閑話1
嫌いではないが自分のペースでやりたい人間にとって時間がキッチリ決まってる場所は苦手なのである。
「おーい」
まあ、超常現象対策課とかいうよくわからない組織に所属している以上、時間厳守より確実に課題をこなすことの方が重要だ。
「起きてください」
明確な期限こそあるがそれまでに終わらせれるのならどう時間を使おうが文句を言われる筋合いはない。
ただ先輩はでよく攻撃してくるが別に仕事をしないのが理由ではなく、だらけてる俺を見ると腹立つって理由なのでまだマシなのである。
「もう授業始まりますよ」
こいつに比べれば。
『明~。こんなのに構うことないわよ』
「……うっさい」
「あ。起きましたね。じゃあ私も自分の席に戻りますから授業中は眠らないで下さいね」
「……じゃあ起こすんじゃねえよ」
毎度毎度、俺が寝てる時に起こしに来るただのクラスメイトの
起きたのを確認してから去っていくあたり鬱陶しいものである。人がうとうとしているところを毎度毎度起こしに来る天然の嫌がらせ女だ。しかも、なぜか休日の
人が夜中まであのヒーローのバリアを解析して寝不足なことをわかってて起こしてるに違いない。――それに
『明~。あまりあんな奴に関わるんじゃないわよ~』
「(そんなこと言っちゃダメよ)」
幽霊とはまた違うエネルギー体と話す人間とは一体何なんだろうか。
『言っちゃ悪いけどあの男とはあまり関わらない方がいいわよ?どうもあたしの事を感知してるみたいだし、もしかしたらステインの人間かも』
それに飛び回ってるマスコットみたいなエネルギー体はいったい何もんだ?
どうもヒーローのバリアに関連する次元の生物っぽいが、あれだけ所長たちが探していたらしい完全に痕跡を残さずに戦ってきたらしいヒーローなら、あんなに堂々と姿を現す理由にならないからなあ。
あとステインってなんだろう?
寝ぼけた頭でぼんやり考えてるとチャイムが鳴る。あ、寝れんかった。
☆ ★ ☆
「また寝てる」
「……うっさいなあ。何なの?人が寝てるのがそんなに気に入らないの?」
昼休みに入ったので存分に寝ようと思ったら、また厄介なのが来た。
「いつも一人だから気になってね」
『ちょっと明!さっきの話聞いてたの!?』
「うっさいなあ」
ギャーギャー喚く変な生命体を掴んで、窓を開けてから投げ捨てる。
『みゃーーー……!?』
「……え?」
「虫がいた」
そう言ってさっさと教室から出て行くと後ろからついて来ているようだ。何なんだよこいつ。
「ちょっと閻魔くん。待って……待ってってば」
「ついてくんな」
なんか廊下に出てから異様に注目されてるんだけど何なんだよこいつ。なんか俺が悪者のように見られてるんだけど。
視線から逃げるように歩いていたら部活棟と呼ばれる文化部の部室が集まる建物にまで逃げていた。こいつもついて来てるから意味ないが。
「お前ホント何なんだよ」
「閻魔くんは五号が見えてるの?」
「なんだよ五号って」
大体さっきのマスコットだと予想はつくけど。話をするために手近な空室に入り込む。……ここどっかの部室が倉庫にしてるなこれ。
「えーっと……閻魔くんがさっき投げ飛ばした」
「ああ、あの幽霊みたいなのか。悪霊じゃなかったっぽいけどさっさとお祓いした方がいいぞ。あれ憑りついてエネルギーを得てる寄生タイプだし」
嘘だけど。
「え?寄s『嘘つくなー!あたしたちは人間界を救いに来たんだぞ!寄生してエネルギーなんか取らないわ!というかそんなことしたらあたしらは消えちゃうわ!』
変なマスコットが戻ってきた。いや、教室じゃないからやって来たが正解なのか?どっちでもいいか。
「チィッ。来やがったか」
『明を誑かそうとして!明はあたしが守る!』
「要らねえよ」
『なにー!?明が可愛くないって言いたいのかお前!?』
「かわいいのかもしれんが好みじゃない」
『そうだろうそうだろう。明は可愛い……って好みじゃないってどういう事だ!?』
