第4話 少年と青年とおっさん

倒れた武者の鎧を外し、衣類を使って動けないようにしばりあげた。


(ちっちぇえな)


武者を縛り上げながら本条は思った。

本条の身長は180を超えている。

戦国時代の平均身長は155程度、この武者の身長は160程度だろうこの時代では大きな方なのかも知れない。

しかし本条が小さいと思ったのは身長だけをみていったのではなく個々の部位を見ても全てにおいて本条はこの時代の規格外であった。

確かに身長にのみとればこの時代でも本条ほどの男はいるだろう。

しかし体の大きさ、バランスを考えると戦国時代において本条は驚異的な身体能力を備えていた。


「ちょいと借りるぜ木村殿」


武者の小手とすね当てを紐で自分の手足に巻き付けた。

磨き抜かれ、黒光りしている小手の中に刀を振りかぶった人の姿が映った。


バーン


本条が振り返った瞬間相手が振りかぶっていた獲物は宙に舞い、当人は多少焦った顔を見せつつも、気を立て直し、本条に素手で向かってきている。


(子ども!?)


本条は向かって来る少年に対して体から当たり吹き飛ばした。


「ぐわっ」


少年はもんどり打って仰向けに倒れ、その胸を踏みつけながら少年の顔に鉄パイプを突きつけた。


その瞬間本条に冷や汗が流れた。

少年を力の限り蹴り飛ばすと、全力で後ろを振り返った。

自分の目の前に銃が突きつけられていた。


「動くな」


反論の余地を与えないように低い声でそう言い放った。

その男は包帯で片腕を吊っていたが迫力のあるにらみ顔と全身から漂う雰囲気は否応なしに本条の身を強張らせた。


自身の経験の中に重なる相手を探したが、つり合う相手を見つけることはできなかった。


(これはやばいかも知れない)


向けられた銃口からは火薬の匂いが漂っていた。

この状態でもう一度引き金を引かれたらそのまま弾は顔から後頭部へ突き抜けるだろう、後は引き金を退く瞬間、相手を攻撃するときこそ最も隙が生じやすいものだと本条は知っていた。しかし、、


(このおっさん相手じゃな)


どうせ死ぬならと両のうでに力を込めた瞬間


「まて、急ぐな」


見抜かれたと思い渾身の力で向けられた銃を跳ね上げた

瞬間本条の顎に衝撃が走り、視界には森の木陰から覗く青い空と太陽

その美しさに満足しながら本条は意識を失った。

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