食事の量を減らしましょう
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
「ただいま。」
屋敷にはいると従者の一人に出迎えられた。挨拶を返して、早足で自室に向かう。
さすがに、頭がこんがらがっているのだ。ゆっくり頭の整理がしたい。
…自室につくと、机に向かいノートとペンを取り出した。そして、とりあえず今の状況をまとめることにした。
___________
・高校のときに交通事故で死亡。
・今日、私が10歳のときに前世の記憶を思い出す。
・リリアーノとしての記憶もきちんと残されている。
・前世の友達から聞いていたように悪役令嬢だとしたら、没落人生を歩むかもしれない。
・しかし、乙女ゲーなどしたことがないからここがどのような世界かはわからない。
さて、どーしよう。没落を回避するにも誰がヒロインで誰がゲームの攻略対象?になるかわからないし、的確な対処方法はない。でも、だからって危険性があると知っていて、没落人生を歩むのも嫌だし…。
ほんと、どーしよっかな…。
「お嬢様、お食事の用意ができました。」
「ええ。今から、行くわ。」
自室のドアを従者が叩き、夕食の用意ができたことを告げられた。それに返事をし、ひとまずノートを閉じ、食堂に向かう。
あまりアイデアは浮かんでないけど、食事で気分転換にもなるかななどと考えていた。
…食堂につくと、珍しくフォーラン家全員が揃っていた。
フォーラン家は当主である父レイモンドと、その妻である私たちの母マリアーノ、そして次期後継者である私の兄リチャード、最後に私、リリアーノの四人家族である。
いつもは、父様が仕事でいなかったり、お兄様がその付き添いやパーティなどでいなかったりして、全員が一緒に食事をとることは珍しいのだ。まぁ、家族仲が悪いわけではないので、普通に全員が屋敷にいればいっしょに食事をとったりするんだけどね。
「…遅くなってしまい、申し訳ありません。」
「いやいや、気にするな。」
まだ食事を食べてないところを見ると、私を待ってくれていたみたいなので遅れたことを詫びた。そこですかさず父は気にするなと優しく微笑みながら、言ってくれた。ちなみに母も兄も特に気にしていないようだった。
私が席に座ると従者は、いつものように豪華な食事を私たちの前に運んだ。
…前世の記憶が戻るまで、たいして食事が豪華だとかきにしたことはなかったけど、こうしてみるとやはり豪華というか、立派というか。…ぶっちゃけて言うと、食べきれないような量の食事がおかれていた。いろいろなメニューを食べれるようにとの配慮だと思うんだけど、こんなにもいらない。
というか、絶対残す。それに、今までも高確率で食事を残してきた記憶がある。
その残していた食事は結局どうなっていたのだろう。やはり、一度手をつけたものなので廃棄されるのだろうか。
…え、そーだときたらもったいないよね。すごくもったいない。前世では食べ物を残すなんて行為そもそもしたことがなかった。
そんな前世の記憶が戻ったわけで、今までのように食事を残すなんてできない。罪悪感と背徳感でいっぱいになるだろう。
だから、思いきっていってみた。
「ねぇ、これから私の食事の量を減らしてくれない?」
そう従者に告げると、場の空気が凍った。…え、そんなに悪いこと言ったかな!?
「お嬢様の口に合わなかったのでございますか?」
おろおろとしながら、従者が私に問う。どうやら、私の言葉が足りていなかったらしい。
「違うの。いつものように、とても美味しいわ。でも、少し多いし食べきれないわ。残すのももったいないでしょう?」
「そうでしたか…。では、少し量をこれから減らします。」
「お願いね。」
従者は落ち着きを取り戻し、量を減らすことを了承してくれたが、私の家族が私をすごい見つめていた。
「あの私、なにかしたかしら?」
思いきって聞いてみると、お兄様が席を立ち私の方に向かってきた。
「リリア、どーしたんだい?急に、食事の量を減らすだなんて。なにかあったのかい?」
ものすごい勢いで兄が色々捲し立てる。…私が食事を減らすのがそんなにおかしいことなのか?
「特になにもありませんが、ふと食事を残すのはもったいないですし、環境にも良くないと思いまして。」
「…そうか!!リリアは環境のことなどにも気を使ったのだな!さすが、リリアだ!!」
適当に理由を言うと、お兄様がすごい勢いで誉め、頭を撫でてくれた。嬉しいんだけど、なんかちょっと嘘つくいたみたいで罪悪感あるなぁ。
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