第2話 構え

一撃目をかわし、二撃目をかわす。

三撃目を受ける前に反撃しその一撃でもって相手を沈黙させた。


いきなり知らない男に襲われた本条は草陰に隠れた。

今の自分の状況を確認したい

しかしこの戦乱はそんな暇を本条に与えない


死相をあらわに大の大人が怒号を上げながら自分を殺しに来る。


敵、、、というか味方もいないが

時代劇によく出てくる日本の鎧を付けた人たちが目の前を走り回っている。

侍に見つかった本条はとっさに高枝切りバサミを手に取り向かい打った。


ガキンと音が鳴り相手の刀を受ける本条

大小二つの高枝切バサミをもって敵の攻撃を防ぎ相手を蹴り飛ばして森の中に逃げ込んだ。


「ちくしょう、いったい何なんだ」


息を切らしながら森を進む、その途中で高枝切りバサミの鋏の部分を取り外し

軽く振りやすい二本の鉄パイプを作った。


「はぁはぁ」


薄暗い藪の中で座り込み自分の体を調べた。

腹、胸、顔、どうやら怪我はないようだ。


「ここはいったいどこなんだ」


少なくともさっきまで自分がいた公園とは違うようだ。

同じなのは蒸し暑さだけ、藪の中から遠くの方にわずかに見える草原には陽炎がめらめらと立ち上っている。


草原はまだ戦の騒乱が垣間見える

先ほど襲って来た武者のようなもの達が斬り合っているのが見える


「まるで戦国時代みたいだ」


意外に冷静になった自分に驚きつつ、本条は続けて呟いた。


「間合いが甘いなあの赤いのそこでもっと踏み込まにゃ、黒の方が試合慣れしてるな、、、」


ぶつぶつと独り言を漏らしている自分、そうしていると不思議に落ち着いた。


「そこだ」


本条が叫び立ち上がった瞬間に黒い武者が赤い武者を切り伏せた。

その瞬間黒い武者の返り血を浴びた顔が本条に向けられた。


明らかに本条の事を視認できていないはずなのにその武者は一直線に本条の元に猛進してきていた。


なぜばれたか、そんなことは本条は考え無かった既に相手は向かってきている。

気後れすれば負けるそう思った本条は静かに息を整え二つの棒となった高枝切りバサミを構えた。


今まで何百、何千ととった構えがより一層本条の気持ちを落ち着かせた。


敵が迫っている。

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