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 謎生物がエリちゃんの魔術を見よう見まねで真似すると言って眺めていたが、やはりうまくいかないようだ。

 エリちゃんの聖なる属性プラスの魔術を邪な属性マイナスの謎生物が行うとなると自分の存在を削ってまで行う魔術になる。その上相殺されて威力も期待できないゴミ魔術になる。

 すべてを捨てる覚悟があるならともかく、ぽっと出の元凶退治の為に覚悟を決めれるとは思えないし、実際そこまでの覚悟は生むことは出来なかったようだ。

 五方向からの浄化にはムラが大きすぎる。謎生物たちの間で覚悟の差がそれだけ大きいという事なのだろう。

 ……エリちゃんの浄化の威力の1/10もなくて、目に見えてヘドロをほとんど削れないとか、役に立たねえゴミ共だなあ。

「謎生物には全く期待できないから、エリちゃんの浄化で謎生物ごとヘドロを葬ってあげなさい」

「……休息には十分だと思います」

 今回の作戦は想定以上にエリちゃんには負担が大きすぎるなあ。あ、そうだ。

「エリちゃんは今回の事件片付いたらしばらく有休使って休んでいいよ?」

「……そんなことしたら事務所が荒れ放題になるのでお断りします」

「信用してないね?」

「当然です」

 俺一人だけの事務所だった時は、依頼は来ないし部屋は荒れるしで大変なことしかなかった気がするが――そこまで言われるほど酷くなかった……と思う。

 よく考えたら否定できない気がしてきた。最近事務所に来るメンバーですらエリちゃんを除いて整理整頓をしない部類だし。

「それよりあの人たちに注目するべきです」

「それよりって、エリちゃんのことなんだけどねえ」

 もう一度見てみると……何かヘドロから抜けだしたと思われる別の謎生物が悲鳴を上げていた。

 見てない隙に何があったんだ?

『いやー!?助けてー!』『なんで死ねないんだ』『殺してくれえ!』『――!?――じゃないか!お前は死んだはずじゃ!?』『――!おい――!』『――。お願いだ殺してくれぇ』『――!どうして俺が親友を殺さないといけないんだ!』

 なんだあの地獄絵図。

 というか浄化止めてヘドロを閉じ込めてる部屋に詰め寄ってるんじゃねえよ。覚悟はどこに行った?

 所々、意味の通じない言葉が混ざってるが聞いている感じだと謎生物の名前かな?

 外国語を完璧に翻訳できても人の名前を外国語のまま呼ぶ――johnをジョンと呼ばずにjohnと呼ぶような感覚だ。

 自分で言っててややこしくなってきたな。


 閑話休題それはさておき


 どうやらあのヘドロが謎生物の故郷を襲撃した際に、謎生物たちをたくさん取り込んだらしい。

 取り込まれた謎生物はヘドロの汚染を受けてステインの忠実な部下となり、さらに増殖するために活動するようになる。

 群棲型というよりどちらかというとアメーバみたいな生態だな。

 半端に元に戻っているのは浄化で思考汚染からある程度元に戻ったようである。

 謎生物のベースがぬいぐるみみたいだから、汚れが染み込んだら、染み抜きでもしない限り二度と取れないような感じだろう。

 だからと言って容赦する義理はないけど。

「エリちゃん」

「あと3分ほど休めば行えます」

「なら、それまで待機」

 流石エリちゃん。俺の考えをわかった上で容赦する気はないみたいだな。

 サンプルとして生け捕った4匹の謎生物に加えてヒーロー共からさらに2匹生け捕り、残りのヘドロに取り込まれた謎生物とヒーローの相棒を根絶する。

 捕獲した謎生物は上に送って、まだ潜んでいる謎生物共を特定外来種として駆除する。

 化け物に厳しいエリちゃんなら変な情に絆されて、逃がそうとは考えないだろう。ヘドロの汚染能力は不明だが、生き残りが集結して祟り神クラスに成長し直したら事だしね。

 敵を逃がして後で後悔する破目になるより、倒せる敵は倒せるときに倒しておかなければならない。テロの芽を見逃してテロを起こって後悔するより、テロの芽を見つけ次第に潰していく行為に似ているかな。

 ちゃんとアリバイ作りしとかないとね。こういうのは結果だけでなく過程も大事だし。

「おーい。ヒーロー共ー。浄化しねーのかー?それなら減刑はなしだぞー?」

『ふざけるな!友を殺せるわけがないだろう!』

「そうだぞ!彼らを殺してしまうかもしれないのに」

 それをやれって言ってるんだけどなあ。

「あと二分だけ待ってやるからそれまでに解決策を見つけてみろよ」

『言われなくても!』

 考えなしの意見に同調して声を荒げているバカを適当にあしらう。

 どうせ助からねえんだし、殺してくれって頼んでいるんだから殺してあげるが優しさだと思うけどな。

 生き続けて死ねない苦しみを永遠と味合わせるのもいいけど、コストの無駄だからそれは珍しい物好きの上役が飼い殺しにする数匹だけだろう。

 ま、気づいた上で言い訳の為に何も言わない事を選択している薄情者青とピンクもいるみたいだし、それでいいか。

 右往左往しているバカがなにも出来ずに与えた時間を無駄に仕切ったことを確認してからエリちゃんにお願い命令する。

「エリちゃん出番だぜー」

「はい。消し去ります」

 エリちゃんの有言実行により、謎生物はどさくさに紛れて魔道具で捕獲したヒーロー共のパートナー二匹を除いて、あの周辺にいたヘドロ+謎生物たちは浄化されて消えてしまった。

 ヒーロー共の変身が解けるのに連動するようにバリアが崩壊し、この事件が一旦終了したことを誰の目にも明らかに証明していた。

 ……後始末面倒くさいなあ。あのワザとらしいボスの乱入とかきっちり犯人を調べないといけないし。

 面倒な理由じゃ無いことを祈る。お願いだから俺に楽させてくれよ。

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