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「あら、お帰りなさいねぇ」
「いや誰?」
コーヒー豆が切れたので補充しに外に出て、帰ってみればクラウディアを膝枕している浮世離れしたような見慣れぬ美女がいた。
雰囲気から人間ではないのがわかる。最悪なことにならないようにいつでも動けるように気構えを組む。
「そう警戒しないでいいわよぉ。あたしはただの馬頭でそっちで英毅の添い寝してるのが牛頭よぉ」
「そっちって――うわ!?ホントに添い寝してる!?」
「しぃー」
明らかに怪しい女に五月蠅いと注意された。解せぬ。
「馬頭に牛頭?確か地獄の門番じゃないか?」
「それは私達の父親で私達はただの獄卒よぉ」
「娘いたのか。なんで現世にいる」
「英樹に召喚されたからねぇ」
そう言えば英毅君は魔術師で召喚術の使い手だったな。
「英毅君は地獄からの召喚が専門なのかな?あまり言いふらしていい内容じゃないないね」
そこら辺の木っ端ならともかく牛頭馬頭のような上級と言ってもいい地獄の鬼を片手間のように召喚出来るとか下手すれば超対の重鎮共が動くレベルじゃねえか。
「英毅以外にはあの人にしか召喚されたことはないわねぇ?」
「それ知ったらヤバそうな情報開示しないでくんない?」
「そぉ?」
知りたくなかったとはいえ上からの情報との差が大きすぎる。英毅君はそういうのを誤魔化してるようには見えない。という事は上の情報操作なんだろう。
もしかして英毅君は重鎮の親族か?
……深入りしたくねえな。こんな物件を押し付けるような上が何を企んでいるのかは知らないが下手に
でも多少は調べとこないと後で困りそうだな。探り入れとくか。知ってる事で起こる不利より知らないことによる不利の方が危険だしな。
「すいません遅れまし――何してるんですか所長?」
今後の方針を考えているとちょうどエリちゃんがやって来た。
「何してるって――ちょっと待って?なんで木刀を向けるんだ?俺が少しはずして戻った時にはこんな状況だったんだけど」
「女遊びをクラウディアちゃんのいる場で行うとは……」
確かに今話してる馬頭はどっかの商売女と言われても納得できるような見た目をしてるけど。というか俺そんな事すると思われてるのか?
「話聞いてくれない?よく見ろ主犯あっち」
ちょいちょいと添い寝中の
「なるほど……。なんで叱ってないんですか?」
「この二人が何者か確認してたとこ」
「——人化の術。人間に化けた鬼か」
あ、やっぱり退魔畑の人間は見破るのが早いな。
「あらぁ?巫女さんかしらぁ?」
「
武装巫女は元々は武器を使った舞を奉納する巫女だったのが、何をとち狂ったのか神に使えることを軽んじるようになり、武装して妖魔を祓う様になったという経歴を持つ退魔師の一族である。やってることが巫女とは思えないが巫女として扱わないと制裁される。
彼女は由緒正しい武装巫女の家系で、超対では退魔と神様などの専門である。
「現世の今の人間はやさしいわねぇ。昔の人間だったら問答無用で斬りかかってきたのにねぇ」
「なんだと!?」
「あー、エリちゃん落ち着いて。馬頭さんもあまり煽らないように」
「私は落ち着いてる!」
「別に煽って無いわよぉ?」
「はいはい落ち着いてるなら俺に任せてね。馬頭さんは聞かれたこと以外は答えなくていいんで」
「……任せます」
「わかったわぁ」
まったく。エリちゃんも妖魔に対する敵愾心強すぎるなあ。
「それじゃあ、いくつか質問しますね。まずなんで常世から現世に?」
「英毅にお昼寝のために
「はあっ!?」
「落ち着いてエリちゃん。もしかして頻繁に召喚されてます?」
「いつものことねぇ。でも最近は引っ越すとか言ってあんまり
そんなに頻繁に召喚されるとか英毅君。対価にいったい何を出してるんだ?
「……えーっと、どういう契約で英毅君と?」
「契約ぅ?なにそれぇ?」
「え?」
召喚される妖魔は契約によって召喚されて使役することが出来る。契約してないなら召喚しても従うことはありえない。
「ならなんで英毅に従っているんだ?」
「従ってぇ?私達は英毅と友達なだけでぇ。契約による主従関係じゃないわよぉ?」
「……嘘だろ」
友人になることである程度、召喚した存在を使うことが出来るようになるというのなら召喚術の定義が引っくり返りかねない。
「嘘じゃないわよぉ?まあ、普通じゃないのはわかるけどねぇ」
「もしかして英毅君以外にもそんな関係だったりするんですか?」
「いる事はいるけどぉ。これ以上は教えられないわぁ。怒られちゃうしぃ」
「ああ。そうでしょうねえ。それは知りたくないので聞きません。俺だけならともかく部下たちまで危険に晒したくありませんので」
「あなた長生きするわよぉ」
「どうも」
もう時間切れのようだな。馬頭の膝枕で眠っていたクラウディアが起きようとしていた。
「むにゅぅ……」
「おはよ。よく寝れた?」
「ん」
眠そうなその顔可愛いなぁ。
「クラウディアちゃん。こっちにおいで。部長はクラウディアちゃんに近づかないでください」
「ん」
「酷くない!?」
あ、エリちゃんに完全に変質者を見る目で見られてる。なんか変なことしたっけか?
「
「んむ?」
「あれらは知り合いじゃないでしょ」
「ん」
サラッと俺も含めて近づいちゃいけない人認定しないで欲しい。とてもツッコミたいがエリちゃんの教育は置いといて、馬頭さんに英毅君を起こすように言う。
「わかったわぁ。ほら起きなさぁい」
そう言って英毅君と牛頭を起こしに行く。
――ゴスッッッッッ
近づかなくてよかった。起こされた牛頭が寝ぼけて馬頭に鈍い音共に一撃がぶち込まれた。
「もう痛いじゃないのぉ」
――バゴッッッッッ
「殴り返した……」
なにあれ怖い。あんなの人間が受けたら一撃で死にかねないぞ。地獄の獄卒は罪人の魂を呵責すると聞く。そのためには恐ろしく強いのだろう。
「…おはよ」
「あんな一撃を人間が受けたら危ないから
「…次から気をつける」
地獄の獄卒の肉体言語コミュニケーション怖っ!?
「…英毅…起きる」
「——あんだけ騒がれたら寝れねえよ」
ああ起きたか。
「じゃあ、今日集まれるメンバー全員集まったから今週末に関する連絡をするぞー。全員注目ー」
「
ロリコンっていつまで呼ぶつもりなのだろうか?それが定着しない程度に飽きてくれるといいけど。
「みーは来たくないって連絡来たけど、それ以外は着拒されてる」
「あの人達は……」
「あいつらが真面目に仕事するわけねえだろ。気にするだけ時間の無駄だ」
「そう言う問題じゃないでしょう」
エリちゃんの小言は無視して話を進める。
「それじゃあ、今週の土曜日に――」
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