12

 ふむ。大体わかったな。

 ヒーロー5人が特定できた。そしてあいつらの目的とそそのかしてる存在もわかった。

 というわけで全員集めて半分以上がサボる会議である。もうあいつらクビにしていいんじゃないかな。

「簡単にまとめると魔法世界(笑)とかいう世界から逃げてきた負け犬が人間世界を守る(笑)とか言って、中高校生の子供を誑かしてヒーローをやらせてるらしい」

「所長。魔法世界ってなんですか?」

「知らん。説明すんのが面倒くさいから適当に名付けたんじゃねえの?この世界の呼び方に決まりがないように向こうの世界にも決まった呼び方がないんだし。別におかしなことじゃない」

 人間道・物質世界・天下・地上・地球。

 俺らのいる世界を語った言葉は数あれど統一した世界の呼び方は存在しない。宗派とかなんだかんだの争いで決められないという事情もあるんだがゆえにこの世界の事はこの世界と呼ぶしかないのである。

「まあこの世界ではない別の世界の呼び方なんだろう。話を戻すぞ。協力してる或いはさせられてる5人がこいつらだ」

 五人の写真をホワイトボードに張り付ける。

「こいつらは左から桃乃もものめい緑山みどりやま昭司 しょうじ黄瀬きせ峰生みねお青山あおやま祐歌ゆうか赤羽あかばね侑亮ゆうすけという」

 そう言いながら名前を写真の下に書いていく。その下に変身後の写真も貼る。

 ……今気づいたが名前の色と見た目の色が対応してるんだな狙ったのかこれ?

「それぞれに5~1号とかいうマスコットみないな魔法界の生命体とやらが憑いているらしい。こっちは俺らみたいな専門家が直接見て確認したわけじゃないが、誰もいない所へ話していたりしたのを録音等して確認したらしい」

「……録音?所長が調べたんですか?」

 ああ、新人の英毅君は知らないか。

「知っての通りうちは警察とかと協力することが多いからねえ。こんな細かい事調べるのは大体警察と覚えとけ。超対だったら見つけ次第殲滅を地でやってるからかなり行き当たりばったりだぞ。うちの事務所は他よりもマシな方だけど」

 場所によっては警察とは犬猿の仲だったりするから(というかそれが大多数)、協力するうちの事務所の方がおかしいという考え方もある。協力しないと仕事にならないのは仕事に来ないあいつらが悪い。

「赤羽と青山はうちの高校の先輩ですね。黄瀬は確か中学生ですね。緑山と桃乃は知りませんね」

「エリちゃんと英毅君と同じ学校だからねえ。ちなみに桃乃はあの前の事件の時に英毅君とデートしてた女の子だな」

 ギロッ――ビクゥッ!?

「エリちゃんそこまでにしといてくれ。英毅君のおかげで憑依云々が確定したんだからさ」

「どういうことですか?」

「——英毅君が桃乃と同じクラスで、ふとした拍子に判明したらしい」

 聞いた限り入学した時から怪しいの五号がいたらしいが害はなさそうだったので変な妖精かなにかだと思ってスルーしてたらしい。

 説明聞いてあのヒーロー連中と繋がらないのはまだわかるが、知性のある謎の妖精に関しては報告しないのはダメだろう。それを早め報告しててくれればもっと早くにあんな連中倒せたんだが……いや、もう過ぎたことだ。いいだろう。

「黄瀬はエリちゃんの通ってた中学の後輩だっけ?」

「はい。最もあっちが悪目立ちしてお調子者でしたから一方的に知ってるだけですけどね」

 二つ上の関わりのない先輩にまで知られてるとかどんなことしたんだこいつ。

「そうか。……緑山はそこの公立高校の生徒だな」

「どこ高校とか知っても関係あるんですか?嫌な予感がすんですけど」

 勘がいいな英毅君。

「単純に探り入れるには重要だろう。別の学校とかだと探りを入れにくいだろうし」

「なるほど。ではどういう風に役割分担を?」

「英毅君は桃乃に怪しくない程度に探りを入れろ。エリちゃんは青山と赤羽に不自然じゃない程度に情報収集。俺は緑山と黄瀬を担当する。ばれないことを重視しろ。英毅君の陣が完成したら次のヒーローと悪の組織のぶつかりに乗じて双方を潰す」

「わかりました。こっちが探っている事を悟られないように探ります。彼らが憑かれてることを確認することを最低限確認します」

 エリちゃんはわかってるねえ。英毅君は嫌そうだけど。

「俺はそれしなくてもいいですか?」

「別に構わないよ。君は陣を優先して、ただ有益と思われる情報があったら報告すること」

「わかりました」

 英毅君が陣作ってくれないと何にも出来ないからねえ。エリちゃんはそういうのは苦手だし、いやいい人材が来てくれたものだ。上に探り入れても梨のつぶてだしあんまり

「ん」

「クラウディアは修行と俺の手伝いね。OK?」

「おーけー」

 クラウディアにはなんもやって貰うことないし、邪魔にならなければいいという程度には手伝って貰って満足して貰おう。

「それで悪の組織の方はどうするんですか?」

「そっちに関して大した情報は無し。どうもこっちの世界に拠点があるわけじゃないみたいだから、次の襲撃の時に次元を特定したら解決できるし問題ない」

 次元さえ特定できれば最悪、上に連絡して次元事消し飛ばして貰えばいい。

 自力で解決しろと言われたら、上に支援して貰ってその次元にそれ専用の魔道具爆弾をしこたま送りこめばいいし。魔法界とやらがどうなろうと知ったことじゃないし、悪の組織はもっとどうでもいい。

「それじゃ会議終了。解散」

「ん」

「今からは流石に行かないからね?明日から行くから……わかった?」

「む」

 今すぐ動くと思ったらしい。

 エリちゃんに目配せする。――睨まれた。なぜだ?

「クラウディアちゃん。今日の修行をしようね?」

 意図伝わってるんじゃないか。なんで睨んだんだよ。

「む。今日は何をするの?」

「今日は素振りだ。何をするにも体力は必要だからね」

「ん。頑張る」

 ……将来クラウディアがエリちゃんみたいな本来は後方要員のはずなのに前線で戦う戦闘要員という謎の存在にならないだろうか。わかりやすく言うなら物理で殴る回復職ヒーラーみたいな感じかな。いや、前線要員があまりいないからありがたいんだけどね?クラウディアはそれには似合わないんだけどなあ。

 ……前線で戦う幼女。……いろんな所に怒られそうだな。

 ……嫌な予想が現実にならないようにちゃんと見ておこう。そんな風になっちゃったら俺が泣く。

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