無駄遣いはいけませんっ!!
山田 すず菜
前世の記憶、思い出しました
本当にふとした瞬間思い出した。
それは特になんの前ふりもなく、私に記憶というものを突きつけてきた。
…私はフォーラン公爵家の令嬢である。私の家、フォーラン一族はかなりのお金持ちであり、ぶっちゃけ王族の次に金持ちである。ちなみに、私の従姉妹のエミリの家、ラノワール公爵家もそこそこのお金持ちであり、かなり裕福な暮らしをしていた。
そんな私とエミリは買い物に来ていた。お金に困ってなどいないし、ほしいと思ったものは即購入し、荷物はすべて従者に持たせていた。
そう。それはそのときだった。
エミリがお気に入りの洋服屋で言った一言が引き金だったと思う。
「ここにあるもの、全部くださいな。」
そう、この一言ですべて思い出した。私、リリアーノ・フォーランの前世の記憶を。
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私、というかリリアーノじゃなく前世の私ね。
前世の私はお金持ちというわけでもなくかといって食べるものもないという貧乏でもなかった。でも、しっかりものの母は亡くなり、お金にだらしない父とたくさんの兄弟のせいで生活は大変だった。安定した収入はあるものの、父はその日の気分で色々なものを買ってくるような人でお世辞にも生活費は安定していなかった。兄弟も多く、兄が二人、弟が一人。金遣いが荒いわけではなかったが、家でだらだらしていて家のことはなにもしなかった。
そのため皺寄せは私に来た。限られた生活費でやりくりし、すべての家事をこなしていた。その頃、私は高校生だったが、同級生からお前は主婦かと言われ続けた。そのせいかはわからないが、彼氏とかそーいうのもなく、我ながら色気のない生活をしていたと思う。
でも、スーパーの帰りにたぶん車かなんかに轢かれて死んだんだ。前世の最後の記憶が私に向かってきた車と周りの悲鳴だったからね。
…てことは、あれか!オタクの友達がいってたあれだよね。異世界ファンタジーでよくあるらしい、転生ってやつだよね、これ!!
え、てことは私よくある乙女ゲーとかいうゲームの悪役令嬢とかいう人に転生したりしてるのかな!?え、じゃああれ、ヒロインとかの邪魔しちゃって、没落人生歩んだりしないために、そういうのを回避していかないといけないのかな!?
いやでも、友達に聞いてただけだし、乙女ゲーとかやったことないから、ここがゲームの世界かもわかんないよね。
…んー、まあ、悩んでも仕方がない!知らないものは知らないんだから!!
「リリア?ぼーとしてどうかしたの?」
エミリの声を聞いてはっとした。いきなり前世の記憶を思い出しちゃったから、ちょっとぼーとしてたよ。
「いいえ、なんでもないわ。少し考え事をしていただけよ。
…それより、エミリあなた…それ、全部買うの?」
レジの横におかれた大量の箱とエミリの従者がそれを馬車に運び、定員に大量の札束を渡している。
…いやいや、さすがに買いすぎでしょ!それ絶対、そんなに着ないでしょ!もったいない。
「もちろんよ。というか、リリアはなにも買わないの?」
「買わないわ。特に必要じゃないもの。」
「…あなた今日どーしたの?どこか変よ。」
いや、あれですね。前世の記憶思い出しちゃったんですもん。もう、お金の無駄遣いできないです。元々庶民に札束で買い物とかハードル高すぎます。
そりゃ、前と比べて変で当然ですよ。
「少し疲れてしまったの。」
「ふーん、そう。じゃあ、帰りましょ。」
「そうね。」
エミリは納得がいっていないみたいだけど、本当のことは言えないしね。それこそ、頭おかしいやつ決定だわ。前世の記憶を思い出したなんて。
まぁ、おかげで買い物も終わって、帰れるわけだしね。
…エミリとフォーラン家の馬車に乗り、たまにしゃべりながらそれぞれの家に帰った。
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