女「惚れた」

新米ブン屋

男「……」

男「ほんとクソ。まじありえねえ。はー、思い出すだけでいらいらしてくるわ」

女「……うるさい」

男「あ?」

女「黙れ」

男「いや、でもそれがさ」

女「ほんとクソ。まじありえねえ。はー、目の前にいるだけでぶっ飛ばしたくなってくる」

男「ごめんなさいわたくしが悪うございました」

女「わかればよろしい」

男「じゃあちと聞いてくんね?」

女「……(読書)」

男「もう俺たち受験生じゃん? だから色々頑張ろうと思ってさ」

女「……(読書)」

男「ちょっとロシア語の資格とったんだよ」

女「え?」

男「そしたら母さん、怒髪天を衝く。あれはそこらの酒呑童子より怖かったわ」

女「……?」

男「『あんたそんなのに時間使って何のメリットがあるの!?』」

女「……」ブルッ

男「母さんもメキシコ語とれって言ってんのにさ。あんまかわんねーよ。まったく」

女「メキシコってスペイン語……」

男「俺はこの資格で努力できる姿勢をアピールしようと思ってるのにさ。わかってくんねー」

女「かっこいい……」

男「まあ、そんなことがあったわけよ」

女「惚れた」

男「え?」

女「え?」

男「俺に?」

女「うん」

男「……ありがと?」

女「うん」

男「……」

女「……」

男「なにこの沈黙」

女「いつものことでしょ」

男「確かに」

女「うんうん」

男「次は公認会計士とるつもりだからよろしく」

女「え?」

男「え?」

(公認会計士の資格取得までに必要な勉強時間は東大合格と同等とも言われている)

女「頑張るとこ、好き」

男「お、おう。ありがとよ」

女「でも、頑張りすぎないで」

男「? 頑張りすぎるくらいがいいんじゃねーの?」

女「それ、早死にする人の考え方」

男「え」

女「努力は適度でいいの。最低限あれば、後は適当で」

男「適度ってそれは」

女「男、一緒に長生きしようね」

男「……い、いきなりそんなこと言うなよ」

女「え?」

男「女に見合う男になろうとしてんだよ。そんなこと言われたら決意が揺らぐ」

女「惚れた」

男「じゃあ付き合おう!」

女「受験終わったらね」

男「え?」

女「え?」

男「はい!」

女「にしても男、まだわたしたち中学生よ?」

男「それが?」

女「男、早いよ。焦らないで」

男「……おう」

女「わたしも隣にいたいから」


男「……」

女「……」


二人「惚れた」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女「惚れた」 新米ブン屋 @kiyokutadashii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