14
あれ以来、緑山の監視が出来ない。
のぞき見がすぐに感知されるようになったので盗聴機や隠しカメラなんかを使ってみたが速攻でばれて破壊されたため満足に監視できない。奴らの集会?も緑山が感知して追いかけようとするので正直手詰まり感がある。
感知タイプなのだろうが感度が高すぎて小細工が通じないようだ。他者の視線等に敏感な性質なのをあの魚が底上げしているのだろう。放課後の監視もこっちに気がついているみたいだから意味なさそうだし、個別で認識しているようだ。
不愉快すぎるがどうしようもない。本番でなるようになるだろう。
「あの魚が感知タイプなら他の奴はどうなのかな?」
鳥の方は全く気付いてないから感知では無さそうだが、他の奴らはそういうのなのかわからん。感知系は戦闘タイプより少ないし、残り全員が感知という事は無いだろう。いても一人か二人、もしくはいないか。
そこら辺は他の奴らの報告待ちだな。英毅君はともかくエリちゃんはこういうの向いてないからあんまり期待してないけど。
「……まだついて来てるのか」
「やっぱり気がついてたか」
誰もいない路地裏に入り込んで振り向くと緑山がそこにいた。
「なんかよう?お前監視しても気づかれるから監視止めたんだけど?」
「何者だ?ステインの手先か」
全然違います。というか明らかにそうだとは思ってない顔をしながら聞くな。
「あんな雑魚共と一緒にするな。それにお前自身ですら信じてねえだろそれ」
「雑魚?……ステインとはやはり別口か。先日の覗きの時に子供を連れていたからもしかしてとは思ったが」
クラウディアと一緒に覗いてた時の事を言っているんだろう。そん時に俺の匂いでも覚えたのだろうか。
「そこまで見えてたのか?あの五人の中では一番厄介かもしれんなお前」
「ステインの出現を感知する力は全員持ってるが、その中でも僕が一番の正確に把握できる。監視したいのならあんな露骨な方法を取らないことだ」
面倒臭かったから遠くから覗くという方法を選んだわけだが、それが裏目に出たようだ。……そうなると気がつかれなかった警察のみなさんスゲーというわけになるわけだが。
「ふーん。まあ俺はこういうもんだ」
「……そんなモノ見せられても困るんだが?」
「悪いけどこっちも明示義務があるもんでね。まあ警察みたいなもんだと思えばいい。超常現象専門の……ね」
「警察だと?」
お、先日機動隊に追い回されたからかあからさまに警戒しだした。いつでも逃げれるようにとか考えているんだろうが無駄なんだがな。
「
「いやいい。逃げても無駄たというのがわかった」
「話が早いな」
「警察に追いかけまわされたんだ遅かれ早かれ目をつけられる事はわかっていた……いや、目をつけられていると確信できたというべきか。あの時怪人と戦ってきた人だろ?」
「ああ、そうだな」
ふん。そこら辺のバカと違って頭が回るみたいだな。
「一つお願いがある」
「話だけなら聞いてやろう」
どうせ大したことじゃないだろうから願いを叶えるつもりはないけど。
「……ステインを倒すまで僕を――僕たちを見逃してくれないだろうか?」
「なんでだ?」
「あなたはあの時怪人を倒すことは出来なかった」
いや倒せたけど?
