閑話2

 俺、赤羽あかばね侑亮ゆうすけは先日戦った謎の組織の事を考えて情報交換の為にメンバーの桃乃もものめい緑山みどりやま昭司 しょうじ黄瀬きせ峰生みねお青山あおやま祐歌ゆうかを招集した。

「今日は急な招集すまなかった。だが、緊急事態が起きた」

「緊急事態ですか?緑山先輩の救援信号と関係あるんですか?」

 そう言いながらカレーを突く黄瀬。

「食べながらしゃべるな」

 イラッとしたように注意する祐歌ゆうかはコーヒーを持っている。

「行儀悪いよ?」

 桃乃はお茶を片手に注意し

「そういう事だ。わかったな黄瀬」

「へーい」

 まったく黄瀬は毎度毎度ひねくれて。

「あの話を頼むぞ昭司 しょうじ

 そう言ってアイスコーヒーを置く緑山。

「わかりました赤羽先輩。黄瀬ちゃんと聞けよ」

「さっさと話してくださいよ先輩」

「黙って聞け」

 そう言って咳払いをし、先日の出来事を語る。

「まず先日、何者かに覗かれてるという話をしたな?」

「あー、あれ先輩の自意識過剰なんじゃないですか?」

「茶々を入れるな。覗いている奴の事を僕が気づいたことに向こうにも気づかれてな。それからは直接覗くのを辞めて機械を使うようになった」

「機械ですか?」

 そう言って首をかしげる桃乃。なにか思い出したのか嫌そうに祐歌ゆうかは言う。

「……盗撮ね」

 昔、何かの被害でも受けたのか?

「そうです。他に盗聴機もありました」

「なんすかそれ?ストーカー?」

 もう食べきったのか黄瀬が首をかしげる。

「なら良かったんだけどな。いや良くないけど」

「ならなんなんだ?」

 話がややこしくなりそうだったので先を促す。

「それを取り外し無力化した後に最初に覗いてたやつを発見して接触した」

 ……あいつのことか。

「そいつは超常現象専門の警察みたいなものだと言っていた」

「超常専門の警察?」

「ああ、そう言っていた。身分明示のつもりかドッグタグを見せてきたが調べてもそんな組織は見つからなかったがな」

「うさんくせー。騙されたんじゃないですか?」

 思いっ切り信じてないらしい黄瀬。気持ちはわからなくもない。

「それならいいんだがな。だが、4号が見えていた。それだけで信憑性は高い」

「4号、それは本当なのか?」

 緑山の言葉を聞いて4号に確認を取る。

『恐らく見えていた――だが、彼ははっきり見えていたわけではないようだった』

 俺達みたいに選ばれた人間以外には見えないって言ってたはずだが。

「……まさかそいつも選ばれた存在なのか?」

『それはないぞ侑亮ゆうすけ。それなら魔法空間から追い出されるはずがない』

 それもそうか。あの時、変身したときの魔法空間にいなかったのだから選ばれた存在なわけがないか。

「……あのー。他にも見えてる人はいるみたいです」

「あー、俺もそんな見えてる子に会いました」

「それは本当か!?黄瀬に桃乃」

『ちょっとゴリラ五月蠅い』

『やめなさい5号』

 店長に注意を受けたので静かにすることを心掛ける。

「それで本当なのか?」

「はい。クラスメイトの一人が5号の事が見えています」

 クラスメイトが?となると高1だな。

『いきなり投げられたし』

「5号が彼をステインだと疑ってたらしいんですけど。話を聞く限りただ波長が合うだけだったみたいです」

「そいつは大丈夫なのか?」

『問題ないと思うよ。というかあたしらの事に興味ないっていうか関わりたくないって感じだったし。ステインに乗っ取られる可能性は少ないと思う』

 桃乃に聞いたんだが5号がそう答えた。

「ならいいが黄瀬の方は?」

「こっちも波長が合うだけっぽいけど見える白い女の子にあったな」

『……不思議そうに見られた』

 選ばれた人間は思っていたより多いのか?

「それは何歳くらいだ?」

「ランドセル背負ってるから小学生だと思うんで巻き込まない方がいいと思いますけど?」

 ……それは流石に巻き込むのはマズいか。

「それにしても思ってたより適性を持つ人間は多いのか?」

「一万人に一人の適性持ちと考えたら日本なら十二万人いる事になるから別におかしくないですけど。実際に会えるかどうかは別問題ですね」

『……人間って多いな』

 魔法世界の住人は人間より圧倒的に少ないって言ってたな。だからステインに乗っ取られたと言っていたな。

「話を戻すけどそれはともかくあいつは僕の家の情報を持っていた。恐らく他のメンバーの情報も持ってると思う」

「それは……マズくないか?」

 それは確かに不味い。秘密裏に世界を救っているのにそれが家族にばれたり、危害が向いたりしたら……考えたくないな。

「それならいつものこの喫茶店に集まるのは問題なんじゃないのか?」

「入る前に確認してみたがこの店に監視や盗聴機等はない。問題ないとは思うが」

「警戒した方がいいかもしれないな。次は別の場所に集まろうか」

「……ここのカレー気に入ってんですけど」

「少しは我慢しなさいよ。ステインを倒すまでの辛抱よ」

 他に反対はないようだし、次からの場所は変える事にしよう。

「次の集まりの場所は追って連絡する。ただ怪しい男のこともあるし、しばらくは各々注意してくれ」

「注意した所でどこまで効果あるかわかりませんけどね」

 そう言って週一の会合は終わった。

 その日を最後にもうヒーローとして集まることはなくなるとは、その時の俺達は知るよしもなかったんだ。

 自分達が井の中の蛙だと知り、伸びきった鼻っ面をへし折られるだなんて想像すらせず、ただ世界を救うためにステインを倒すことだけを目的に突っ走る。

 そんな青臭い覚悟は本物に撃ち壊される。

 奇しくも1号たちと出会った時に笑い飛ばした本物の魔法使いを相手に。

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