第3話

それがまた、次に会う時の口実になるのだ。

ただ幸か不幸か、2人の関係は、恋愛的な意味において一歩も前進していなかった。

2人で遊びにいくことはもちろんある。映画を見に行ったり、洋服を見に行ったり、時にはお互いの家に泊まりだってする。

だが、なんにもない。

ほんとうになんにもないのだ。

時々孝はホモじゃないだろうか、なんて考えてみたりする。孝には大親友の男の子がいて、その子と会えることになると、平気で由美の約束など反故にしてきた。

「ごめん。前々から約束してたの忘れててな」

嘘つけ。由美は知っている。

彼は嘘をつく時、とりわけ大親友の東のことで嘘をつく時かならずちょっと冷たくなる。

突き放すような、質問を許さないような、そっけないメッセージをよこしてくる。

それはこっちがいくら美味しい餌をぶら下げても絶対につられませんよ、無意味ですよと言われているようでちょっぴり寂しかった。


「結局ただの暇つぶし相手なんだって」

由美のメール相手のさくらさんにはそう言われた。

由美は孝とのことを誰にも打ち明けていなかった。振られる前、ずっとまだ孝とは仲がそれほどよくなかったころは親友のあかりと加奈にだけは相談していた。

2人とも応援してくれていた、はずだ。

由美が振られてしばらくは孝の悪口を言ってあんなサイテーなやつ、忘れちゃいな!と励ましてくれていた。

だから、そのぶん未だに孝と仲良くしていることが後ろめたく、だんだん2人には相談できなくなっていった。

そのうち孝と由美っていっつも一緒にいるよね、もしかして付き合ってるの?とサークルで話題になり、その時は2人に呆れられたものだ。

まだ好きなの、もうどうしようもないよ、諦めて次に目を向けなよ。その言葉は純粋な親切、親友としての気遣いだったはずだ。

でも、由美はそれをまっすぐに受け入れられなかった。

なにの嫉妬なのか、反発なのかさっぱりわからなかったが、2人にそう言われるたび、まるでロミオとジュリエットが反対を受け別れさせられそうになったような気持ちになり、かえって意固地になった。

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