちが見始める。あからさまに余計なこと言いやがったって顔してやるなよ青山も。減刑を引き出すために交渉しようとしてたのにすべて台無しにされた気持ちはわかるけど。
「な、なんだよ?」
声震えてるなー。大見得切るならもっと堂々としろよ。
「時間の無駄だし、ちゃっちゃと罰則を発表するぜー」
「な――っ!?弁解を」
「聞かない。お前ら5人には――」
一拍おいて5人全員を見渡して言う。
「——半年間の
「え?」
ポカンとする5人。だけどここからが本番なんだぜ?
「しかし、彼らに対する罰としては軽くありませんかな?彼らは大きな力を持って暴れて回っていたんですよ?」
ジロリと睨んで強面な顔で睨む茂さん。罰が軽すぎるという警察の意見だ。超対として茂さんを説得しないとなー(棒)。
「これでも重いんですよ」
「ほう?どうしてですかな?」
「いやいや、単純なことなんですよ。なぜなら彼らは唆されただけなのですから」
そこで気がついて口を挟もうとするがもう遅い。このまま畳みかける。
「彼らは魔法世界という異世界から来た悪意を持った知的生命体に唆されてヒーローと名乗って戦っていたんですよ。その証拠に正義の為に戦うとか言って自分に酔ってるじゃないですか。ほらこのくらいの年齢だったったら格好いい事に酔う傾向があるじゃないですか。えーっと、確か厨二病だったかな?」
「ふむ。つまり彼らを唆している魔法生物とでも呼ぶべき存在が悪いというわけか」
「その通りです。ですがご安心ください。私たち超常現象対策課が責任を持って彼らを唆した魔法生物を塵も残さず消滅させましたから。どうやら怪人とヒーローは裏で手を組んでいたみたいですからね。怪人側の魔法生物とヒーロー側の魔法生物は同じ存在でしたし、怪人側の目的がこちらの世界征服らしいのでヒーロー側も対立フリした仲間だったのでしょう」
死人に口なし。都合が悪い事はすべて謎生物のせいにすればいい。
「しかし、生き残りがいたら問題だな」
「何匹か生け捕りにしたので近日中に生き残りも絶滅させます。具体的には三日後にでも」
「ま、待て!?それは違う!俺達は――」
慌てて死者の名誉を守ろうとしても無駄だよ。自分の立ち位置がわかっていないらしい。
「かわいそうに」
「——え?」
「騙されていた事に気付かないでそこまで懸命に庇おうとするなんて。だけど安心してくれ、君たちを騙していた魔法生物はもういないんだ。だから君たちは無理矢理戦わされていたのだろうけどもう戦わなくていいんだ」
誰かの反論意見を封じる方法は簡単だ。
反論する人間を可哀想な被害者の立ち位置にしてしまえばいい。そうすれば周りが勝手に気を使い、加害者に怒りを燃やして反論を逆効果にしてしまう。
それに気がつけば黙るしかなくなるし、気がつかなければ加害者への怒りで名誉がどんどん損なわれる。
「————俺達は……」
言うべき言葉が思いつかなかったようだ。
そろそろトドメかな?
「どうやら魔法生物にいいように使われたことに気がついて精神が参っているようです。カウンセリングを受けさせた方がいいかもしれないですね」
「わかった。被害者ならメンタルケアは必要だな。お前ら保護した彼らを送ってあげなさい」
「はっ!」
あとはカウンセリングの奴が現実に向き合うように誘導してくれるだろう。今日の俺の仕事はこれで終わりだ。後始末はお巡りさんに任せてさっさと立ち去る。俺らがいても邪魔だしね。
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