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クラウディア強化のためのお勉強は始まったばかりである。だが、
「クラウディアちゃんってもしかして天才?」
事務所にはクラウディアが召喚した妖精のようなものが飛び回っている。クラウディアはそれと一緒に飛び回ってる。
いや、妖精に運ばれてるのか。喜んでるみたいだし危なくなるまで放っておくか。
「知らなかったのか英毅君?このぐらいの子はなんでもスポンジのように吸収するんだぜ」
「え……?いつもこの事務所で問題解けずに唸ってたじゃないですか」
ん?
もしかしていつもクラウディアの解いてる問題を見てないのかな?
「あれ名門高校受験レベルの問題だし、小学生のクラウディアは解けないのが普通だぞ?」
いつも解いてる宿題は、親御さんが勉強を教えていったらものすごい勢いで吸収してしまったので、いろいろな問題を出して応用力を身につけさせているからだ。
「それ大人でも難しいやつじゃ……?」
「そだね。教えを請われるこっちもきついよ」
「マジですか」
「大真面目だよ。この子は特異能力なんてもんがなかったら表世界で神童って持て囃されるレベルだからね?」
おかげで同年代との交流がビックリするほど低いんだよねえ。外見でかなり目立つ上に学校での授業のレベルの低さもあり、不登校あるいは保健室登校状態。これで友達作る方が難しいわけだ。
本人は飛び級で進学したがっているが親御さんが認めてないらしい。いわく、小学校で友達も出来ないのに飛び級したら人間関係が築けなくなって危ないと。
親御さんも苦労したんだろう。だが、そう思うなら頻繁に変人の巣窟である
「そう言えばこの子は能力者なんですか?教えたらすべて吸収したとはいえ魔術の基礎知識皆無でしたけど」
基礎知識教えてたのエリちゃんやろ。お前がなんもしてないのとエリちゃんが用事でいないからお前が陣作り中断してまで教えてるんでしょうに。
なんかサボっているぐらいならやれと脅されてたが、サボっているというより気になることがあって集中力を欠いている印象だったが。
ヒーローの正体にでも気がついたのかな?それなら英毅君から相談されるまで気がつかないフリをしてあげるのも優しさかねえ。
「さっきも言ったけど特異能力持ち。能力はあまり言いふらさない方がいい類いだから教えない」
「……聞いたらヤバい事になる類ですか?」
予言が変わる可能性が高くなるからヤバい事になりかねないな。
「まあそんなところだ。それにレア度は高いがあまり使える力じゃないからな。ぶっちゃけ知らなかったら何の影響もない能力だから気にしなくていい」
「……それ暴走しないですよね?」
……
「別に殺傷能力は皆無だから気にするだけ無駄だぞ」
「そうですか」
「というか殺傷能力があるんだったら魔術なんて教えさせないわ。能力を伸ばすように指導する」
そうなればうちの事務所の戦力強化にもなるし、クラウディアを正式にうちの一員として登録できんのに。
「それもそうですね。……あれ?所長って能力者なんですか?魔術師じゃ無くて?」
「ん?なんでそう思った?」
少なくとも俺は魔術師ではなく能力者だぞ。
「いや、俺の作ったバリアの構成とかの報告書を理解してたじゃないですか。あれ魔術師でも理解できるのは限られますよ」
ああ、それで凄腕魔術師とでも思われてたのか。ちなみに理解は出来てないが、大雑把な事はわかったから良しとしただけである。
「魔術の基礎とかは一応使えるし、表の仕事じゃ簡単な除霊とかしてなかったしなあ。俺のことを魔術師と思っても不思議じゃないか」
「……ほとんど先輩がやってるので先輩の師匠かと」
「エリちゃんの師匠?……もしかしてエリちゃんが武装巫女って知らない?基礎の除霊とかはまだしもそれ以上の魔術は女性しか使えないんだと」
というか師匠に見えていたのか?ただの仕事上の上司部下の関係でしかないんだが。
「……巫女?侍とか武士じゃ無くて?あれだけ木刀振り回してるのに?巫女?」
「気持ちはわからんでもないが落ち着け。正直、武装巫女の事を詳しく知らんと似たようなことは思うしな。あ、外には出るなよー」
室内で遊ぶのには飽きたのか外に出ようとする妖精とクラウディアをサクッと捕まえる。
「これ以上暴れられても面倒だから召喚物の送還方法教えてやれ。責任もって送還せんと面倒な事になるしな」
「む」
「いや流石に外まで行ったら目立つからね?」
「……ん」
納得してくれたらしい。頭がいい子でよかったな。
「(何だ今の能力?念動力って奴か?)……召喚とセットで教えましたけど。実践でやらせてみますか」
「とりあえず怪我とかはさせんなよ」
「怪我した失敗は二度とミスしませんよ」
「いや怪我なんてさせたらエリちゃんがブチ切れるから釘刺しただけだけど、別にそれで「わかりました!かすり傷一つつけさせません!」――本当にエリちゃんが怖いんだな」
調教もとい教育はきちんと行き届いているようだ。変にドM化しないんだったら、迷惑かけない限りどうでもいいから放っておくけど。
「それじゃあクラウディアちゃん。送還を実践しようか」
「む。しんじんさんのくせに生意気だ」
「これは重要な事だから。召喚したら召喚した人が元の世界に送還する。それをしないと大変な――」
なにやら真面目な授業になってきたし、クラウディアも真剣に聞き始めたので、別の所に意識を移す。
例えば、さっきから部屋から逃げだそうとしている妖精とか。
ガツン――ポトッ(窓ガラスに激突して落ちた音)
ぺチペチ(なににぶつかったのか触って確認してる音)
ゴソゴソ(何とか部屋から出ようとして窓を開けようとしている音)
なんか和むなこれ。
面白いからしばらく観察しようかなこれ?
「——というわけで送還するのは
「お家に帰れないと悲しいもんね」
「そういうこと。じゃあ手順道理に送還してみようか。あれ?そう言えば妖精はどこに行った?」
あ、どうやらようやく送還するらしい。ならこの妖精を捕まえとくか。ひょいっと。
「逃げようとしてたぞ?」
危なかったと呟く英毅君。いなくなったら捕まえに行かないといけないしな。それは面倒くさいだろう。ほれっと渡す。
「ありがとうございます。妖精タイプは好奇心が旺盛で、下手しなくてもすぐどっかに行ってしまいますから大変なことになるとこでした」
「素人が偶然やった召喚に多いが、すぐにいなくなるせいで帰れずに変なとこに住み着いたりするもんな」
そいつらを捕獲してくれとか駆除してくれって依頼も一定数ある。まあだいたい幽霊とかと勘違いされてることの方が多いけど。
「それじゃあ送還してみようか」
「ん」
この後きちんと送還できました。
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