「二人ともいい加減にして!」
なぜか俺が怒られた。俺じゃ無くてこいつが悪いのに。
「で、何なんだよこいつ。悪霊とかじゃないのか?」
強いて言うなら俺の召喚する他の世界の生物に近いが、俺の知らない世界の生物っぽいな。ちょろちょろ周りを飛び回るな鬱陶しい。
『前々からそうじゃないかと思ってたけどやっぱり見えてるのね』
「五号。選ばれた人にしか見えないんじゃなかったの」
『そのはずなんだけど……でもこいつは変身できないわよ。どっちかというとステイン寄りの存在よ』
「昔から霊感強いからそれが原因じゃねえの?」
召喚術をしてたら霊感が強くなるんだよなあ。
『……ステインって知ってるのかしら?』
「
そう言えばあの悪の組織の名前なんなんだろう?所長も最初に聞いた時、知らないから悪の組織でいいだろって言ってそのままそう呼ぶことになったんだよな。
『……嘘は言ってないみたいね。ごめんね明。あたしの事が見えるなら話しといた方がいい』
「だから学校にはついてこないでって言ったのに……」
なんか後悔しているようだが、どうやら召喚術等何かでよくある主従関係ではなく不本意な共闘関係っぽいな。
「もう腹を括った方がいいね。実はこの子たちはね――」
話が長かったので要約すると
・このマスコットみたいなのはステインという組織が魔法界(たぶん説明が面倒だから適当な名前つけただけだろう)を滅ぼしてしまったので
・こっちの世界では魔法界の生き物は実体を保てないので物や人に憑依して生き延びている
・ステインが人間界を征服あるいは滅ぼそうとしてるので魔法界の悲劇を繰り返さない為に相性のいい人間と協力して戦っている
長々と語っていたが重要な事はこれぐらいか。
「それで?ヒーローさんのお手伝いしろって?」
「……そんなに嫌そうな顔しなくてもいいのに」
『あんたみたいなのにそんなのは頼まないわ。問題は私達が見えるという事よ』
見えることが問題?何言ってんだこいつ?
『見えるという事は波長が合うという事。下手すればステイン側に身体を乗っ取られるわよ』
悪魔の一種かな?呼び出したら身体を乗っ取ろうとするという悪魔もいるし別におかしなことじゃないか。
「ん?ステインもそこのウザいのと同じような状態ならたまにニュースになる怪人とやらは?」
『ウザいの!?』
「まあまあ、落ち着いて。あの怪人は着ぐるみみたいなものなんだって身体だけ作ってそこに入り込んで動かす感じ」
憑依用の肉体を作ってる感じか。一々波長の合う人間を探すより効率はいいだろうな。
「……そうか。まあ気にしなくていいぞ。乗っ取られねえから」
そこのマスコットと同じ次元の存在ならあのバリア解析の時点で、対策を練ってるし問題ない。
陣じゃ無くて札を作くることにしといて正解だったな。乗っ取られないように追加するのも楽だし。
『あんたが何者か知らないけど普通の人間なら抵抗できないわよ。だからしばらくあんたはあたしらの監視下に入れといた方がいいと思う』
「え、やだ」
俺は普通の人間じゃないし、対策もキッチリしてる上に潰す予定の存在に監視されるとか迷惑でしかない。
「あ、それなら他のメンバーに紹介した方がいいですね。今日の放課後集まりますので一緒に行きましょう!」
「え、やだ」
『気に食わないけどあんたの為でもあるのよ。ステインに乗っ取られたらあたし達じゃどうしようもないわ。だから乗っ取られる可能性を少しでも減らすのは正解でしょ』
「四六時中あんたらと一緒にいたら逆に目をつけられるわ」
特に先輩は言い訳する前に殴ってくるだろうし。
『ん~。それもそうね』
「あ、じゃあ私のアドレス教えときますね」
「おい。勝手に携帯に取るな。アドレス入れんな。何があっても掛けねえよ」
こうしてなし崩しにヒーローの情報を手に入れたがこれ報告したくねえな面倒臭い。
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