目指すは知人ポジション

…今日は戦いの日。


特に詳しく対策をたてることなく、知人認定されれば良いんだ!そんなの楽勝楽勝などと考えていた。そして、そのままいつものように気持ちよく寝ていた。

…しかし、私の思いとは裏腹に、まわりは張り切っていた。


メイドはいつもより早く起こしに来て、派手すぎずかといって地味でもなく程よくもいつもよりおしゃれなドレスが選ばれ、軽ーく気づくか気づかないか程度のメイクをし、きれいに髪も結い上げられた。

…そして極めつけがこれだ。



「お嬢様。これなら婚約なんて楽勝でございます!!頑張ってくださいませ!!」


「………そーですわね………。」



婚約なんて、望んでおりません!!むしろ、阻止したいんですよ!!そんなに、キラキラした目で言わないでください!!

私はただの知人ポジションを狙っているのです!!皆さんの期待を裏切ってやりますよっ!


と、私は心に誓った。


_________


……それが、何をどーしてこのような展開になっているのでしょう。



それは、遡ること一時間前。父様の古い友人親子が家に到着した。その名は、アーガイル公爵家。父様の友人であり当主ロジャン様とその息子ヴィスト様。

…そして気になるお顔は。うん。ずいぶんと整った顔立ちをされてらっしゃるじゃないか、この親子。ロジャン様は、もうダンディとしか言いようがない、大人の色気が駄々漏れである。ヴィスト様も、気の強そうな顔立ちだが恐ろしく顔が整っている。


やばい。本気で知人ポジション狙わなければ。決意をまた硬め直し、父様に促されヴィスト様の案内を始める。


…そう。それが、一時間前のこと。そして、今現在、何をしているかと言いますと…



「お前、どういうつもりだ?」


「はて?なんのことだか私わかりませんわ?」



庭にて、問い詰められております。…なんだか、遠ざかっていく知人ポジション…。ま、まだ諦めない!



「やたら、ドレスやら見た目は張り切っているのに、案内してる最中は当たり障りのない会話。…お前はいったい何がしたい?」


「何がしたいと言われましても、普通にドレスを着て、ご案内しているだけですわ。」



…あなたの言いたいことはわかります。やたら、張り切ってる見た目なのに、がつがつ来ないのはなぜだとおっしゃってますよね。わかっております。しかし、理由が理由だし言えないよね。


だって、見た目はメイドが張り切っておしゃれしましたが、私はあくまであなたと知人になりたいのです。


…なんて、言えるわけないじゃないか。


しかし、そんな思いとは裏腹に、ヴィストさんが追い詰めてくる、追い詰めてくる。



「普通のご令嬢は、聞いてもイないことをベラベラと喋り、しつこく色目を使ってくる。お前はなぜそれをしない?」


「…そんなこと言われましても。」



私はあなたの俺はモテるのに、お前はなぜ俺を好きにならない?的な発言を普通にするあなたが不思議です。と、心で喋りながらも、口にできずモヤモヤしていた。



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