19

「ぐははははっ!逃げ惑え!」

 突然の爆発音と共にライオンのような怪人が現れた。

「おー、出た出た。警察も大忙しだなー」

「所長。私達も出動しましょう!」

 飛び出そうとするエリちゃんを押しとどめ、英毅君とクラウディアの召喚を待つ。

 その間に避難完了しなう

「ん。出来た」

「こっちもOKです」

「ちょうどいいな。獲物も来たようだし」

 画面を見てると五人が現れて、画面越しでよくわからない事を叫び変身する。

「よしヒーロー共によって情報封鎖に便利なバリアが張られた。これで遠慮なく戦闘に移れる。陣は全員持ったか?」

 俺の確認に全員が陣を持っていることを示す。

「よし!突入!」

 そう言ってバリアの中にエリちゃんと英毅君それと召喚獣を連れて踏み込む。むわっとしてるというか粘ついているというか言いようがないバリアの壁を通り抜け、妙な感覚がなくなるとヒーローと怪人が睨みあってる場面に遭遇した。

「な!?魔法空間に侵入してきた!?」

 赤い全身タイツの変態が騒ぐが無視して黒いドッグタグを掲げて要件を言う。

「どうもー超常現象対策課でーす。ヒーロー五名と悪の組織ステインの怪人をー、能力登録義務違反・超常公開違反・決闘罪・器物破損罪……以上の罪状で逮捕だ。大人しく武装解除して降伏しろー」

 と、言っても聞くわけもなく。

「ふはははは!惰弱な人間が何を言っている?お前らごときにこの四幹部のライオ様が」

「五月蠅い黙れ」

 五月蠅かったので幹部とやらのライオンの声をシャットアウトする。なにか騒いでるが聞こえないので無視する。

「——」

「暴れるなウザい」

 とりあえず怪人を押さえつけて、二人に合図を送ってヒーロー戦に集中させる。さて、お手並み拝見といくか。


   ☆   ★   ☆


 所長があっさりと怪人を押さえつける。

 やはり所長は強い。あんな怪物相手して何事もなかったかのように無力化して観戦ムードだ。

「前にも見たが何なんだあの男は?ステインの怪人をこうもあっさりと……」

「よそ見してる場合か?」

「うお!?」

 赤タイツがよそ見していたので仕留めようと、木刀を振るうがあっさりと避けられる。

「あなた確か後輩の……」

 青山先輩は私のことを知っているようだ。

「超常現象対策課所属・武装ぶそう巫女みこ神坂かみさか恵理華えりか。罪を重ねたくなかったらさっさと降伏して下さい」

 タグを掲げて身分を明かし、木刀を突き付ける。

「同じく閻魔えんま英毅ひでき。抵抗しないで下さいねー」

 閻魔もだるそうに本来の姿の牛頭と馬頭を侍らせながら、タグを掲げて名乗る。

「緑山の言っていた警察か!?あいつだけじゃないのか!?」

 なぜ警察と認識していて一人しかいないと思い込んでいるんだ?普通なら何人もいてもおかしくないだろう。

「警察……確かに超常専門の警察みたいなものだが、正確には違う」

「どういうことだ?」

「言っただろう。超常現象対策課だと」

 ずっと表側で生きてきてつい最近、超常側に踏み込んだためかどうも理解できないようだな。その上で我々の事を初めて知ったのなら無理もないか。

「超能力や魔術となどといった人の起こす超常、幽霊や妖魔などの人ならざるモノによる現象に対処する。それが我々の仕事だ。警察というより陰陽師の方が近いか?」

「俺は召喚師サモナーですし、先輩は巫女ですけどねー」

「閻魔うるさい。それに私は武装ぶそう巫女みこだ」

「はーい」

 あまり時間も掛けられないしそろそろ仕事を始めようか。

「それで降伏はしないんですか?」

「——生憎、俺達は平和の為に戦っている。ステインを倒し切るまでは俺達の戦いは終わらない!」

 周りを見ると全員が同意見のようだ。いや、ピンクだけ微妙に戸惑っているようにも見える。

「典型的な正義馬鹿ですね。仕方がありません制圧します。閻魔!」

「はいはーい。手筈通りに黄・緑・ピンクはこっちで何とかしますよー」

「手助けは期待するな」

「最初から期待してませんよ。行け!牛頭馬頭!」

 牛頭と馬頭の強烈な一撃によって分断する。あっちは閻魔に任せるとするか。

赤羽あかばね侑亮ゆうすけ青山あおやま祐歌ゆうか相手してやりますよ」

「ただの人間に二対一は卑きょ――っ!?」

 ゴタゴタ五月蠅いので突いて吹き飛ばす。

「なっ――」

「なにを驚いている?」

 小首を傾げて問う。

「私が魔法生物とやらに頼ってようやく戦えるようになるような軟弱な奴に負けると本気で思っていたのか?」

『気をつけて!このひとの攻撃はスーツの絶対防御が貫かれてる!』

 絶対防御?たかが物理無効の防御陣ではないか。しかも、かなり作りが甘いから普通魔術的に叩けば普通に貫ける程度の強度しかない。

「絶対防御とは笑わせるな。物理無効程度の魔術をそこまで言えるとは魔術文化はだいぶ遅れているようだな」

『……この世界に魔法が?でもステインに対抗できるレベルじゃ……』

「そんなにおかしなことか?貴様らがいないとステインとやらと戦えないと思っているのなら、謎生物共はこの世界の事を舐めすぎではないか?」

 侮蔑を込めて2号を見ると黙り込む。今まで黙ってた青山先輩が口を挟む。

「神坂さん一つ聞いてもいいですか?」

「構いませんよ先輩」

 吹き飛ばされた赤羽先輩がむせこんで立ち上がるが大した問題ではないので無視する。

「……私達は正しくないと?」

「正しいか正しくないかは知らないが――ルール違反というだけだ」

 あれだけ派手に動いてなんのペナルティもなしといくわけにもいかないだろう。

「あなたもあなたの正しさの為に戦ってるのね」

「……それよりも投降するなり戦うな決めて欲しいのだが」

「それは出来ない。私もやるべきことがあるのでな」

 ちらりと赤羽先輩を見る先輩。なるほど、先輩も苦労しているのだな。

「もう一度聞くが降伏しないのか?」

「愚問だな!俺は1号たちこいつらのため、町の人々の為に戦っている。こんな所で立ち止まるわけにはいかないんだ!」

「そういうわけだ」

「そうですか……」

 比較的にまともそうな青山先輩でも説得は無理か。ならしょうがない。

「勝った方の意見が正しいという事で」

「いいだろう!もう油断はしない!」

「……行くぞ!」

 その言葉を合図に本格的に言葉が無意味となる野蛮なぶつかり合いが幕を開ける。

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