「……僕達はこの世界をステインから守るために戦ってきた。その際の被害はステインのせいだが退治する際には多少周囲のモノを破壊している。それは間違った事をしているとは思っていないが逃げ回っているのだから正しいことではないだろう」
自覚あったんかこいつ。いや、こいつだけが理解していると見るべきか。自己満足で暴れるだけ暴れて被害は知りませんってやって報いが来ないわけがないのだからな。
「しかし、ステインを倒せるのは僕達だけなんだ。信じられないだろうがステインもこの4号も魔法世界――異世界から来たんだ」
「知ってる」
「信じられないのも無理はない。僕も最初に聞いた時は……え?知ってる?」
「知ってるけど?さっきも言ったろ。超常現象専門の警察みたいなもんだと。ぶっちゃけ異世界からの侵略者なんぞ珍しくもないし、何度かそういうのは潰してきたからな」
理解が追い付いていないようだ。まあ、自分のやって来た
「今回のステイン?だったかも普通にやれば出てきてすぐに潰せてたんだよ。お前らみたいなのが変なバリアさえ張らなければな」
「精神魔法体隔離空間のことか」
「名前なんぞ知らんが……なんだその変な名前?」
「僕に言うな」
そんな困った目でこっち見んな。知らねえよんなもん。
「ともかくお前らの迷惑のせいで潰すのにすっごい回り道させられてんだよ」
「……のか?」
「あん?」
「——それは本当なのか?」
いぶかしげに見るが震え声で続ける彼にはそれすら聞こえて無いようだった。
「——僕達のやってきたことは余計なことでしかなかったのか?」
縋るようにこっち見られても答えは変わらない。
「……?余計なことっていうか仕事の邪魔されてるとか言えなかいけど?」
ぼんやりとしか見えない魚が何か騒いでいるようだが、そんなものは彼の耳には入っていないようだ。
「嘘を吐くな!僕は皆の為に戦ってきたんだぞ!」
「ふーん。で?」
「戦いたくなんてなかったのに皆に説得されて嫌々やって来て、ようやくこれが僕達のやってることが認めて貰えることとして知れ渡ってきたのに……みんなが僕の事を認めてくれてるのに——それを僕から奪うのか!?」
何言ってんのか全くわかんねえ。あれか?承認欲求ってやつか?
アイデンティティの確立とか精神の充実とかそういうものをヒーロー活動に依存し過ぎたのだろう。
「そうなるな」
「ならお前を倒――す?」
コテンと倒れる倒れる彼は何が起こっているのかわかっていないようだ。
「こんな短絡的なのを話が通じる奴だと――勘違いした俺が悪いのかなこれ?――まあ、話が通じないかもしれないという前提があったから多少話が出来るってだけで勘違いした俺が悪いか」
そう自己完結すると激しい憎悪の視線が刺さるが無視する。
「鬱陶しいし意識奪っとくか」
そう言って指を鳴らす。それと同時に視線を感じなくなる。
「倒しちまったけどまあいいか。こいつ使えばバリアへの対処も「昭司 《しょうじ》から離れろ!」――次から次へと鬱陶しいもんだね。あぶね」
そう言いながら飛び蹴りを身を引くことで避ける。
「大丈夫か
「意識がない」
「クソッ!お前何者だ!」
「確か
都合のいい登場だな?……ああ、あの魚物理干渉が出来たのか。ご丁寧に携帯を咥えてる?ようだし、あいつが呼んだのか。
「俺が注意を引きつける!その間に
「わかった」
「目の前でそんなこと話すなよ」
とりあえず逃げようとしている方を抑えようとしたら勘がいいのか赤羽が攻撃して邪魔してくる。
「邪魔だ」
鬱陶しいので赤羽を吹き飛ばし、二人の方を見ると。
「変身!」
「あん?」
いきなり青山が叫び――気がついたら場所が移動していた。
「何とか空間とやらを使ったのか」
目の前の何とか空間――言いにくいからやっぱバリアで統一しよう――バリアが砕ける。ここからさっきの場所に急いでも数分はかかるし、数分もあればさっきの場所からは確実に立ち去っているだろう。
「あーあ。逃げられたか」
まあいいや。今回のは奴らへの警告にはなっただろうし、このまま手を引くんだったら悪の組織潰してからゆっくり料理すればいいか。もう身バレしてんだから逃がす心配はない。
あいつら捕まえられなかったのは残念だが対応策がないならこんなもんだろうと自分を納得させて諦めて事務所に向かう。
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