21
離れた所に火の玉が集まっている。アレは鬼火かな?一瞬、辺り一帯の地面に召喚陣が浮き出たことを考えても英毅君の仕業かな。
「ほー。英毅君もやるもんだねえ」
一帯に鬼火が浮かんでいるのを見ると壮観である。同時に英毅君の実力の高さが伝わってくる。あの数の召喚は並の術者には不可能だ。
「話せこらあ!」
「五月蠅い」
「——!」
おっとこいつの事を忘れてた。
「それにしても四幹部とか言ってる割にあっさりと捕まえられるとか。弱すぎて話にならないな」
もう少し苦戦するかと思ったんだがな。幹部と言ってもこの程度か。
この前の下っ端と違って少しは手古摺ると思っていたら拍子抜けである。
「ふざけるな!というか何をしやがった!」
「何されてるのかわかって無い奴が俺に勝てるわけないだろう」
今のを把握できないやつに説明したところで時間の無駄でしかない。
「ライオンの怪人ね。情報通りだな」
「なんだと!?まさか裏切り者がステイン内に!?」
「裏切り者?なんの話だ?」
今回はクラウディアの夢日記の内容がほとんど的中したし、問題はほぼない。この後が不明ってのが痛いがエリちゃんも英毅君も負けるような相手ではなさそうだ。
というかエリちゃんは二対一なのに逆に押してるし、あの娘は物理戦闘向いてないって絶対嘘だろ。
どうでもいいけどエリちゃんが本気で動いてるからか、剣術の動きが退魔の舞になって鬼火が浄化されてるし、鬼火のせいで鬼火の浄化に力が割かれて本来の威力が出せてない。
あの二人の相性は本当に悪いなぁ。お互いにそのことに気がついてないのが残念すぎる。
二人とも興奮したら周りが見えなくなる類か。いやエリちゃんは単純に余裕がないだけか。
「ん?なんだそれ?」
チラッと押さえつけてる怪人を見たら口の中が光っている。光が強まっているな。
あ、こっち向いた。
「くらえ!」
「5枚かな」
――ボッ
「ああ、やっぱりレーザーか何かなのか?人に向けるな危ないだろう」
おー、バリアが破れた。これ内側からは壊せるんだな。
「……どうなってやがる」
「何が?」
「なんで今の一撃が空に向かって曲がったんだよ!」
ライオンの口から放たれた光線は不自然に曲がって、バリアを突き破り空へと吸い込まれた。
「曲がったんじゃなくて曲げたんだが?」
「5枚と言っていたな。そん時の一瞬だけとはいえ5枚の板が見えた」
あの一瞬でよく見えたなこいつ。怪人の幹部?は伊達じゃないってか。
「あの板にぶつかって曲がった。――曲がる?……屈折率か!」
「お、流石にわかるか。中学レベルの知識があればわかることだしこれだけヒントを出せば気がつかないわけがないか」
別に隠すことでもないので普通に教えるか。あっちが片付くまでの時間つぶしだ。
「屈折。わかりやすいのは光が水とかガラスなんか入射したときに曲がる現象だ。今のはそれを意図的に起こしただけだ。空気の層を意図的に作ってな。板に見えたのはそれだろう」
普通の人間にも見えるくらい高密度に調整したからそう見えてもおかしくないけど。
「空気?貴様の能力は
「風を操ってんじゃ無くて単純に大気を操作する能力なんだけどねえ」
だから風を生みだすより、粗密を操ることで空気の塊を作ったりする方が個人的には得意である。
風で吹きとばすのではなく、空気の塊を振り回して鈍器にする感じか?
「なら俺が動けないのは」
「単純に高密度の大きな空気の塊で押し潰してるだけだ。体感じゃ岩に押し潰されてるような感じかな?」
密度が高いから歪んでる塊が普通に見えるぐらいだ。
「こんなに大量の空気を操るだと……?あり得ない。我らステインの怪人用の肉体でも使える量はこれの1/10もなかった。化け物かお前!?」
化け物って確かにこれだけ見れば化け物じみてるが
「何を驚いてるのか知らんが、これでも俺は同系統の能力者の中でも強い方だが――」
「ならその身体を――頂くまでだ!』
「あん?」
肉体を棄てて霊体になったか。どうやって引きずりだそうと考えてたところだしちょうどいい
というかまとわりつくな鬱陶しい。
『何故だ!なぜ入れない!?』
そりゃ、対策済みだしな。普段の仕事が
「幹部と言っても俺に憑依したいならもう少し強くなれよ。ポチッとな」
魔道具を取り出してスイッチを押したら、なすすべもなく吸い込まれていく。
もう少し抵抗しろよ。反応が雑魚とあんまり変わんねえぞ。
『出せー!』
「うわっ。なんだこの汚ないぬいぐるみ?」
魔道具の効果によって存在が固定されて可視化されたからか本体がわかるようになったようだ。
これヒーロー共と一緒にいるらしい謎生物と同じじゃないか?それとも違うのか?
ぼんやりとしか見てないから違いがわかんないな。
「本体はライオンのぬいぐるみか。……だからライオンの怪人なのか?」
『出せと言ってるだろ!出さないと後悔するぞ!』
自分から肉体棄てておいてなに言ってるんだか。肉体棄てなかったらもうちょっと苦戦したのに。
「後悔するなら最初っからしねえよ」
『クソが!』
この怪人の抜け殻どうしよ?
いつもはヒーロー共に爆殺されたのか破片しか残って無いのに自爆機能でもあるのかと思ってたがそれもなさそうだ。
「一応、爆発してもいいように覆ってたけど。爆発しねえのか?」
『逆に聞きたいが自分の身体に自爆機能があってそんなものがあって気分が言い訳――ないだろう』
今なんか迷ったな。こいつの知らない機能があってもおかしくないな。
「念のためにアレを覆っていた中を真空にしといてよかったな」
『なぜだ?』
「何かが作動したからだが?」
もっとも酸素がなかったからか、肉体が一瞬膨らむだけで済んだようである。なにもしてなかったら爆発してたかもなこれ。
『……化け物め』
「怪人共に言われたくねえな。それにこの程度出来る奴は出来るし、俺より強い奴なんぞ普通に居るぞ」
『なぜこんな奴らが今まで出てこなかったのだ?』
「あのバリアが邪魔だったからってのもあるけど、上の連中が動くほどの脅威じゃなかっただけだろ。ま、黙ってな」
別のボタンを押して黙らせる。ついでに抜け殻も端っこに寄せておく。
「あとはヒーロー共か」
こっちは片付いたし、あとはエリちゃんと英毅君の結果次第か。
「——なにしてんだあいつら?」
いつの間にか怪人と思われる存在と戦ってる。――なぜかヒーロー共と共闘する形で。
俺がよそ見してる間に何があったんだ?
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